目次

  1. サプライチェーン補助金とは
  2. 一次補正予算から要件見直しへ
  3. 対象となる製品とは
  4. 中小企業特例は補助上限5億円
  5. サプライチェーン補助金の補助上限と補助率
  6. サプライチェーン補助金の採択率は53.9%
  7. サプライチェーンでは多元化の補助金も
  8. 補助金の申請スケジュール
  9. 申請方法
  10. 申請書をつくる上での相談先
  11. 注意すべき補助金ルール

 2020年は新型コロナウイルス感染症により、中国や東南アジアの工場から自動車や電子部品が届かないなど日本のサプライチェーンの脆弱性があらわになりました。そこで、国内の生産拠点の整備を進める必要性が見直されています。

新型コロナウイルスを受けたサプライチェーン寸断の一例(第26回 産業構造審議会総会の資料から引用)

 そこで、サプライチェーン補助金とは、国内での工場の新設や設備の導入を支援するための補助金です。サプライチェーン補助金は令和2年度第一次補正予算で初めて実施され、事業規模は予備費を合わせて3060億円でした。2020年度第3次補正予算案では2108億円です。

 サプライチェーン補助金について、補助金の要件を見直し、より焦点を絞った支援をする方針が2020年12月に閣議決定されました。

 要件見直しの主な理由は、前回のサプライチェーン補助金で、先行審査を含めると1760件という大量の応募が殺到したためです。担当の中小企業庁地域産業基盤整備課は「サプライチェーンの強靱化という補助金の目的に合わない申請もたくさん寄せられました」と話します。たとえば、設備更新の申請などが含まれていたため、審査に想定以上の時間がかかりました。

 そこで、今回は補助金の趣旨に合うよう要件をしっかり定める予定です。

 サプライチェーン補助金が対象とする事業は2通りあります。

  1. ⽣産拠点の集中度が⾼い製品・部素材の供給途絶リスク解消のための⽣産拠点整備(A類型)
  2. 国⺠が健康な⽣活を営む上で重要な製品・部素材の⽣産拠点等整備(B類型)

⽣産拠点の集中度が⾼い製品・部素材(A類型)

 海外における生産拠点の集中度が高く、かつ、サプライチェーンの途絶によるリスクが大きい製品として、半導体関連、航空機関連、車載用電池関連、レアメタル関連、ディスプレイなどが対象となる見込みです。

⽣産拠点の集中度が⾼い製品・部素材のイメージ(経済産業省の第3次補正予算案の事業概要から引用)

国⺠が健康な⽣活を営む上で重要な製品・部素材(B類型)

 国による緊急調達等の対象物資や医療提供体制の確保のために必要となる製品として、消毒用アルコール、マスク(サージカルマスク)、医療用ガウン、手袋(医療従事者用)やその関連部素材が対象となる見込みです。

国⺠が健康な⽣活を営む上で重要な製品・部素材のイメージ(経済産業省の第3次補正予算案の事業概要から引用)

 海外での生産拠点の集中度が高く、サプライチェーンの途絶によるリスクが大きい製品等の生産に必要な部品の生産などを手がける中小企業も支援対象になります。補助上限は5億円で、補助率は3分の2以内です。A類型の対象製品・部素材の生産に必要不可欠な製品・部素材であることを証明する必要があります。

 前回のサプライチェーン補助金は補助上限が150億円でしたが、今回のサプライチェーン補助金は補助上限が100億円となります。

 補助率は、補助対象経費の額に応じて変動しますが、大企業が2分の1~4分の1以内で、中小企業が3分の2~4分の1となります。こちらも前回より補助率が下がった分野もあります。

大企業の補助率と補助上限(経産省のサイトから引用)
中小企業の補助率と補助上限

 3月12日から5月7日までに280件、約3118億円(要件を満たした申請は272件、約3,023億円)の応募があり、審査の結果、151件、約2,095億円分が採択されました。採択率は53.9%でした。

 内訳は次の通りです。

  • 生産拠点の集中度が高い製品・部素材(64件)……半導体関連、電動車関連、洋上風力関連等
  • 国民が健康な生活を営む上で重要な製品・部素材(21件)……ワクチン用注射針・シリンジ、医療用ゴム手袋、医薬品低温物流関連物資等
  • 1.の生産等に必要な部品等(中小企業特例事業)(66件)

 採択事業者の一覧は、中小企業庁の公式サイト内の「採択事業者一覧(サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金)」(PDF:231KB)で確認してください。

 2020年度第3次補正予算案では、国内生産拠点の整備だけでなく、海外の生産拠点の多元化に対しても支援する補助金があります。こちらの予算規模は116億7千万円です。

サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助⾦の概要(経済産業省の第3次補正予算案の事業概要から引用)

 申請は2021年3月12日(金曜日)から5月7日(金曜日)正午までです。事業期間は原則として 2024年3月31日までとなります。

申請は、補助金申請システム「Jグランツ」で応募を受け付けます。申請には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要となります。未取得の場合は、事前のID取得をお勧めします。

 前回の補助金では、申請書をつくるときに、立地を予定している区域を所管する経済産業局に相談することを推奨していました。相談先は、各地の経済産業局となります。

 補助金の応募から交付の流れは、応募→採択→交付決定→事業開始(発注)→事業完了(支払)→確定検査→補助金額確定→補助金交付が一般的です。
前回は、交付決定前に発注した経費も経済産業大臣の承認を得られれば、補助対象経費として認められる場合もありました。今回はまだ申請要領が公表されていないため、事前に確認する必要があります。

 そのほか、注意すべきポイントとしては次のようなことも求められます。

  • 同じ条件で相見積もりをし、価格競争で発注先を選ぶ
  • 仕様書、相見積書などの経理書類は、時系列で保管し、確定検査時の証憑(取引の成立を立証する書類)にする