原材料高騰で「働いても赤字」に

 マツバラは1950年に創業した鋳物製品メーカーです。主に自動車や建設、農業機械などの部品を製造し、創業者の次男で3代目の松原史尚さん(54)が、2009年から経営を担っています。2020年度は公益社団法人・日本鋳造工学会で2つの賞に輝くなど、技術力は高く評価されています。しかし、少し前にはピンチに直面していました。

 2017年、鋳造業界は繁忙期を迎えていましたが、松原さんの顔は曇ったままでした。景気回復に比例して原材料の価格も高騰したからです。納める部品の価格に少々上乗せしても、原材料の値上げの波は止まらず、人件費の高騰も起きました。その結果、売上が伸びているのに、2017年度は毎月赤字が続く状態になっていました。

 「働いても、働いても会社が赤字」という状態は、社員の心にも影を落とします。残業や休日手当で一人ひとりの収入は増えたものの、離職者も多いという状態でした。松原さんは「社員の顔が暗い」と気がつき、何か手を打たねば…と思うものの、方向性を見いだせずにいました。

スタッフの一言がきっかけに

 そんなとき、松原さんは女性スタッフから次のように言われ、ハッとしました。「社長、最近下を向いていることが多いですよ、顔を上げてください。社長が不安そうだと、皆が不安になります」

マツバラで働く女性社員

 社員の暗い顔の原因は、なんと自分の表情だったのです。「社長はいつも元気で明るくないといけない」と気づきました。暗い気持ちを明るくするのは簡単ではありませんが、松原さんは「心の描写ワーク」という取り組みを行ったことで、意識が変わり、後に顧客や社員の満足度を高め、業績回復につながったのです。「心の描写ワーク」とは一体どんなものなのでしょうか。

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