30代を中心に新商品を考える

 石川鋳造は1938年に運送・精米業として創業し、時を経て鋳物業へと変わりました。4代目の石川鋼逸さんは30歳で社長を継ぎました。その頃は、水道や産業機械の部品、アルミ自動車部品を製造するために必要な消耗品を製造・販売していました。

 しかし、電気自動車などのシェアが増えることが予想される中、代わりのオリジナル製品を作らなければならないと強く思ったといいます。

 もうひとつの転機は、リーマン・ショックでした。自動車産業が一気に冷え込み、注文は激減。石川さんは時代に左右されることなく、自社の強みを活かして作っていける製品はないだろうかと思いました。社長になって4年目に、30代の若手社員を中心に4人でプロジェクトチームを組み、会社の「この先」を支える製品を考えることにしました。

世の中にない調理器具を

 鋳物は熱伝導率と蓄熱温度が高いことが特徴です。それを活かす調理器具を作りたいというアイデアはすぐに出てきました。中でも、家庭での使用頻度が高いフライパンの製造で意見は一致しましたが、同業他社が自社製品として既に調理器具を製造・販売していることがわかります。

 同じ業界で他社と同じことをするのはタブーという雰囲気があったうえ、二番煎じと言われることへの躊躇もあり、フライパンの開発はいったん、中止にすることに。他のアイデアを絞りますが、調理器具に代わるものがなかなか見つかりません。

 模索を続けるうち、先行する同業他社のメーカーが、今後は調理器具一本で生きていく決断をしたという情報が飛び込んできました。社長と会う機会を得た石川さんは、その会社の調理器具はヨーロッパのメーカーとデザインや機能性が似ているのではないか、という疑問を率直にぶつけてみました。

(続きは会員登録で読めます)

ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。