目次

  1. 外国人労働者の雇用状況
  2. 在留資格・在留期間の確認がポイント
  3. 外国人を募集する際の注意点
  4. 外国人を採用する際の注意点
  5. 外国人を雇用した後の注意点
  6. 外国人の採用は注意点を踏まえて検討しよう

 2020(令和2)年6月時点で国内に滞在する外国人の総数は288万5904人です(出入国在留管理庁の資料)。滞在の目的はさまざまですが、仕事を持っている方も多くみられます。2019(令和元)年10月末時点の厚労省の「外国人雇用状況」の届出状況まとめから外国人の雇用状況をご紹介します。

外国人労働者を雇用する事業所数は年々増加

 国内で働く外国人の数は165万8804人で、2019(令和元)年の同時期と比べると13.6%増加しています。外国人を雇用する事業所数は24万2608か所。中国、ベトナム、フィリピン国籍の労働者が全体の約6割を占めています。

専門的・技術的分野で働く外国人が増加

 在留資格別では「身分に基づく在留資格」が32.1%と最多ですが、「技能実習」が23.1%、「専門的・技術的分野の在留資格」が19.8%いる点も見逃せません。2019(令和元)年の同時期と比べると、特に「技能実習」は 24.5%増、「専門的・技術的分野の在留資格」も18.9%増加しており、労働力として外国人が活躍し始めている状況がわかります。

30人未満のさまざまな事業所で外国人が活躍中

 外国人を雇用している事業所を産業別の割合でみると、「製造業」が 20.4%、「卸売業、小売業」が 17.4%、「宿泊業、飲食サービス業」が 14.2%となっています。また、外国人の採用が増加した産業は「卸売業、小売業」や「建設業」です。特に建設業については、東京オリンピックに関連して建設業の人手が不足していることが背景にあります。

 外国人採用の傾向は、中小企業で顕著にみられます。外国人労働者が働いている事業所の規模は30人未満事業所が最も多く、事業所全体の 59.8%です。外国人労働者全体から見ると、35.4%が30人未満の事業所で働いていることがわかります。これは、事業規模の小さい中小企業ほど人手不足の影響が大きいことが理由と考えられます。

 アルバイトでも正社員でも、外国人を雇用する場合は募集、選考、採用と日本人とほぼ同じ流れを踏みます。しかし、日本では外国人の単純労働(特別な技能を必要としない労働)が原則として認められていないため、国内にいる外国人なら誰でも採用できるわけではなく、就労を希望する外国人が在留資格を保有しているのか、または取得できるのかが重要となります。また、外国人の在留期間は在留期間に応じて定められておりますので(厚労省の資料参照)、在留カードを確認して在留期間が徒過していないか(いわゆるオーバーステイ)、在留期間がすぐに満了しないかを、事前にチェックする必要があります。

外国人の在留資格と就労の可否

 外国人が国内で働けるかどうかは、入管法で定められている在留資格によります。在留資格は在留カードの「在留資格」欄またはパスポートの「上陸許可証印」に「特定技能1号(電気・電子情報関連産業)」「特定活動(高度専門・技術活動)」などのように記載されています。(厚労省の資料参照)

採用可能な在留資格

 国内で採用できる外国人の在留資格は大きく3つに分けられます

採用できない在留資格

 以下の在留資格を持っている外国人は、原則として国内での労働が認められていないため、採用できません。 ・文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在

外国人の雇用時・離職時には外国人雇用状況の届け出が必要

 外国人を雇用した場合・雇用していた外国人が離職した場合には、所轄のハローワークに雇用状況を届け出る義務があります(労働施策推進法28条1項)。  まず外国人を雇用した場合には、会社が雇用保険の取得届に記載して報告するか、雇用保険の加入義務がない場合には「外国人雇用状況の届出書」をハローワークに提出する必要があります。また、雇用していた外国人が離職した場合には、「外国人雇用状況の届出書」をハローワークに提出する必要があります。  在留資格を満たさない外国人を雇用していると、不法就労となり事業主にも罰則があります。外国人労働者を採用する場合は、必ず「在留資格」「在留期間」「在留期限」を確かめましょう。

自社で対応が難しい場合は専門職へ依頼が可能

 例えば外国人留学生を社員として雇用したい場合には、在留資格を留学から、就労可能な在留資格に変更する必要があります。在留資格の変更や外国人との雇用契約などに不慣れな場合には、行政書士や外国人の就職をサポートする企業へ依頼することも可能です。

 また、外国人を雇用しようとする会社に対する援助として、弁護士・行政書士などの専門家で構成される雇用労働相談センターが設置されています。外国人労働者の労働問題に詳しい弁護士・行政書士などが周りにいない場合には、こちらの雇用労働相談センターに相談することも考えられます。

 外国人を募集する場合の注意点を3つ紹介します。

ポイント①必要な人材のペルソナを明確化する

 外国人を募集する場合は「~歳まで」「日本語能力試験〇級」など単純な募集要項ではなく、欲しい人材の年齢、性別、出身地、学歴、スキル、経験、価値観など、採用したい人材のペルソナを作り求める人物像を明確化しましょう。
 ペルソナがはっきりしていると、求人票内の求める人物像がより具体的になり、応募する外国人側も入社後のミスマッチを起こしにくくなります。また、採用側でも社内で必要な人材を共有しやすく、必要に応じ見直しも可能です。

ポイント②就労できる在留資格を持っているかを確認

 前述のとおり在留資格・在留期間は採用に関わる重要な情報のため確実に確認しましょう。ただしやみくもに在留カードの提出を求めたりすることは、偏見や個人情報保護の観点から好ましくありません。採用選考時、就労資格を満たしているかについては口頭で確認を行い、内定してから在留カードを提出してもらう進め方などもあり得ます。

 なお念のため、人材派遣会社などを経由して紹介された人物でも、万一を考慮して在留資格を確認しておくと安心です。

ポイント③日本語の能力を確認

 外国人の日本語力はさまざまです。話せるけれど書けない、読めないなどいろいろな状況が考えられます。業務で必要となる日本語レベルを踏まえて「読む」「書く」「話す」それぞれの観点で確認をしましょう。

 外国人を採用する場合、採用・選考時のルールそのものは日本人の採用の場合と差を設けないことが大原則です。ここでは外国人の採用時に必要な注意点を3つ紹介します。

(参考資料:「外国人留学生の採用や入社後の活躍に向けたハンドブック」

ポイント④社会保険に関する手続きを漏れなく実施

 国籍を問わず労働者には労働関係の法律が原則として適用されます。そのため、外国人を採用する場合には原則として、日本人の労働者と同じ条件で「雇用保険」「労災保険」「健康保険」「厚生年金保険」が適用されます。  また、採用が内定した場合には書面で労働条件を通知することが義務付けられています。労働条件を共有する重要な資料のため、日本語だけでなく採用する外国人の母国語に翻訳して説明をするのが理想的です。

ポイント⑤外国人労働者に歩み寄る教育や体制づくりを行う

 外国人と職場のメンバーとが円滑にコミュニケーションできるように、日本人に対する教育訓練が必要です。「なぜ外国人を採用するのか」「文化や風習の違い」「分かってくれるだろうではなく、順を追って説明する」など認識の共有が欠かせません。  可能な範囲で社内の資料や掲示物は多言語化し、工場などで手順説明がある場合は指示書に加え動画コンテンツやVRなどを活用すると便利です。また、共通言語として社内の英語力強化も有効です。

ポイント⑥必要に応じて生活のサポートを行う

 必要に応じて生活や業務上のスキル向上を図る支援を検討しましょう。特に転居を伴う就職の場合は、住宅の手配や生活のサポートが欠かせません。また、通勤時の経路確認や移動手段の確保も重要です。

 人材は雇用したあとの育成も重要です。ここでは採用した外国人を育成するために重要となる注意点を3つ紹介します。

ポイント⑦職場に適応できるようサポートをする

 外国人が能力を充分活かせるように安全衛生を確保し適切な人事管理、教育訓練、福利厚生を行うことが大切です。上司や先輩社員などによる声がけや、社内外の交流機会を作り仕事や生活が安定するように努めましょう。

ポイント⑧配属・評価基準・処遇・キャリアプランなどをよく話し合う

 外国人は終身雇用を意識していないのが一般的です。双方が納得して働けるように、配属する際は労働条件や評価や処遇、職場のルールをしっかり伝えましょう。また、本人のキャリアプランを踏まえた仕事や研修などが受けられるように配慮することが重要です。

ポイント⑨母国の文化や慣習を可能な範囲で尊重する

 母国の文化や信教によっては、日本人にとってなじみの薄い習慣があるかもしれません。多様性を認め受け入れるために、特徴的な文化・慣習については社内で共有を図り、必要であれば社内制度を見直しましょう。

 国内の少子高齢化を踏まえると、事業承継において外国人労働者の雇用は欠かせない検討項目です。製造業など専門性の高い業種でも外国人の活躍が増えてきています。自社だけで対応できない部分は外部の専門家のサポートを受けることも可能なため、自社の状況や注意点を踏まえて外国人の採用を検討してみましょう。

【監修】八木啓介

大江・田中・大宅法律事務所 弁護士

アンダーソン・毛利・友常法律事務所、野村證券企業情報部で事業承継・M&Aの研鑽を積み、事業再生分野でも多くの実績を有する。フィナンシャル・アドバイザーとしての経験も踏まえ、経営者を総合的にサポートする。