背景にある中小企業後継者の不在問題

 日本はいま、中小企業の後継者不足が深刻です。中小企業庁の安藤久佳長官(当時)は2018年の年頭所感で「今後10年の間に、平均引退年齢である70歳を超える経営者は約245万人となり、このうち約半数の127万人が後継者未定です」と訴えました。

 127万人の経営者とは日本企業全体の1/3に相当する規模です 。後継者が不在のまま、経営者の高齢化が進むと、健康面など事業継続に向けて様々なリスクを抱えることになります。

調査結果の概要

 後継者不足に対する国の政策の裏付けの一つが、帝国データバンクの「全国社長年齢分布」の調査データです。帝国データバンクは今回、企業概要データベースから個人、非営利、公益法人などを除いた企業の社長データを抽出し、得られた約94万社分を、業種別、業歴別、都道府県別に集計・分析しました。

 その結果、2020 年の経営者の平均年齢は 前年を0.2歳上回り、60.1歳と、調査を開始した 1990 年以降初めて60 歳を超えました。年代別では、「60 代」が27.3%を占め、最多となりました。「50代」が26.9%、「70 代」が20.3%で続いています。

不動産業、製造業、卸売業で平均上回る

 業種別にみた経営者の平均年齢は次の通りです。

  • 建設業……59.6歳
  • 製造業……61.3歳
  • 卸売業……61.0歳
  • 小売業……60.2歳
  • 運輸・通信業……59.9歳
  • サービス業……58.7歳
  • 不動産業……62.2歳
  • その他……59.2歳

都道府県では秋田が最も高い

 都道府県別では、秋田県の平均年齢が最も高く62.2 歳。「岩手県」が 62.0
歳、「青森県」が 61.8 歳と続きました。一覧は次の通りです。

  • 北海道 60.9歳
  • 青森県 61.8歳
  • 岩手県 62.0歳
  • 宮城県 60.6歳
  • 秋田県 62.2歳
  • 山形県 61.2歳
  • 福島県 60.7歳
  • 茨城県 60.9歳
  • 栃木県 60.4歳
  • 群馬県 60.4歳
  • 埼玉県 60.4歳
  • 千葉県 60.6歳
  • 東京都 59.6歳
  • 神奈川県61.0歳
  • 新潟県 61.2歳
  • 山梨県 60.9歳
  • 長野県 61.0歳
  • 岐阜県 59.5歳
  • 静岡県 60.6歳
  • 愛知県 59.1歳
  • 三重県 58.8歳
  • 富山県 60.4歳
  • 石川県 59.2歳
  • 福井県 60.3歳
  • 滋賀県 59.1歳
  • 京都府 60.1歳
  • 大阪府 59.3歳
  • 兵庫県 59.8歳
  • 奈良県 59.9歳
  • 和歌山県 60.4歳
  • 鳥取県 60.7歳
  • 島根県 61.5歳
  • 岡山県 59.4歳
  • 広島県 60.0歳
  • 山口県 60.2歳
  • 徳島県 60.5歳
  • 香川県 60.1歳
  • 愛媛県 59.9歳
  • 高知県 61.6歳
  • 福岡県 59.5歳
  • 佐賀県 60.3歳
  • 長崎県 61.1歳
  • 熊本県 59.9歳
  • 大分県 60.1歳
  • 宮崎県 59.9歳
  • 鹿児島県60.6歳
  • 沖縄県 59.3歳

世代交代進まず

 中小企業庁は、中小企業の事業承継支援の政策を進めていますが、2020 年時点の社長交代率は 3.80%と、ここ数年、大きな変動はみられていません。後継者難倒産も高止まりしています。

社長(経営者)の交代率の推移(帝国データバンクの資料から引用)

 帝国データバンクは「社長の平均年齢は今後も上昇傾向が続くとみられるが、これまでに培ってきたノウハウや歴史を絶やさないためにも、円滑な事業承継に向けた準備が急務になっている」と調査を締めくくっています。