目次

  1. 福利厚生として法人保険を用いるメリット
  2. 福利厚生として法人保険を活用する方法
  3. 福利厚生として法人保険を活用した事例
    1. 事例:養老保険に加入して退職金を準備する
    2. 事例:医療保険で見舞金制度を実施
  4. 福利厚生として法人保険を活用するときの手順
  5. 福利厚生として法人保険を活用する際の注意点
    1. 損金算入を否認される場合がある
    2. 損金算入には「普遍的加入」が必要
    3. 保険料が会社の経営を圧迫するリスクがある
  6. 法人保険で安定的な企業経営を

 法人保険とは、保険の契約者を法人に、被保険者(保険の対象となる人)を企業の経営者や役員、従業員にして加入する保険です。

 死亡保障だけでなく、病気やケガになった場合の医療保障や、所定のがんと診断された場合の保障など、さまざまな種類があります。

 法人保険で福利厚生を充実させると、従業員の労働意欲を向上させ、有能な人材を確保・定着させる効果が期待できます。

 従業員を1人でも雇っている場合、企業は社会保険に加入しなければなりません。

 従業員は、企業と保険料を折半して被保険者になることで、「医療保険」「年金保険」「労災保険」などの法定内福利厚生が受けられます。

 しかし社会保険の給付内容は、企業によって大きな差はありません。

 そこで多くの企業が法人保険を活用して福利厚生制度を充実させ、企業の魅力を向上させて人材の確保と定着に努めています。

 なお、法人保険は、従業員の福利厚生の充実以外にも、役職員の退職金準備や経営者が万一の場合の事業保障、事業承継対策など、さまざまな場面で活用されています。

 福利厚生としての法人保険には、退職金の準備や遺族の生活保障、医療費の支援などさまざまな活用方法があります。

 例えば、保険契約が満期を迎えた場合に受け取れる満期保険金や、解約したときに受け取れる解約返戻金を原資に、役員や従業員の退職金を支払えます。

 従業員が万一の場合、法人保険の死亡保険金をもとに従業員の遺族に対して弔慰金や死亡退職金の支給が可能です。

 また法人保険であれば、保険料の一部を損金に算入して利益を圧縮し法人税の負担を抑えられます。

 保険料を損金に算入すると、受け取った保険金や解約返戻金は益金算入となりますが、退職金や弔慰金などを経費計上することで法人税の負担増加を避けられます。

 ここでは、福利厚生として法人保険を活用している事例について解説していきます。

 養老保険とは、一定期間にわたって万一の場合は死亡保険金が、無事に満期を迎えると満期保険金が支払われる保険です。死亡保険金と満期保険金の金額は、同額です。

 福利厚生を目的に養老保険に加入する場合、支払った保険料の1/2を給与として損金に算入し、残りの1/2を資産計上します。

 福利厚生として養老保険に加入する場合の、契約形態は以下の通りです。

  • 契約者:法人
  • 被保険者:役員または従業員
  • 満期保険金受取人:法人
  • 死亡保険金受取人:役員・従業員

 例えば保険金額を500万円、保険期間の満了を従業員が定年退職する年齢にして養老保険に加入したとしましょう。

 従業員が定年退職を迎えると、満期保険金をもとに500万円の退職金を支給できます。

 また、保険期間中に従業員が亡くなった場合は、死亡退職金として従業員の遺族に500万円を支払えます。

 法人が契約者となり、役員や従業員が被保険者となって医療保険に加入して、見舞金制度を実施している企業があります。

 例えば、被保険者である従業員がケガで入院した場合、医療保険の給付金をもとに見舞金の支給が可能です。

 従業員がケガを負ったとしても、業務とのあいだに因果関係が認められなければ、労災保険からの給付は受けられません。

 医療保険に加入することで、労災保険が適用されないケースでも従業員を経済的にサポートできます。

 また企業が医療保険の保険料を払い終えたあと、経営者・役員の退職時に契約者を個人名義に変更して、退職金代わりに保険契約を現物支給するケースもあります。

#h3事例③総合福祉団体定期保険で弔慰金制度を実施

 総合福祉団体定期保険とは、役員や従業員が亡くなったり所定の重い障害状態になったりした場合に、役員・従業員の遺族に保険金が支払われる保険です。

 総合福祉団体定期保険は、保険料が割安な掛け捨て型の保険であり、保険料の全額を損金に算入できます。

 養老保険のように貯蓄機能はないものの、キャッシュフローの悪化を抑えつつ弔慰金や死退職金などの福利厚生制度を実施できる点がメリットです。

 またヒューマン・ヴァリュー特約を付帯すると、遺族に支払われる死亡保険金とは別に、企業も保険金を受け取れます。

 企業が受け取った保険金は、新たなる従業員の雇用や育成に必要となる財源として活用が可能です。

 福利厚生として法人保険を活用する場合の手順は以下の通りです。

  • 法人保険に加入する目的を決める
  • 商品を選ぶ
  • 福利厚生規程を作成する

 福利厚生の内容を決めなければ、商品や保障内容を選べません。従業員に提供する福利厚生の内容を決めてから、加入する保険の種類を選び、各保険会社の商品を比較しましょう。

 また福利厚生の充実を目的に法人保険に加入する場合、福利厚生規程の作成が必要です。

 例えば、役員・従業員の退職金支給を目的に法人保険を契約する場合、退職金規程を定めて退職金の支給方法や金額の計算方法などを定める必要があります。

 最後に、従業員の福利厚生を充実させる目的で、法人保険に加入する際の注意点を解説していきます。

 福利厚生目的で養老保険に加入すると、保険料の1/2を損金に算入でき、保険金や解約返戻金を退職金として支給することで法人税の課税を先送り(課税の繰り延べ)ができます。

 しかし課税の繰り延べを第一に考えて養老保険に加入すると、税務署から保険料の損金算入を否認される恐れがあります。 
 養老保険を活用した福利厚生の充実は、古くから用いられる手法であるため、過去に税務署から損金算入を否認されたケースが多数存在します。

 福利厚生規程を作成し、下記に示すように課税の繰り延べが加入の目的でないと証明できると、税務署から否認されるリスクを避けられます。

 役員や従業員の全員を福利厚生制度の対象としなければ、原則として養老保険の保険料の1/2を損金に算入できません。

 全員が加入しない場合、合理的に定められた加入条件に合致した人が加入者である「普遍的加入」が損金算入の条件となります。

 合理的に定められた加入条件とは、「年齢〇〇歳以上」「勤続年数〇〇年以上」「一定の職種以上」など、年齢や勤続年数、職種によって対象者を一律に選定できる条件です。

 また従業員のほとんどが配偶者や子どもなどの同族経営である場合、保険料の損金算入は認められません。

 役員と従業員の保険金額に、5倍や10倍などの差を付けていると、損金算入が否認される可能性がある点にも注意が必要です。

 福利厚生を整えるために法人保険に加入する場合も、保険料を支払うのは契約者である法人です。

 法人保険に加入する前に、保険料負担が企業の経営を圧迫しないか入念に検討しましょう。

 とくに養老保険のような貯蓄機能のある保険は、保険料が割高です。

 加入した年は保険料が払えたとしても、翌年以降は事業が振るわず、保険料の支払いが困難となるケースは少なくありません。

 法人保険を検討する際は、問題なく払っていける保険料を考えておきましょう。

 法人保険を活用することで、企業の経営資金や資産を維持しながら福利厚生制度を整えられます。

 福利厚生が充実すると、従業員のモチベーション向上や有能な人材の確保など、さまざまなメリットが得られて、安定的な企業経営へと繋がります。

 まだ福利厚生を充実させていと考えている企業経営者の方は、法人保険の活用を検討してみてはいかがでしょうか。