法人保険が経営に役立つ理由とは?メリットやデメリットを解説
安定的に企業を経営するために、法人保険を活用する企業は少なくありません。法人保険は、経営におけるリスク対策となるだけでなく、退職金や福利厚生などさまざまな活用方法があります。法人保険のメリット・デメリット、種類などをわかりやすく解説していきます。
安定的に企業を経営するために、法人保険を活用する企業は少なくありません。法人保険は、経営におけるリスク対策となるだけでなく、退職金や福利厚生などさまざまな活用方法があります。法人保険のメリット・デメリット、種類などをわかりやすく解説していきます。
目次
法人保険とは、契約者を法人(企業)の代表者や役員にして加入する保険です。法人向けに開発された保険商品だけでなく、個人向け保険商品の契約者を法人にして加入する場合も、法人保険と呼びます。
また法人保険の保険料は、一部または全部を損金に算入が可能です。保険料を損金に算入すると、法人の利益が圧縮されて法人税の負担が減ります。
ただし保険料を損金に算入した場合、保険金や解約時に受け取れる解約返戻金は益金に計上されます。課税が先送りされているだけであるため、法人保険に節税効果はありません。くわしくは、記事「法人保険に節税効果が期待できない理由とは 新たな経理処理ルールも解説」でご確認ください。
法人保険には、さまざまなメリットとデメリットがあります。
法人保険のメリットは、3つあります。
法人保険に加入していると、経営者に万が一があったときに死亡保険金を受け取って、取引先からの契約解除や銀行からの融資打ち切りなどによる経営難に対処できます。
また法人保険から支払われた死亡保険金は、事業承継時に発生する高額な相続税を支払うための資金としても活用が可能です。
法人保険に加入すると、役員・退職金の福利厚生を充実できます。法人保険の解約返戻金を、役員、従業員の退職金を支払うための資金にできます。
医療保険やがん保険に加入して、役員・従業員が病気やケガなどで入院が必要となった場合に見舞金を支給するのも、法人保険の代表的な活用方法です。
法人保険には、以下2点のデメリットがあります。
法人保険の保険料は、保険の種類や契約内容によっては毎月数万円以上となる場合があります。
保険料負担が大きいと、キャッシュフローが悪化し経営が悪化する恐れがあるため、加入するプランは慎重に選ぶ必要があります。
また法人保険の解約返戻率は、商品によってピークを迎えるタイミングが異なる点にも注意が必要です。
解約返戻率とは、支払った保険料に対する解約返戻金の割合です。解約返戻率は、加入から一定期間経過後にピークを迎え、そのあと徐々に低下していくため、解約のタイミングを誤ると損をする恐れがあります。
法人保険にはさまざまな種類があり、保障内容や保険料などが異なります。加入する目的を明確にし、目的に応じた商品を選ぶことが大切です。
定期保険とは、保険料が掛け捨てであり保障期間が一定期間である保険商品です。法人が契約者となる場合、以下2つの定期保険が主な選択肢となります。
長期平準定期保険や逓増定期保険は、保険期間を長くすることで、解約返戻率を高めています。
解約返戻金のピークは、長期平準定期保険が10〜30年後と長期間であるのに対し、逓増定期保険が5〜10年と短期間です。
養老保険とは、保険期間中に被保険者が亡くなった場合は死亡保険金を、保険期間中に亡くなることなく満期を迎えた場合は満期保険金を受け取れる保険です。
養老保険の死亡保険金と満期保険金は同額であるため、役員・従業員の死亡退職金と勤め上げた際の退職金を1本の保険契約で準備できます。
また従業員の福利厚生が目的で、企業が養老保険に加入する場合は支払った保険料の1/2を損金へ算入可能です。
医療保険は、病気やケガで入院・手術した場合などに給付金が支払われる保険です。がん保険は、所定のがんと診断された場合や、がん治療を受けた場合などに給付金が支払われます。
役員・従業員が病気・けがで入院した場合や、所定のがんと診断された場合に、給付金を経営資金に充てたり見舞金を支給したりできます。
また企業が保険料を支払い、役員が退職したときに契約者の名義を個人に変更することで、医療保険やがん保険の契約を退職金代わりに譲渡するのも活用方法の1つです。
終身保険とは、万一の場合の保障が解約しない限り一生涯にわたって継続する保険です。退職金の準備や事業承継など、さまざまな手段に活用できます。
また終身保険の保険料は、全額が資産に計上されます。
次に、法人保険に加入する際の手順を解説していきます。
加入目的によって、法人保険の選択肢やプランが変わります。
「経営者が万一の場合のリスクに備える」「役員・従業員の退職金を準備する」など、法人保険に加入する目的を明確にすることが大切です。
具体的な商品を選ぶ前に、法人保険の種類を選びましょう。
例えば、経営者の万一の場合に備える目的なのであれば、割安な保険料で手厚い保障を準備できる定期保険が主な選択肢です。役員・従業員の福利厚生を手厚くするのであれば、養老保険や医療保険などが選択肢となります。
保険会社や保険代理店に問い合わせて具体的な商品を選びましょう。保険会社によって商品のラインナップ、保険料の設定が異なるためです。なお支払う保険料は、同一商品の同じプランであれば、保険会社と保険代理店のどちらで契約しても差はありません。
法人保険に加入するときの注意点のうち、代表的なものを2点解説します。
法人保険の種類によっては、保険料の一部または全部を損金に算入できます。しかし法人税の負担を軽減するために、法人保険に加入するのはおすすめできません。
「解約返戻金を役職員の退職金に充てる」のような出口戦略を考えたうえで、企業の利益をコントロールするのも、法人保険の活用方法の1つです。一方で企業の利益によっては、納税して内部留保を厚くした方が、安定的に経営できる可能性があります。
また2019年(令和元年)6月の法人税基本通達により、一部の法人保険の経費処理ルールが変更されたため、節税目的で法人保険に加入するのは事実上難しくなりました。
法人保険に加入する際は、福利厚生規程を作成しましょう。
例えば、従業員の福利厚生目的で養老保険に加入する場合、福利厚生規程を作成していなければ、保険料の損金算入が認められない可能性があります。
また法人保険の解約返戻金を役員、従業員の退職金に充てる場合、適切なタイミングで退職金が支給されたことを証明するために退職金規程の作成が必要です。
最後に、各保険会社のプランと選び方のコツを解説していきます。
2022年8月時点で取り扱われている法人保険を3つご紹介します。
日本生命が取り扱うスーパーフェニックスは、貯蓄性の高さが特徴であり退職金準備や事業承継など幅広く活用が可能です。
マニュライフ生命のProsperity 新逓増定期保険は、保険期間を解約返戻金の少ない第1保険期間と保障が大きい第2保険期間に分かれています。そのため保険料負担を抑えつつ、手厚い保障の準備が可能です。
FWD富士生命の福利厚生プラン(養老保険)は、役員・従業員の福利厚生の充実が可能な商品です。保険期間を1年刻みで最長99年に設定できるだけでなく、満期を迎えると更新もできるため柔軟性が高いといえます。
法人保険を選ぶ際は、法人保険に詳しい担当者から加入することが大切です。
法人保険を販売するためには、保険の知識だけでなく税務や企業経営など、幅広い知識が求められます。法人保険の知識に明るい担当者は、加入目的に応じた適切なプランを提案してくれるだけでなく、経営改善に向けたアドバイスをくれる場合もあります。
複数の保険会社や保険代理店に話を聞いて、信頼できる担当者を探しましょう。
法人保険には「経営者が万一の場合に備える」「事業承継対策をする」「従業員の福利厚生を充実させる」などさまざまな活用方法があります。
加入目的を検討したうえで、信頼できる担当者から法人保険に加入すると、経営におけるさまざまなリスクに対処でき、企業のさらなる発展につながるでしょう。
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