長期平準定期保険とは メリットや注意点、経理処理方法、種類を解説
長期平準定期保険とは、保険期間(保障を受けられる期間)が「100歳まで」のように長期間にわたる保険です。保険期間中に、保障の対象となる人(被保険者)が亡くなったり、所定の高度障害状態に該当したりすると、死亡・高度障害保険金が支払われます。
長期平準定期保険とは、保険期間(保障を受けられる期間)が「100歳まで」のように長期間にわたる保険です。保険期間中に、保障の対象となる人(被保険者)が亡くなったり、所定の高度障害状態に該当したりすると、死亡・高度障害保険金が支払われます。
目次
長期平準定期保険とは、他の法人保険と比較して保障を受けられる期間が長い保険です。
長期平準定期保険の死亡・高度障害保険金や支払う保険料は、保険期間が満了するまで一定であり、契約途中で変動することはありません。
また長期平準定期保険は、途中で解約すると「解約返戻金」を受け取れるのが一般的です。
長期平準定期保険の解約返戻率(払い込んだ保険料に対する解約返戻金の割合)は、 契約後ゆるやかに上昇していき、一定期間経過後にピークを迎えたあと、下降していきます。
逓増定期保険とは、保険の加入期間が経過するほど、死亡高度障害保険金額が増えていく法人保険です。
長期平準定期保険は、加入期間が経過しても死亡・高度障害保険金額は変わりません。一方で逓増定期保険は、保険期間の経過にともなって死亡・障害保険金が契約当初の最大5倍まで増加します。
また逓増定期保険は、解約返戻率のピークが長期平準定期保険よりも早く訪れる傾向にあります。
長期平準定期保険には、以下3点のメリットがあります。
それぞれについて、ひとつずつ解説していきます。
被保険者を中小企業の経営者に指定して長期平準定期保険に加入することで、経営者が万一の場合に備えられます。
中小企業の場合、経営者の信用によって会社の経営が成り立っているケースが珍しくありません。そのため中小企業の経営者に万一のことがあると、取引先から契約を解除されたり、銀行から借入金の一括返済を求められたりする恐れがあります。
長期平準定期保険では、死亡・高度障害保険金額を1億円や2億円など高額に設定が可能です。長期平準定期保険に加入することで、経営者が万一のときの資金需要に対応でき、経営を立て直しやすくなります。
さらに死亡・高度障害保険金は、死亡退職金や弔慰金を支払う原資としても活用が可能です。残された経営者の家族が死亡退職金や弔慰金を受け取ることで、当面の生活資金や相続税の納税資金に充てられます。
長期平準定期保険に加入することで、解約返戻金という帳簿上に計上されていない資産(簿外資産)を形成できます。
簿外資産には、企業の積立金である内部留保とは異なり、法人税が差し引かれる前の利益を蓄えられるメリットがあります。
長期平準定期保険の解約返戻金は、経営者や役員の退職金を支払う原資に充てられるのが一般的です。
また、企業の資金繰りが困難となった場合に、長期平準定期保険を解約して解約返戻金を受け取ることで、経営資金に充てられます。
長期平準定期保険は、解約返戻金の範囲内で保険会社からお金を貸し付けてもらえる「契約者貸付制度」を利用できます。資金が必要な一方で保険契約を解約したくない場合は、契約者貸付を利用するのも選択肢です。
長期平準定期保険は、定期保険の一種です。終身保険や養老保険など、いわゆる貯蓄型保険と比較して保険料は割安に抑えられています。
また長期平準定期保険の保険料は、満期を迎えるまで一定です。途中で保険料が増える心配がないため、企業の資金計画が立てやすいです。商品によっては、保険金額が保険会社の定める基準を超えると、保険料に割引が適用されます。
加えて長期平準定期保険をはじめとした法人保険の保険料は、一部を損金に計上できるため、死亡保険金や解約返戻金を受け取るまで法人税の課税を繰り延べできます。
長期平準定期保険のデメリットは、以下の2点です。
長期平準定期保険に加入する際は、ここでご紹介するデメリットに注意しましょう。
長期平準定期保険は、加入期間が短いタイミングで解約すると解約返戻金が少なくなります。早期で解約すると、解約返戻金の金額が支払った保険料を大きく下回る点に注意が必要です。
長期平準定期保険の解約返戻率がピークを迎えるタイミングは、加入から10〜30年と商品や契約によって幅があります。
長期平準定期保険に加入する際は、解約返戻率の推移表で退職金の原資や経営資金として活用できるタイミングを確認しておきましょう。
長期平準定期保険の保険料は一部を損金に算入できるため、保険料を支払っているあいだの法人税は少なくなります。
しかし長期平準定期保険の保険金や解約返戻金は益金となり、法人税の課税対象となるため、課税を繰り延べしたにすぎません。
保険金や解約返戻金を、役職員の退職金をはじめとした支出に充てる「出口戦略」を取ることで、節税効果が期待できるといわれています。
一方、企業の赤字(欠損金)は、欠損繰越金として最長10年繰り越せるため、仮に赤字が余っても翌年や翌々年の法人の利益と相殺できます。
解約返戻金を退職金として受け取ったあとに経営する企業をたたむ予定でない限り、長期平準定期保険への加入はあまり法人税対策として効果的とはいえないでしょう。
かつては保険料の全額を損金に算入できる「節税保険」が販売されていました。
しかし2019年(令和元年)6月から、長期平準定期保険を含む定期保険と、医療保険やがん保険などの経理処理ルールが変更され、損金へ算入できる保険料のルールが厳格化されています。
長期平準定期保険の保険料のうち、損金に算入できる割合は1/2でした。あらたな経理処理ルールでは、最高解約返戻率によって損金に算入できる保険料の割合が決まります。
分かりやすくいえば、最高解約返戻率が高いほど、損金に算入できる保険料の割合が少なくなります。
最高解約返戻率が50%以下の長期平準定期保険は、保険料の全額を損金に参入できます。
最高解約返戻率50%超~70%以下の場合は、被保険者1人当たりの保険料が年間30万円以下であれば全期間にわたって、保険料の全額を損金に算入が可能です。
しかし被保険者1人当たりの保険料が年間30万円を超えていると、保険開始から4割までの期間は、保険料のうち6割しか損金に計上できません。仮に保険期間が40年であった場合、保険開始当初の16年は、保険料の6割を損金に計上し残りを資産に計上します。
最高解約返戻率70%超~85%以下の場合、保険開始当初4割までの期間は、保険料の4割を損金に計上し、残りを資産に計上します。
最高解約返戻率85%超になると、損金に算入できる保険料の計算方法は以下の通りです。
なお資産に計上した保険料は、加入から一定期間が経過したタイミングで、満期を迎えるまでの保険期間で均等に割った金額を損金に計上していきます。
法人保険の経理処理については、記事「法人保険に節税効果が期待できない理由とは 新たな経理処理ルールも解説」で詳しく解説していますので、併せてご一読ください。
長期平準定期保険には、保険会社によってさまざまなタイプが取り扱われています。
例えば保険会社によっては、過去1年以内に喫煙をしておらず、健康状態が保険会社の定める健康状態に該当した場合に受けられる「非喫煙割引」が適用されます。
また加入から一定期間の解約返戻率が通常の7割程度に抑えられている代わりに、保険料が割安となる「低解約返戻金型」を取り扱う保険会社もあります。
ソニー生命の長期平準定期保険は「非喫煙者割引特則」や「低解約返戻金特則」を付加でき、所定の要件に当てはまると保険料が割安となります。
加入から一定期間は、不慮の事故による死亡(災害死亡)を重点的に保障する長期平準定期保険を取り扱う保険会社もあります。災害死亡の重点保障期間中に病気で死亡した場合は、払い込んだ保険料の相当する金額の死亡保険金しか支払われません。
他にも、保険料の一部を契約者が株式や債券などで運用する「変額保険」や、保険の契約者が支払った保険料を、保険会社が米ドルや豪ドルなどに交換して運用する「外貨建て保険」などの種類があります。
長期平準定期保険は、長期間にわたって死亡・高度障害の保障が得られる法人保険です。死亡・高度障害保険金は、経営者が万一の場合の運転資金や、ご家族の生活資金などに充てられます。
また途中で解約すると解約返戻金を受け取って、一時的な資金需要に対応が可能です。ただし契約から早期で解約すると、大きく元本割れする恐れがあります。
長期平準定期保険を活用する際は、保険の専門家に相談のうえ経営する企業にとってのメリットや、加入するうえでの注意点を把握することが大切です。
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