目次

  1. 2020年の日本の導入率と推移
  2. 導入率の国際比較
  3. 経産省の補助事業とは
  4. キャッシュレス決済の手数料の現状
  5. キャッシュレス決済導入の問題点

 2020年の民間消費支出に占めるキャッシュレス決済の比率は29.7%と2019年よりも2.9%ポイント上昇しました。新型コロナの感染が広がるなか、キャッシュレス決済への注目は高まっています。

 キャッシュレス推進協議会がまとめた「キャッシュレス・ロードマップ2021」によれば、キャッシュレス決済比率は、2017年以降、毎年2%ポイント以上ずつ上昇しています。

キャッシュレス決済比率の推移(キャッシュレス・ロードマップ2021から引用)

 とくにキャッシュレス決済の大半を占めるのが、クレジットカードです。コロナ禍でECサイトの利用が伸びたことが全体を押し上げた要因と考えられます。

 世界の主要国と比べると、日本のキャッシュレス決済の導入率は低いという課題がありました。

世界主要国のキャッシュレス決済状況。日本は11カ国中、10番目だった(キャッシュレス・ロードマップ2021から引用)

 そんななか、キャッシュレス決済の加盟店を増やしたのが、経産省が2019~2020年に実施したキャッシュレス・ポイント還元事業です。2019年10月の消費税率引き上げをきっかけとして、中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元を支援する事業でした。

 補助金事務局だったキャッシュレス推進協議会のアンケート(PDF方式:1.64MB)によれば、9割以上の店舗がキャッシュレス決済を続けている一方「業務量が増えた」「事業終了後に手数料が上がった」ことを理由に、事業終了後にキャッシュレスの支払い手段の提供を縮小する店舗もありました。

 キャッシュレス決済の手数料は一定ではなく、加盟店によって様々な割合で設定されています。そこで、経産省は2021年1~3月、公式サイトなどを通じてWebアンケートを実施。1189社の中小店舗から回答を得ました。

 回答によれば、約7割がすでにキャッシュレス決済を導入しており、加盟店が支払う手数料は、クレジットカード、交通系電子マネー、その他電子マネーのいずれも3%台前半が約40%ともっとも高い割合でした。

 この理由について、経産省のキャッシュレス推進室は「ポイント還元事業で手数料3.25%以下を補助要件とした効果が継続していることが考えられます」と説明しています。

 一方、QRコードなどを使ったコード決済は決済業者がキャンペーンを展開しているため、0%がもっとも高い割合を占めていましたが、今後は有料化が進むと考えられます。

 経産省はWebアンケートで、キャッシュレス決済の導入条件や入金サイクルについても尋ねました。

キャッシュレス決済の導入条件(経済産業省の公式サイトから引用)

 入金サイクルは月1~2回のサイクルでも対応可能とする店舗の割合が高い一方、許容できる手数料の上限を尋ねたところ、2%台までという回答が全体の80%を超え、現状の手数料と1%近い開きがありました。

 今後、国の補助金に頼りすぎず、中小の店舗にどのように普及させるかが課題となっています。