新型コロナワクチンの職域接種、7つの注意点 学会が企業向け対策ガイド
新型コロナワクチンの職域接種について、日本渡航医学会と日本産業衛生学会が2021年6月21日、企業向けの「対策ガイド」を公表しました。職域接種は企業の義務かどうかやアナフィラキシー(重症のアレルギー反応)への備え、休暇取得、接種日の部署内調整、接種者の情報取得などについて解説しています。
新型コロナワクチンの職域接種について、日本渡航医学会と日本産業衛生学会が2021年6月21日、企業向けの「対策ガイド」を公表しました。職域接種は企業の義務かどうかやアナフィラキシー(重症のアレルギー反応)への備え、休暇取得、接種日の部署内調整、接種者の情報取得などについて解説しています。
目次
厚生労働省の新型コロナワクチンQ&Aによると、ワクチン接種とは、感染症の原因となる病原体に対する免疫ができる体の仕組みを使って、病気に対する免疫をつけることです。
日本では2021年6月までにファイザー社とモデルナ社のワクチンが承認されています。ファイザー社製で95%、モデルナ社製で94%の効果が確認されています。このうち、職域接種で使われるのは、モデルナ社製です。
副反応は、接種した部位の痛みや腫れ、倦怠感、発熱、頭痛などがほとんどですが、まれにアナフィラキシー(重症のアレルギー反応)が出ることがあるので注意が必要です。
また、対策ガイドによれば、ワクチンは発症や重症化を防ぐ効果は確認されていますが、感染そのものを予防する効果は明らかではありません。そのため、ワクチン接種後もマスク着用などの予防は必要です。
日本渡航医学会と日本産業衛生学会が公表したのは「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド 補遺版(職域接種のQ&A)」(PDF方式:792KB)です。
対策ガイドは、職域接種について多い質問項目をまとめています。この記事では、そのなかからいくつかを例示します。
モデルナ製ワクチンの添付文書(PDF方式:340KB)には、1回目の接種から4週間を超えた場合には、できる限り速やかに2回目の接種を受けるよう書かれています。対策ガイドは「4週間を超えた場合、1回目の接種からやり直す必要はありません」と説明しています。
対策ガイドによると、6月9日までの国内の報告では、新型コロナウイルスワクチンの100万回接種あたり、アナフィラキシーとして報告された件数は13件といいます。アナフィラキシーは若い人に多く、接種から30分以内に起こることが多く、すぐに対処する必要があるので、万が一に備えた準備が必要です。
具体的には、接種会場に救急医薬品を準備しておくとともに、緊急搬送にそなえて外部医療機関との連携ができる体制を構築しておくことを勧めています。
接種後に発熱した従業員への対応は症状によって次の対応を推奨しています。
出勤を控えるよう指示をすることを勧めています。
出勤を控えるよう指示し、次の条件をいずれも満たす状態で職場復帰させることを勧めています。
症状出現前の14日以内に、新型コロナウイルスの感染者と濃厚接触が確認されていない場合は、そのまま出勤させても良いとしています。
2回目ワクチンの接種後の方が、副反応の頻度が高く、かつ症状も強いといわれています。このため、とくに2回目接種後の欠勤に備えて、同じ業務グループの人は別々の日にワクチンを接種することで複数の欠勤を避けられると説明しています。
職域接種の実施義務について、対策ガイドでは「職域接種は法的義務ではなく、安全配慮の取り組みのひとつとは言い得るものの、これを実施しないと義務違反になるとは言えない状況です」と説明しています。
ただし「接種を実施する義務はないが、接種に関する情報を提供する義務がある」とする解釈が多いようです、とも説明しています。つまり、従業員に職域接種の制度を説明し、それを職場で実施するかどうかを明らかにし、もし実施しない場合は自治体の接種を利用するなどの代替案を提示した方が良いでしょう。
対策ガイドでは、多くの事業場では有給休暇の取得の推奨がなされているとしつつ、有給休暇の推奨が「取得の要求」にならないように配慮すべきだと説明しています。
また、副反応により欠勤せざるを得ない場合について「有給休暇だけでなく特別休暇の適用を検討することを考えましょう」と勧めています。
対策ガイドは「個々の従業員がワクチン接種を実施したかどうかの報告は、業務上の報告事項とは言えない」として、事実上の報告の強制となるような状況を避けるよう提言しています。
ただし、企業として職域接種・自治体接種を問わず、従業員のワクチン接種の情報を把握することは重要なので、自主的な申告など情報を取得するためのルールを構築することが必要だと説明しています。
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