逓増定期保険とは?メリットや経理処理方法、主な保険会社を紹介
逓増定期保険(ていぞうていきほけん)とは、加入から一定期間が経過したあと、一定の割合で死亡保険金が増加する保険です。プラン次第で企業の成長に合わせた保障を準備できます。本記事で、逓増定期保険の仕組みやメリット・デメリットや経理処理方法、提供している主な保険会社をご紹介します。
逓増定期保険(ていぞうていきほけん)とは、加入から一定期間が経過したあと、一定の割合で死亡保険金が増加する保険です。プラン次第で企業の成長に合わせた保障を準備できます。本記事で、逓増定期保険の仕組みやメリット・デメリットや経理処理方法、提供している主な保険会社をご紹介します。
目次
逓増定期保険とは、保障が得られる期間(保険期間)の経過に伴って保険金額が増えていく法人保険です。保険期間中に、保障の対象となる人(被保険者)が亡くなったり、所定の重い障害状態になったりすると、死亡・高度障害保険金が支払われます。
一般的に逓増定期保険は、保険期間が前期と後期に分かれています。前期期間は、加入時に設定した基準保険金額から増加しません。 後期期間になると、保険会社が定める一定の割合で死亡・高度障害保険金が増加していきます。
死亡・高度障害保険金額は、基準保険金額の最大5倍程度まで増加するのが一般的です。また増加した保険金額は、保険期間が満期を迎えるまで減少しません。 一方で支払う保険料は、満期まで一定です。
保険金額が増加する割合(逓増率)や、 保険金が逓増する期間は、保険会社によって異なります。
また逓増定期保険は、契約の途中で「終身保険」に切り替えられます。終身保険とは、一生涯の死亡・高度障害保障が得られる保険です。
逓増定期保険をはじめとした保険に加入する際は、健康状態の告知をして保険会社の審査を受ける必要があります。しかし終身保険に切り替える際は、原則として告知や診査は不要です。
逓増定期保険に加入するメリットは、以下の3点です。
逓増定期保険は、加入から一定期間が経過したあとに保険金額が一定の割合で増加していきます。そのため会社の成長に合わせた保障を準備しやすいです。
中小企業は、経営者の信頼によって事業が成り立っているケースが少なくありません。経営者に万一のことがあると、経営難となる恐れがあります。
法人保険に加入し、経営者が万一の場合に支払われた死亡保険金を企業の運転資金に充てると、経営難を回避できる可能性が高まります。また経営者の死亡退職金や残された家族への弔慰金の原資とするために、法人保険に加入するケースも珍しくありません。
ただ、会社が成長するほど、経営者の責任は重くなるのが一般的です。
そのため、法人保険に加入したときから一定期間が経過して、会社が成長していると、加入当初に設定した死亡保障額では万一の場合に資金不足となるかもしれません。
企業の成長によって保障額が不足した場合、保険金の増額や法人保険への新規加入の検討が必要です。しかし被保険者となる経営者や役職員の健康状態によっては、増額や新規加入ができないケースがあります。
一方、保険金が一定の割合で増加する逓増定期保険であれば、保障額を増額したり新規加入したりすることなく、経営者の責任に合わせた事業保障を準備しやすいと考えられます。
逓増定期保険を解約すると、解約返戻金を受け取れる場合があります。
逓増定期保険の場合、支払った保険料に対する解約返戻金の割合(解約返戻率)が、契約から5〜10年でピークが訪れます。
保険期間が長期にわたる「長期平準定期保険」は、解約返戻率がピークを迎えるのは、加入から10〜30年です。長期平準定期保険と比較すると逓増定期保険は、解約返戻率がピークを迎えるタイミングが早いといえます。
経営者役職員の有給退職が数年後に控えているのであれば、逓増定期保険に加入して勇退退職金を準備するのも方法でしょう。
また、逓増定期保険なら、加入してから数年で企業が経営難に陥った場合に、解約返戻金を緊急時の事業資金として活用しやすいです。
契約者貸付とは、解約返戻金の一定範囲内で保険会社からお金を貸し付けてもらえる制度です。逓増定期保険にも解約返戻金があるため、契約者貸付を利用できます。
契約者貸付を利用すると、利息を含めて保険会社に借入金を返済しなければなりません。一方で契約者貸付を利用しても、保険契約は継続されます。
逓増定期保険を解約して、解約返戻金の事業資金として活用する場合、解約によって経営者が万一の場合の死亡保障がなくなってしまいます。一時的に資金が必要であり、保障を引き続き得たい場合は、契約者貸付を利用するのも方法です。
逓増定期保険のデメリットは、以下の2点が考えられます。
逓増定期保険は、契約時に定める基準保険金額を平準定期保険と同額にした場合、保険料が割高となります。保険料が割高なのは、逓増定期保険に加入したあと保険金額が増える仕組みであるためです。
逓増定期保険に加入する際は、保険料負担が経営を圧迫しないか、満期まで支払いを継続できる見込みがあるのか入念に確認しましょう。
逓増定期保険は、解約返戻金のピークを迎えるタイミングが長期平準定期保険よりも早いです。しかしながら加入から1年や2年で解約をすると、解約返戻金額が払い込んだ保険料の総額を大きく下回ってしまいます。
逓増定期保険に加入する際は、加入から1年や2年で解約する可能性がないのか慎重に検討することが大切です。
法人保険の経理処理ルールは、2019年(令和元年)6月に改正されました。改正の対象となる法人保険は、逓増定期保険をはじめとした定期保険と、医療保険やがん保険などの第三分野保険です。
新たな経理処理ルールでは、最高解約返戻率に応じて損金に算入できる割合が変わります。
最高解約返戻率が50%以下の逓増定期保険は、保険期間のすべてにわたって保険料の全額を損金に算入できます。
また最高解約返戻率50%超~70%以下の逓増定期保険も、被保険者1人当たりの保険料が年間30万円以下であれば、保険料の全額を損金に算入可能です。
しかしながら、被保険者1人当たりの保険料が年間30万円を超えると、保険開始から4割までの期間は、保険料のうち損金に計上できるのは6割までとなります。
最高解約返戻率が70%超~85%以下になると、被保険者1人あたりの保険料にかかわらず、保険開始から4割までの期間は、保険料の4割しか損金に計上できません。
最高解約返戻率85%超の逓増定期保険は、契約当初10年間と、11年目から返戻率のピークを迎えるまでのそれぞれで、損金に計上できる保険料の割合が異なります。計算式は、以下の通りです。
なお損金に計上しなかった保険料は、資産へと計上します。資産計上した保険料は、加入から一定期間経過したあと、残りの保険期間で均等に分けて損金に計上する形で取り崩していきます。
法人保険の具体的な経理処理ルールについては、記事「法人保険に節税効果が期待できない理由とは 新たな経理処理ルールも解説」で詳しく解説しています。
2022年8月現在、逓増定期保険を提供している保険会社の例は、以下の通りです。
同じ逓増定期保険であっても、保険会社によって取り扱いが異なっています。
例えば明治安田生命は、通常の逓増定期保険の他に「3年間災害保障型逓増定期保険」を取り扱っています。3年間災害保障型逓増定期保険は、加入から3年間の死亡・高度障害保障を不慮の事故や特定の感染症などに限定することで、保険料負担を抑える仕組みです。
東京海上日動あんしん生命は、低解約返戻金型の逓増定期保険を取り扱っています。低解約返戻金型逓増定期保険は、加入から一定期間の解約返戻金を低くして保険料を抑えた逓増定期保険です。
逓増定期保険は、加入してから一定期間の経過後に死亡・高度障害保険金が一定割合で増加していく保険です。
逓増定期保険に加入することで、会社の成長に伴う必要死亡保障額の増加に対処しやすくなります。また長期平準定期保険と同じく、解約返戻金を役職員の退職金や一時的に必要となった企業の運転資金に充てられます。
ただし逓増定期保険の保険料は、長期平準定期保険よりも割高に設定されています。保険料負担が企業経営を圧迫しないか慎重に検討したうえで、加入しましょう。
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