目次

  1. 技能実習制度(技能実習生)とは
    1. 在留資格「技能実習」について
  2. 技能実習制度を利用するときに必要な準備
    1. 受け入れ機関別のタイプ
  3. 技能実習生を受け入れるときの手順
  4. 技能実習生を受け入れるときの注意点
    1. 技能実習生の選考
    2. 技能実習生との雇用契約
    3. 実習計画の作成と認定申請
    4. 技能実習生受け入れの費用
    5. 技能実習生の人権
  5. 技能実習生とコロナ
  6. 技能実習制度の中長期的な活用

 技能実習制度は、昭和57年1月の出入国管理及び難民認定法の改正に基づいて始まった制度です。

 国際貢献を目的に開発途上国等の外国人を一定期間(最長5年間)日本に受け入れて、OJTを通じて技能移転を行うことを目的として始まりました。

 この制度を利用して技能実習を受ける目的で来日する外国人の方たちを「技能実習生」と呼んでいます。

 したがって、技能実習制度の本来の目的はあくまでも「技術移転」であり、いわゆる単純労働を想定した「就労」ではないという点が特徴の一つです。

 ただし、「技術移転」という目的の範囲内でという前提ではあるものの、技能実習生は、入国直後の講習期間を除き、受け入れ側の企業との雇用契約を結んでOJTに従事し、その間は日本の労働関係法令が適用されます。

技能実習制度の仕組み(外国人技能実習機構のサイトから引用)

 したがって、企業経営者としては、「技能実習制度」という決められた枠組みの中で、自社の事業経営の中で培ってきた技術や技能を、技能実習生に実習を通して移管する形が取られます。

 技能実習生としては、実習を通して提供した労働力に対して雇用契約上の報酬を受け取る形になります。

 技能実習制度によって来日する技能実習生は、入管法に基づく「技能実習」という在留資格を申請し、許可を得て入国します。

 「技能実習」の在留資格には、1号、2号、3号があり、所定の技能検定等に合格するなど、技能レベルに応じた基準が設定されています。

 では、技能実習制度を利用して受け入れ企業となるためには、まず何から始めれば良いのでしょうか。

 技能実習制度にはかなり多くの業種の職種が対応していますが、自社が受け入れたい職種や作業が、技能実習制度に対応しているかを確認する必要があります。

 技能実習移行対象職種(令和3年3月16日時点、PDF方式:544KB)によると、85職種156作業が対応しています。

 現在の技能実習制度では、技能実習生の受け入れを行う場合、以下の2つのタイプがあります。

  • 団体管理型……非営利の管理団体(事業協同組合、商工会など)が技能実習生を受け入れて、傘下の企業などで技能実習を実施するタイプ
  • 企業単独型……日本の企業などが海外の現地法人、合弁会社、取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施するタイプ

 ここでは、多くの一般企業で利用を検討する可能性が高い、団体監理型で技能実習生を受け入れる場合の手順とを解説します。

 技能実習生を受け入れるには、出入国在留管理局の許可を得た監理団体(協同組合)に加入して技能実習生受け入れ希望の申込手続きをし、送出国の送出機関から監理団体経由で技能実習生を紹介してもらう形で受け入れることになります。

 全体の手順は、以下のとおりです。

技能実習生を受け入れるときの11の手順を紹介します
技能実習生を受け入れるときの手順
  1. 監理団体と送出国の送出機関があらかじめ契約を結んでいることを確認する
  2. 受け入れを希望する企業が技能実習生受け入れの申し込みをする
  3. 送出国の送出機関が技能実習生の募集・候補者選考を行い、受け入れ企業が選考する
  4. 受け入れ企業が技能実習生と雇用契約を結ぶ
  5. 受け入れ企業が実習計画の作成と認定申請を行い、認定を受ける
  6. 監理団体が実習計画の申請を行う
  7. 外国人技能実習機構が団体許可および実習計画の認定を行う
  8. 監理団体が地方出入国在留管理局に在留資格(技能実習〇号)の申請を行う
  9. 地方出入国在留管理局が在留資格を認める入国許可を出す
  10. 技能実習生が日本に入国する
  11. 監理団体が受け入れ企業に技能実習生の引き渡しを行う
  12. 監理団体が受け入れ企業に指導・支援を行う

 続いて、技能実習生の受け入れ手続きをするときに、特に注意したいポイントをご紹介します。

 受け入れ企業にとって気になることの一つは、どのような技能実習生が候補として紹介されるかでしょう。

 技能実習生の選考は、一次選考として送出機関が候補の技能実習生を選び、受け入れ企業が最終選考を行うといった形で進むことが多いようです。

 採用する技能実習生の選考を行う選考の手段や方法については、監理団体によって異なるため、送り出し機関側の選考基準も含めて事前に確認することが大切です。

 また、受け入れ企業としての選考基準や選考方法についての希望は、監理団体にあらかじめ明確に伝えておくのが良いでしょう。

 受け入れる技能実習生が決定したら、次にその技能実習生と雇用契約を結びます。「団体管理型」タイプの受け入れの場合、技能実習生のための「技能実習生〇号」の在留資格取得申請手続きは監理団体が行いますが、その申請に必要な提出書類の1つに雇用契約書があります。

 そのため、受け入れ企業は技能実習生が入国する前に雇用契約書を作成して技能実習生個人と契約を交わす必要があります。

 受け入れ企業は、どのような実習を行うのかを記載した実習計画を実習生ごとに作成し、外国人技能実習機構の認定を受ける必要があります。

 技能実習生の受け入れを行う際には、さまざまな費用がかかります。かかる費用としては、主に以下が挙げられます。

技能実習生受け入れにかかる主な費用

・入国前にかかる費用
 管理団体(協同組合)への入会金・出資金:1万~10万円
 技能実習生の渡航費用:4万~15万円
 書類作成及び申請手数料:2万~10万円
 保険料:1万~2万円
・入国後~実習開始前にかかる費用
 講習費用:5万~10万円/月
 講習手当:5万~7万円/月
 管理費用(送り出し機関の管理費含む):2万~5万円/月
・実習開始後にかかる費用
 教育費用:1万~3万円/年

 技能実習生受け入れの費用については、監理団体によってかなり異なるのが実態のようです。

 ある監理団体の管理費用が、他の管理団体と万単位で異なることは珍しくない、と聞いたこともあります。

 そのことを考えると、受け入れ希望の申し込みをする前に、監理団体それぞれのサポートのメニューや内容について、できるだけ詳しい説明を受け、納得のいく説明を得られる誠実な監理団体を選ぶことが非常に重要です。

 複数の監理団体を比較したり、既に技能実習生の受け入れを行っている企業に監理団体の評判をヒアリングするなど、自社の状況や要望に合った監理団体を選ぶのが望ましいと言えます。

 過去の技能実習制度では、監理団体や受け入れ企業の対応が行き届かずに技能実習生が過酷な労働条件を強いられたり、給料や残業代が支払われなかったケースが発生した時期がありました。

 受け入れ企業が、経営戦略の一環として積極的に外国人技能実習生を活用するには、日本人の従業員と同じように人権と個性を尊重し、日本語学習の支援や生活環境に対するサポートを行わなければなりません。

 受け入れ企業としては、それらを適切に実行できる体制を社内に整えることが重要となります。

 2020年に入ってから猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響は、技能実習生と受け入れ企業にも少なからず影響が出ています。

 感染拡大や緊急事態宣言を背景に、受け入れ企業の経営の都合で技能実習を予定通り行われなくなる、暴力を受けたりなどの被害を受けた、などの相談が増えているという情報が技能実習生を支援するグループのSNS投稿からも見られるようになりました。

 出入国在留管理庁の公式サイトによると、新型コロナウイルス感染症の影響で実習が継続困難になってしまった技能実習生等に対して、雇用を維持するために特定の産業分野においての再就職支援や、特定の条件の下で「特定活動」の在留資格を付与するなどの対策が取られています。

たとえば、技能実習2号を修了している技能実習生については、「特定活動」への在留資格変更に加えて、優良な管理団体および受け入れ企業の場合は「技能実習3号」への在留資格変更が可能です。詳しくは、出入国在留管理庁の「新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を受けた技能実習生の在留諸申請の取扱いについて」(PDF方式:872KB)を参照してください。

 また、厚生労働省のリーフレット(PDF方式:180KB)によると、もし技能実習生が新型コロナウイルスに感染した場合は、日本人の労働者と同様に、保健所への相談などが必要となります。業務に起因して感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。

 技能実習制度では、技能実習1号、2号、3号と、技能検定等に合格して段階的に技能レベルを上げていくことによって、技能実習生である外国人が最長5年間、企業の中での計画的にキャリアアップに取り組める可能性があります。

 さらに、技能実習の対応業種と共通の業種の場合、決められた技能試験と日本語能力試験などの要件を満たせば、「特定技能」の在留資格に移行して更に長く在留することも可能になるケースがあります。

 グローバル時代の中長期的な経営戦略の柱の一つとして、技能実習制度を活用してみてはいかがでしょうか。