結婚して父の偉大さを理解

 田澤さんの父は土建業からスタートし、不動産業で事業を成長させ、ガソリンスタンドなどに手を広げました。その背中を見て育った田澤さんは「小学生の頃から、父に強い憧れを抱いていました。勉強を頑張ったのも、将来、自分も社長になりたいと思っていたからです」と語ります。

 しかし、家族の中では次男の田澤さんではなく、兄が事業を継ぐという暗黙の了解があったといいます。高校生になった田澤さんは、初めて父親に「俺、どうすればいい?」と将来の進路について尋ねました。「自分の人生だから、好きにすればいい」という父の答えに、「もう後を継ぐことはない。ほかのことで親を見返そうと、弁理士を目指しました」

 弁理士とは知的財産の専門家で、難易度の高い資格です。大学卒業後は大手企業に就職し、弁理士資格を取得してキャリアを積みました。社内弁理士として期待されていましたが、29歳で転機が訪れます。

 「結婚して子どもを持つようになり、改めて父の偉大さを痛感するようになりました。このままおやじの生き様を知らずに人生を歩んでいいのだろうかと」。ちょうどその頃、後継ぎと目されていた兄は、大手不動産会社で勤め続けることが決定的となります。

 「お前はどうするんだ」。父からの一言に、背中を押されました。引き留める会社を振り切って退職し、大企業の社員から一転、中小企業での怒濤の日々がスタートします。

接客スキルを積み上げた修業時代

 父に任されたのは、メインの不動産業でも、弁理士資格が生かせると考えていた日用品関連の事業でもなく、ガソリンスタンドでした。「話が違う」と憤りながら、田澤さんは元売りの石油会社直営のガソリンスタンドで修業を積むことになりました。

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