家業は継がず三井物産に就職

 布施商店は1912年、布施さんの曽祖父が創業しました。当初は石巻の魚で魚油や煮干しを作っていましたが、2代目の祖父はさつまあげやかまぼこなどの練り物製造、先代の父・三郎さんは鮮魚卸や加工業に注力。時代に合わせて業態を変えながら、家業を成長させました。

 現在は主に水揚げされた真ダラの1次加工を担い、箱詰めや三枚おろしで、大手スーパーなどに卸しています。年商は5億円に上ります。

布施商店の主力商品である真ダラ

 幼い頃の布施さんは、実家を家業として強く意識したことはなく、継ぐ気はありませんでした。「もっと広い世界を見てみたいと、東京の大学に進学しました」

 海外での仕事を希望していた布施さんは大学卒業後の2007年、三井物産に入社し、コンビニ向けの食品流通に関わる仕事を手掛けていました。しかし、入社して4年目が終わろうとしていた2011年3月11日、東日本大震災が家業を襲いました。

「会社を畳むと思っていたが・・・」

 その日、布施さんは東京にいました。大きな揺れを感じて、テレビをつけると、生まれ育った石巻市が、津波にのみ込まれる様子が映っていました。「津波に襲われてから、実家は電話もつながらなくなりました。家族の無事を確認するために、避難所の掲示板に書かれた安否情報の写真を、毎日ネットで調べていました」

 1週間後、家族の無事は確認できましたが、津波で実家は流され、会社の1階には流れ着いたがれきが散乱していました。布施さんが石巻に帰ることができたのは、震災から1カ月後でした。「生まれ育った地元がめちゃめちゃになっていて、大変なことが起こったと改めて実感しました」

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