写真の課題をイラストで解決 受注を増やした「サービスの見える化」
イラストという手法がもつ効果に着目し、シーンを絞ってサービス化した結果、既存顧客だけでなく、新規の取引先からの問い合わせや注文が寄せられるようになった印刷会社があります。そこには「サービスの見える化」という一工夫を支援した山形市売上増進支援センターY-biz(ワイビズ)から紹介します。
イラストという手法がもつ効果に着目し、シーンを絞ってサービス化した結果、既存顧客だけでなく、新規の取引先からの問い合わせや注文が寄せられるようになった印刷会社があります。そこには「サービスの見える化」という一工夫を支援した山形市売上増進支援センターY-biz(ワイビズ)から紹介します。
曙印刷は、会社案内やチラシ、リーフレットなどの紙ものからノベルティグッズの制作など商業印刷物全般と、名刺や封筒、伝票といった事務用印刷を幅広く手掛ける地域密着型の印刷会社です。
創業45年になる曙印刷は、川合勝芳社長が「新規の仕事はほぼ既存のお客さまからの紹介がきっかけ」と話すように、顧客との信頼を軸に仕事を増やしてきました。こうしたなか、今後はサービスや商品を軸にした顧客開拓と既存顧客へのソリューション営業に取り組みたいとY-bizを訪れました。
採用支援系のサービスを作っていきたいが、どのように進めていけばいいかを悩んでいるとのことでした。川合社長は印刷業という仕事柄、加えて地域の企業団体の仕事やPTA関係の仕事に積極的に関わるなかで、地域企業の魅力が地域の学生やその親御さんたちに届いていないと感じるようになったそうです。
地域には規模こそ大きくないものの実は“いい企業”がたくさんあります。たとえば、名前はあまり知られていないけれど社員から働きやすいと評価が高く離職率が低い会社や、業種に対するイメージから避けられやすいが、実際は仕事環境が整えられていて働きやすく定着率が伸びている会社があるそうです。
しかし、地域企業の良さは、事業概要、売り上げ規模や社員数、扱っている商品や製造製品の写真といった、採用パンフレットに一般的に記載されがちな情報では伝わりづらいといいます。「それは地域にとっても学生にとってももったいないと思うから、魅力が伝わる会社案内を作る仕事を増やしたい」と意欲を持ってました。
川合社長に思いに共感しつつ、「魅力が伝わる会社案内」とは具体的にどういうものなのかイメージが湧かないことがひとつの課題であると感じました。
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百聞は一見にしかずと考え、まずは「企業の魅力が伝わる会社案内」を実際に作ってみることを提案しました。つまり、「サービスの見える化」です。
具体的には、曙印刷自社の会社案内を新たに制作し、顧客に紹介するサンプルとして活用することを提案しました。曙印刷の事業内容と曙印刷が制作する会社案内の特徴を同時に伝えられる営業ツールになると考えたからです。
川合社長は若い社員のアイデアを活かしたいと「曙印刷の魅力が伝わる会社案内制作プロジェクト」のリーダーに入社7年目の黒田優美(くろだゆうみ)さんを抜擢しました。社内からアイデアを集め出来上がったのは、曙印刷のサービスや特徴が「くすっと笑えるような表情や構図」で表現された絵本のような会社案内でした。
この会社案内を見ているうちに、イラストには気負わずに特徴や魅力を伝えられる以外にもうひとつ、特定の個人や機械、商品を示さずに読み手に具体的なイメージを湧かせることができるという価値があることに気が付きました。
「写真が使いづらい」といった顧客の声はないかとお聞きしたところ、「名刺に写真があったほうが覚えてもらいやすいけれど顔写真は載せたくない」「会社案内に載っていた社員が辞めてしまって修正が必要になった」といったお悩みを聞いたことがあるとのことでした。
そこで、特徴が写真では伝わりづらい、権利やノウハウ等の問題から実物の写真掲載が難しい、プライバシーや肖像権の問題から人物写真の使用が難しい、といった悩みをもっている顧客向けの会社案内や販促物の制作のサービスとして打ち出すことを提案しました。
サービス化にむけて、どんなシーンでイラストが活きるかの例示と依頼できる内容のメニュー化に取り組んでもらいました。ゆるいイラストを使ってユーモラスにデザインすることからサービス名は「ゆるデザ制作サービス」になりました。
サービス開始に合わせ、曙印刷では、従来のWebサイトとは別にゆるデザ制作サービスを紹介する専用サイトを立ち上げ、メディアにも案内しました。
報道された新聞記事、曙印刷のWebサイトや冊子の会社案内を見た企業から新たに受注したり、“ゆるデザ”で制作した販促物を見た他企業から問い合わせが寄せられたりしているそうです。
会社案内のほか、名刺の似顔絵や店舗案内パンフレットの受注など、Webサイトを見た市外、県外の企業からの問い合わせがあり、新たなサービスを軸にした新規の仕事開拓が実現しています。
「現場写真では魅力や特徴が伝わりにくい」「社員を登場させたいがプライバシーが気になる」という課題を持っていた警備会社でも採用チラシを写真から「ゆるデザ」に切り替えました。
「ゆるデザ」で制作した採用のチラシについて「イラストが社風に合い、会社の雰囲気をうまく表現できた」「キツイ仕事というイメージを持たれるが、実際は異なるので、それを払拭するのに効果的だった」と好評だったそうです。
従来から使われてきた手法や技術であっても、その手法や技術を使う目的と効果をわかりやすく伝えることで潜在需要が掘り起こされ、新たな顧客開拓につながることがあります。
視覚的に伝えたい情報をイラストで表現するという手法は、決して新しいものではありませんが、イラストならではの価値を見直し、それが生きるシーンを売り手側が具体的に提案することで新たな需要を掘り起こすことができました。
Y-bizでは事業者さんの想いを大切に、事業者さんの強みや特徴がもつ意味や価値を問い直し、新たなビジネスチャンスにつなげるご支援を続けてきます。
Y-biz(山形市売上増進支援センター)は「地域活性化は地方創生に必要不可欠であり、地元企業の売上増には伴走型支援が欠かせない」との佐藤孝弘市長の考え方に基づき、東北初・県庁所在地初のビズモデル型支援施設として2019年1月に始動しました。
売上アップに特化した伴走型支援機関として、京都についで長寿企業が多いと言われる山形で創業支援から老舗の新サービス開発・販路開拓までサポートしています。相談は1回60分。何度でも無料です。
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