人材育成目標の設定手順は?部署別の目標例や達成のポイントを紹介
人材育成目標の設定は、企業と社員の成長に不可欠です。しかし目標設定に時間がかかったり、設定しても未達成が続き形骸化してしまうことも少なくありません。今回はシンプルな目標設定手順と目標例、目標達成のポイントを社会保険労務士が解説します。
人材育成目標の設定は、企業と社員の成長に不可欠です。しかし目標設定に時間がかかったり、設定しても未達成が続き形骸化してしまうことも少なくありません。今回はシンプルな目標設定手順と目標例、目標達成のポイントを社会保険労務士が解説します。
目次
人材育成目標の指針となるものは「企業の目的・理念」です。
経営者は、目的・理念を実現するためにどのような人材が必要かを明確にしたあとで、社員一人一人の人材育成目標を設定する必要があります。
最近では、新型コロナウイルス感染症の影響で、集合研修やOJTが出来なくなり人材育成が進まないという企業が増えています。
今後は「ポストコロナ・ウィズコロナ時代への対応」も考慮しつつ、人材育成目標を立てることが望まれます。
まず、目標と目的の違いについておさらいしましょう。
目的は「的(まと)」であり最終的に目指すゴールです。目標は「標(しるべ)」であり、ゴールへ向かうまでにいくつかある中間地点です。
目標を決めるとなると、経営者も社員も張り切って最初からゴールとさして変わらない地点を設定しがちです。
ですが、マラソン大会でも42.195kmのゴールに対し給水所は3~5kmごとに設置されている場合がほとんどです。
目標を考える際は、ゴールである目的との距離を頭に入れたうえで、「現在の自分がなんとか達成できそうだ」という地点を目標にすると良いでしょう。
もし達成が容易だったならば、次回の目標は少し距離を伸ばした地点に設定し、反対に未達成であれば距離を縮めた地点に目標を設定すれば良いのです。
目標を立てるには考えることが必要なので、面倒だと思うこともあるかもしれません。ですが人材育成の目標を立てることで社員、企業ともに次のようなメリットが得られます。
【社員】目標を言語化するので行動しやすい
→何を行動すべきかがわかるので「指示待ち」状態の社員が減少し、生産性が向上する
【社員】目標達成のため前向きになる
→業務へのモチベーションがアップ、社員自身の成長に繋がる
【企業】企業の目的到達、理念の実現化に近づく
→生産性向上・社員の成長により企業全体の利益に資する
ある映像作成の企業では、アルバイトの定着率が悪く、求人にいつも苦労していました。
初期時給や労働時間の待遇はそのままに、ある時からアルバイトにも人材育成目標を設定してもらうようにしたところ、6か月を経過しても離職者が発生しませんでした。
経営者の方に定着するようになった理由を伺ったところ、「アルバイトにも目標を設定することで社員とアルバイトの垣根が無くなりチーム感が増したため」と話していました。
このように、目標を設定することで先に述べた3つのメリットのほか、思わぬ企業の課題解決に繋がる例があります。
目標設定にあたって最初のとっかかりは高いハードルかもしれませんが、それを乗り越えてでも人材育成の目標を立てるメリットはあります。
目標を立てる手順にはいくつかのフレームワークがあります。今回はシンプルで基礎的と言われる「ベーシック法」に基づいた手順を解説します。
目標項目とは、何を達成するかという項目です。目標項目は4つのタイプに分けられます。
目立ちにくいですが「改善・解消」や「維持・継続」も立派な目標項目であるということを認識しておきましょう。
目標項目を達成したか判断する基準を設定します。なるべく「数値」で設定することが求められますが、どうしても数値化が難しいものもあります。そういった場合は「状態」で表現するようにしましょう。
数値で設定するのはアウトプットに限らず、プロセスに照準を当てても良いです。具体的には次の通りです。
目標を達成する期限を設定します。目標管理制度と併せて、企業が社員一括で期限を設定する場合もあります。
企業が目標管理制度を導入するのが初めてということであれば、社員一括で1カ月や3カ月の短期間を設定し、企業・社員早めに反復して行い、慣れるのが良いと思います。
最後の手順です。目標項目を達成するために日々実践するアクションプランを設定します。どう実行に移すか、アクションの頻度や手段、関係部署、関係者、利用するツール等を具体的に記載します。
以上の手順を踏まえて作成した目標は、頭でイメージして完結ではなく、下記のような目標設定シートに記載するなどして必ず手を動かしてアウトプットするようにしましょう。
ここでは一般的な部署をピックアップし、先に述べた目標を立てる手順①の「目標項目タイプ」に沿って、立てるときのポイントや目標例を提示いたします。
総務部・財務部は、企業が企業然とするための土台となる部署であるため、「維持・継続」タイプの目標が向いています。
人事部は、企業の経営資源である人材に関する部署です。企業や社員の抱える課題等を「改善・解消」するタイプの目標が向いています。
企画部・開発部は、企業の事業に関する部署です。「創出・開発」タイプの目標が向いていますが、このタイプの目標は難易度が高いのでプロセスを重視すると後の振り返りがしやすいです。
カスタマー部のようなお客様と接する機会の多い部署では、常に対応のアップデートが求められます。「向上・強化」タイプの目標が向いています。
それでも目標設定に悩んだときは、日本の教育者・哲学者の森信三さんの言葉である「時を守り、場を清め、礼を正す」を参考にすると良いでしょう。
この3つのルールは「職場再建の3原則」とも呼ばれ、どれかが欠けると組織は崩壊すると言われています。
まだ就労環境に慣れていない新入社員は、この職場再建の3原則を参考に目標設定すると良いかもしれません。
時間をかけて設定した人材育成目標が三日坊主になってしまう企業は少なくありません。期限が近づいてきて慌てて基準に到達させようとする社員もいるかもしれません。
目標を達成させるために、経営者が意識すべきポイントを2つ説明します。
目標が達成出来ない理由の1つとして、「目標に取り組む時間不足」が挙げられます。この解決策としては、部下が上司を巻き込んでPDCAサイクルを回せる環境作りがあります。
部下が上司に自身のキャパシティを伝えられる信頼関係を構築し、目標設定には上司も目標が適切な範囲かどうか共に考えます。
この環境作りには上司である管理職層への教育が必要です。単に、「部下の目標未達成は上司の責任、賞与査定を減点する」といったものではなく、「部下への接し方プロセスを評価する」と経営者が管理職層へ伝えてみましょう。
上司も部下に対して気持ちにゆとりを持って接することができ、部下も上司に進捗を報告しやすい、巻き込みやすい環境に近づくと思います。
目標を立てた直後はやる気に溢れていても1日、3日、1週間経てば大部分忘れてしまいます。これの対策として単純な方法ではありますが、目標やアクションプランを記載した目標設定シートを毎日見るように促します。
紙に出力してデスク周りに貼ったり、デスクトップの一部にすることを推奨すると良いでしょう。
目標達成には、社員の主体性を育て自ら目標に取組んでもらうことが必要です。
では主体性を育てるにはどうすれば良いのか、様々な手法があると思いますが今回は「職場再建の3原則」を経営者が徹底することを唱えたいと思います。
「やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かじ」という山本五十六さんの有名な言葉があります。
3つのルールを経営者が社員の前で徹底することで、見本となり、信頼を得ることで社員も動き始めることでしょう。
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