目次

  1. 経営者の平均年齢は62歳
  2. 経営者が若い企業の特徴
    1. 増収企業の割合が高い
    2. 試行錯誤を許容する組織風土
    3. 新事業の進出や設備投資に積極的
  3. 事業承継をした企業の特徴
    1. 若くして継いだ方が高成長
    2. 承継方法別では同族継承や内部昇格がやや高成長
  4. 事業承継は企業の成長のチャンス

 日本では、経営者の高齢化が年々進んでいます。経営者の平均年齢の推移を調べると、2009 年以降、平均年齢は上昇を続けており、2019 年には過去最高齢を更新し、経営者の平均年齢は 62.16 歳となっています。

 2021年版の中小企業白書では、こうした高齢化が、休廃業・解散企業の増加につながっており「貴重な経営資源を散逸させないためには、意欲ある次世代の経営者や第三者などに事業を引き継ぐ取組が重要である」と指摘しています。

 そこで、経営者の年齢が企業の業績や企業風土にどのような影響を与えるかを中小企業白書がまとめています。

 経営者の年齢別に増収企業の割合を調べると、経営者が30 代以下の企業では増収割合が6割程度なのに、80 代以上の企業では4割程度となっており、若いほど増収企業の割合が高い傾向が見られました。

経営者年齢別の増収企業の割合。30代以下では増収企業が6割に達する

 つぎに、経営者の年齢別に試行錯誤(トライアンドエラー)を許容する組織風土の有無を分析しました。

経営者の年齢別に試行錯誤(トライアンドエラー)を許容する組織風土の有無についての質問に対する回答割合。経営者が若い方がトライアンドエラーを許容する風土であると回答している

 すると、30代以下の企業では、経営者年齢が若い企業ほど、トライアンドエラーを許容する組織風土かどうかについて7割以上が「十分当てはまる」「ある程度当てはまる」と回答していました。経営者の年齢が若いほど、トライアンドエラーを許容する組織風土であると回答する割合が高くなりました。

 このほかにも、経営者年齢が若い企業ほど、2017~2019 年の間の新事業分野への進出に取り組んだ企業の割合が高く、設備投資にも積極的である傾向が見られました。

 中小企業白書2021は、続いて事業承継が企業の業績に与える影響についても分析しています。2019年版でも他の要因の影響をなるべく排除して分析すると、事業承継が企業の売上高や総資産を押し上げる効果があることを指摘していました。

 事業承継実施企業の承継後5年間の売上高成長率をみると、事業承継の1年後が最も高く、2~5年目まで同業種の平均値を0.6~1.2%上回り、高い成長率で推移していました。

事業承継後の売上高成長率。1年後に同業種平均より1.2%高く、その後もプラスが続く

 当期純利益成長率で分析しても事業承継の1~5年後まで同業種の平均値を 20%前後上回っていました。

 さらに詳しく分析するために、後継者の年齢別に分析したところ、事業承継時の年齢にかかわらず事業承継後の成長率が同業種の平均値を上回っていますが、承継時の年齢が 39 歳以下の場合はとくに高い成長率でした。

事業承継時の後継者の年齢別の事業承継後のパフォーマンス。とくに30代以下で高い水準となった

 つぎに、同族承継か内部昇格(従業員承継)か、外部招へい(第三者承継)なのかで、じぎょうの成長率を比べたところ、同族継承や内部昇格がやや高い成長率でしたが、全体としても同業種の平均値を上回っていました。

承継方法別に分析した事業承継後のパフォーマンス。同族承継、内部昇格、外部招聘とも同業種平均を上回った

 これまでの分析から、経営者の若返りは事業に好影響を与えやすいことがわかりました。中小企業白書でも「先代経営者や後継者は、事業承継が単なる経営者交代の機会ではなく、企業の更なる成長・発展の機会であることを認識した上で、事業承継に向けた準備や承継後の経営に臨むことが重要である」と指摘しています。