フィロソフィーに立ち返る

ーー10年ほど前、リキュールの製造工程で社員が犯したミスをきっかけに、製造メンバー8人のうち5人が退職する事態となりました。そこからどのように、組織変革に取り組んだのでしょうか。

 僕はそれまで、仕事ができる人間、優秀な人間だけがいれば良いと思っていました。でも、人間性の部分から見つめなおして、組織を一から作り直さなければいけないと考えたのです。

 そこで、明確にしたのが、会社の理念やミッション、ビジョンです。会社をどうやって経営していくか、何を重視して仕事をすべきか。従業員も含めてルールブックを決めていきました。経営理念は、次のような言葉でまとめました。

 付加価値の高いお酒を世界中の人々へ提供することで、人間的に成長し、人類と社会の発展に貢献します。

 このようなフィロソフィーは、トラブルが起こったときに立ち返る判断基準としても必要です。朝礼でクレド(行動指針)を書いたカードを読み合わせて、社員の潜在意識にすり込むようにしています。

楯の川酒造のクレド

 クレドカードには、目指すゴールとして「入社半年の若手スタッフでも楯の川酒造フィロソフィーについて社長と対等に話が出来る」、「スタッフ同士仕事ぶりを見て、楯の川酒造フィロソフィーに基づいてお互いに注意しあえる状態になる」などと定めています。

 リキュールの事故で周囲からは「楯の川酒造は終わった」とも言われました。しかし、僕はここが会社としても大きな転換点、出発点だと思っています。「TATENOKAWA100年ビジョン」(前編参照)は、そうした我が社の思いを、対外的に表したものです。

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