創業者の祖母から受けた教え

 喜多方ラーメンは90年あまりの歴史を誇ります。伏流水が豊富で醸造業が盛んな「蔵のまち」の特徴を生かし、しょうゆ味をベースにしたラーメン店が、人口約4万5千人の町にひしめいています。

 中でも「御三家」の一つとして親しまれている坂内食堂は1958年、章史さんの祖父母、新吾さん、ヒサさん夫妻が創業しました。

坂内食堂の肉そば(チャーシューメン)
坂内食堂の肉そば(チャーシューメン)

 章史さんも実家の存在の大きさを、子ども心に感じていました。「祖父母や両親は食堂の仕事で忙しく、家にいないことがほとんどでした。休日に食堂を手伝って、お小遣いをもらう機会もありました」

 祖母のヒサさんからは「坂内食堂で働いてくれるなら、ラーメンを作るだけでなく、お客さんが喜多方に滞在する時間を増やさないといけない」と教えられたことを、鮮明に覚えているといいます。

 高校卒業後は、神奈川県の大学に進学し、経営学を専攻しました。「大学では商品がヒットした理由や、大手の食品会社に入社する意味なども学び、自分の原点である家業に生かしたいと考えるようになりました」

修業先に「分家」を選んだ理由

 章史さんが決めた進路は、実家ではなく、分家にあたる「喜多方ラーメン坂内」の運営会社「麺食」でした。同社は1988年、坂内食堂で修業していた中原明さん(現会長)が、のれん分けの形で創業し、現在は息子の誠さんが2代目の社長を務めています。国内63店舗、海外6店舗を抱える大手ラーメンチェーンとして、本家の伝統や味を広めています。

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