目次

  1. 採用管理システム導入のメリット
    1. メリット:応募者の個人情報を安全に管理できる
    2. メリット:情報の一元管理で効率的に業務が遂行できる
    3. メリット:求人情報をより広く公開できる
  2. はじめての採用管理システムの選び方
    1. 新卒採用か中途採用か
    2. 採用人数と応募数
    3. 管理画面の使用感
    4. 管理権限の付与範囲
    5. 連携機能の有無
  3. 中小企業のための「おすすめの採用管理システム」5選
    1. Hirehubの特徴
    2. Airワーク 採用管理の特徴
    3. HRMOS採用の特徴
    4. ジョブカン採用管理の特徴
    5. 採用一括かんりくんの特徴
  4. 10年先の人材計画を見据えて決める採用管理システム

 採用管理システム(ATS:Applicant Tracking System)とは、応募者の履歴を追跡・管理するシステムです。

 2010年代後半から、それまでの「求人媒体ごとに用意された応募者データベース管理システムのデータを集約し、一元管理できるクラウド型の採用管理システムが次々と登場しました。

 最近では、導入費用だけでなく、利用料金がかからない採用管理システムも複数登場しており、採用数が少ない、あるいは採用しない期間がある中小企業での導入事例も増えています。

 しかし、採用管理システムは2021年時点で100種類以上あると言われており、その特徴や料金、使用感もさまざまです。

 自社が求めるスペックと合わないシステムを安易に導入することで、かえって採用が滞ってしまうことがないよう、注意しなければなりません。

 「そもそも何のために採用管理システムを導入するか」、代表的な導入メリットから確認しましょう。

 就職・転職活動では、応募者が企業に、住所氏名、連絡先、帰省先、顔写真、学歴、賞罰といった情報を提出します。

 これらは主要な個人情報であり、取り扱いには十分に注意しなければいけません。万が一でも流出したりしてしまうと、応募者のプライバシーにはもちろん、企業の信用問題にも大きな影響を及ぼすためです。

 例えば、2021年4月、プロジェクト管理ツール「Trello」で情報公開範囲の設定を「公開」に設定し利用していた企業の利用データが第三者にも開示され、情報漏えいしていたことが内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の呼びかけなどにより明らかになり、波紋を呼びました。

 また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響でリモートワークが進んできましたが、自宅で使用するPCのセキュリティレベルが十分でなく、ランサムウェア(コンピュータウイルスの一種)によって情報が流出してしまうことも問題になっています。

参考:テレワーク勤務のサイバーセキュリティ対策!(警視庁)

 その点、採用管理システムを利用すれば、応募者の個人情報を安全に管理することが可能です。設計段階から完全にクローズドの設定であり、クラウド型であれば自宅のPCでも安全に情報にアクセスできます。

 また、先の「Trello」の事例でも、人事採用担当者と各配属部門が担う面接担当者間ですべての個人情報が共有されていたケースがありました。

 しかし、応募時に得た個人情報は、たとえ社内間で合っても応募者のプライバシー保護、また各種ハラスメント防止観点から、必要以上に社内共有すべきではありません。

 システムによってはログインIDごとにデータの閲覧権限レベルを変更できるため、面接官には住所や連絡先などの連絡先を開示しないといった対策も可能です。

 新たな人材を採用する方法には、転職サイトに人材エージェント、ハローワークに地元の求人フリーペーパー、自社HPからの直接募集などがあげられます。

 流入導線を増やすと、見なければならないデータベース管理システムも多くなります。そのため、次のようなことが起きがちです。

 「朝出社していちばん最初にする仕事は各サイトの管理画面にログインして、応募者をExcelにコピペすること。毎日30分はかかるうえ、時々コピペミスが発生してせっかくの応募者への連絡ができなかったことがある」

 採用管理システムを利用すれば、そのシステムにアクセスするだけで、各データベースの情報を一括でチェックできます。

 この一元管理機能は自動取り込み・手動取り込みの違い、無料の機能と有料オプションの違いなど採用管理システムによって異なります。

 求人募集を告知する際、「Indeed」「google仕事検索」といった仕事情報専用検索エンジンを活用すると、費用をかけずに広めることができます。

 しかし、専用検索エンジンにサーチされるためには、HTMLでページが作成されている、自社サイト内に求人ページを用意する、1ページに1職種でページを作成するなどの技術的な条件をクリアしなければなりません。

参考:Indeed(インディード)での求人掲載を徹底解説!【後編】クローリング

 採用管理システムには、その条件がすでにクリアされた「求人画面」を作成できる機能が装備されているものがあります。

 自社HPに専用の求人ページを作成し、仕事内容や募集要項について詳細を掲載することは、ミスマッチを防ぎ応募意欲を高めるために必須のコンテンツです。いつでも簡単に求人情報を更新できる仕組みとしても価値があります。

 採用管理システムには、「個人情報の安全な管理」「採用業務の効率化」「採用広報の機会増加」といったメリットがあります。

 この3点について、具体的にどのような効果どの程度を期待するかは、会社によって異なります。

 求めていない機能が多いことで、高額な費用を支払ったり運用が難しくなったりといった弊害が起こらないように選定しましょう。

 次に、社員数300人までの中小企業・年間の採用数は数人~十数人というケースでの「よくあるお悩み」別に、どのような視点で採用管理システムを選択するべきかのヒントを紹介します。

 新卒採用と中途採用は、多くの場合プロセスが異なります。

 「登録させる情報が同じで、ごく少人数、主にリファラルで候補を集めている」というパターン以外は、運用にミスや問題が発生しがちなため、新卒採用・中途採用でそれぞれ採用管理システムを分けるのが一般的です。

 採用管理システムを分けて検討する場合、もともと新卒採用向けに設計されているか、中途採用向けに設計されているかで、それぞれ使い勝手の良い別の採用管理システムを選定することをおすすめします。

 新卒採用でしか利用しない機能(大人数の説明会受付機能など)、中途採用でしか利用しない機能(エージェント管理機能など)の有無が異なるからです。データが混在することでのミスを防ぐという観点も重要です。

 また、新卒採用の場合、就職ナビサイトの基本機能として採用管理システムがパッケージ化されています。

 まず各就職ナビの媒体特性を優先して検討し、付属の採用管理システムを使用するという流れで選ぶのもよいでしょう。

 採用管理システムのスペックはサービスによって大きく異なります。例えば「1000人単位の同時視聴がスムーズに行えるweb説明会開催機能」では相応のサーバが必要です。

 しかし、その必要性がない場合、当然のことながらそのスペックに費用をかける必要はありません。

 「この採用管理システムを使用する企業の応募総数は、どれくらいの規模が多いか」という質問は選定の際のわかりやすい目安の一つです。

 また、採用管理システムによっては登録人数で請求額が決定する従量課金制もあります。

 高価格帯の採用管理システムのなかには、自由度が高く初期設定に時間と知識が必要なもの、セキュリティレベルが高く複雑な操作が求められるものがあります。

 システムの操作に慣れていない、採用担当者にシステムに慣れてもらうための教育コストがかかりそう……という場合は、シンプルなものやExcelに近い操作感で利用できるタイプを選ぶとスムーズに導入できます。

 採用管理システムの社内利用者の範囲は、個人情報保護の観点から重要です。

 しかし、採用管理システムによって、設定できる管理権限の範囲が異なるため、事前に範囲を決めた上で照らし合わせてみることをおすすめします。

 なお、採用に関して、誰がどこまでかかわるのかは企業によってまちまちです。例えば、募集や面接は人事だけが行うケースもあれば、配属先上司や地方支社ごとに行うケースもあります。

 管理権限の付与範囲を決めるときは、現場の状況を整理しながら行うといいでしょう。

 採用管理システムによって大きく異なるのが連携機能です。

 GoogleカレンダーやSlack、LINEといった別のコミュニケーションツールとの連携、給与や労務などの人事管理システムと連携できるタイプもあります。

 採用管理システム導入と同時に、どのような業務を効率化させたいのか、事前に決めておくのが重要なポイントです。

 「年間の採用人数が数人~30人程度の中小企業」が、はじめて中途採用向けの採用管理システムを導入する際に気になるポイント別に、おすすめ採用管理システムを5つピックアップしました。

 (新卒採用での採用管理システムは、複数の求人ナビサイトを使用する場合になってはじめて検討されることが多いため、今回の採用管理システムのオススメ選定からは除外しています)

 選定の際に特に気になるポイントをまとめてチェックできる一覧表も併せて、自社に合った採用管理システムの検討材料としてご利用ください。

採用管理(ATS) 特徴 おすすめの企業 費用
Hirehub 求人ページ作成支援ツール「engage」を使った情報公開機能が強み 「安全な管理」と「採用広報強化」がメインの目的となる企業 無料
Airワーク 採用管理 操作性に優れている
リクナビHRTech採用管理が無料で利用可能(場合によって)
Excelのような一覧性を重視したい企業 無料
HRMOS採用 従業員の人事管理機能と連携可能 採用した従業員の、入社後の人事評価やサポートをスムーズに行いたい企業 有料・要問い合わせ
ジョブカン採用管理 従量課金制
導入企業が多い
将来的に採用数・応募数を増やしていきたい企業 無料
(月間候補者登録数~30名)
月額8,500円
(月間候補者登録数~50名)
採用一括かんりくん シンプルな料金体系
多様な外部ツールと連携可能
複数人でシステムを運用したい企業 月額2万円~
(利用人数上限なし)

 エン・ジャパンが提供する「Hirehub(ハイヤーハブ)」は使用期間・登録人数に関わらず無料で利用できる採用管理システムです。

 そのぶん機能は絞られていますが、同社の求人ページ作成支援ツール「engage」を使った情報公開機能が強みです。

 Indeed・LINEキャリアへの自動掲載、Google しごと検索・スタンバイ・求人ボックスに対応と、一度の操作で幅広くPRの機会を増やすことができます。

 また、転職サイト「enJapan」のデータなら、自動取り込みも可能。「安全な管理」と「採用広報強化」がメインの目的となる企業におすすめです。

採用管理(ATS) Hirehub
運営企業 エン・ジャパン
料金 無料
機能 ・選考管理機能
・自社求人ページ作成機能
・エージェント管理機能
求人メディア・データ取り込み ○10サイト
※en Japanは自動取り込み
その他は手動インポート
連携 Indeed

Hirehubの公式サイトはこちら。

 「とにかく簡単に、マニュアルなどいらないわかりやすい操作性を希望。Excelのような一覧性を重視したい!」という企業におすすめなのが株式会社リクルートの「Airワーク 採用管理」です。

 もともとパート・アルバイト募集がメインの「ジョブオプLite」から2021年にリニューアルしました。

 さらに高度な機能を使いたい場合、有料の「ジョブオプ採用管理」にアップグレートを検討してみてはいかがでしょうか。

 また、求人の導線が主にエージェントの場合「リクナビHRTech採用管理」というサービスも無料で利用可能です。

採用管理(ATS) Airワーク 採用管理
運営企業 リクルート
料金 無料
機能 ・選考管理機能
・自社求人ページ作成機能
・求人媒体発注機能
求人メディア・データ取り込み 手動取り込み
連携 Indeed

「Airワーク 採用管理」の公式サイトはこちら。

 「HRMOS(ハーモス)採用」は、ビズリーチ社のサービスです。

 「公募型の採用は少なく、エージェント経由やスカウト型の求人がメインで、社内スタッフ間のデータ管理を一元的・効率化したい」「採用管理機能だけでなく、社員の人事管理機能とも連結させたい」といった企業に向いています。

採用管理(ATS) HRMOS採用
運営企業 ビズリーチ
料金 有料・要問い合わせ
機能 ・選考管理機能
・エージェント管理機能
・自社求人ページ作成機能
求人メディア・データ取り込み ビズリーチ
キャリトレ
リクナビNEXT
doda など
連携 【外部ツール】
zoom
slack
Google
Office 365
【人事管理システム】
従業員DB・目標管理

「HRMOS採用」の公式サイトはこちら。

 「ジョブカン採用管理」は、従量課金制の採用管理システムです。

 「当初数年はそこまで採用数は多くない見込みだが、将来的には積極的に増やしていきたい。途中で機能追加のために採用管理システムを大幅に入れ替えるのは不安」というお悩みなら、検討してみては。

 導入企業が多く、実際の声を聞きやすいのも特徴です。

採用管理(ATS) ジョブカン採用管理
運営企業 Donuts
料金 無料
(月間候補者登録数~30人)
月額8,500円
(月間候補者登録数~50人)
機能 ・選考管理機能
・自社求人ページ作成機能
・エージェント管理機能
求人メディア・データ取り込み ○10サイト以上
(有料で自動連携機能のオプション)
連携 【外部ツール】
Indeed
Google
サイボウズ
Office365カレンダー
LINE
Slack
【人事管理システム】
ジョブカン労務HR

「ジョブカン採用管理」の公式サイトはこちら。

 「機能は充実させたいが、将来的に費用が高額になるのは不安」「新卒と中途で、採用管理システムの使用感が同じだと助かる」という企業におすすめなのは、HRクラウドの「採用一括かんりくん」です。

 登録人数に関わらず月額2万円と料金体系がわかりやすく、LINE、ZOOM、Slack、Googleカレンダー、Office365、Chatworkと多種多様な外部ツールと連携できるのがほかにはない魅力です。

採用管理(ATS) 採用一括かんりくん
運営企業 HRクラウド
料金 月額2万円~
(利用人数上限なし)
機能 ・選考管理機能
・自社求人ページ作成機能(有料オプションであり)
・エージェント管理機能
求人メディア・データ取り込み 有料オプションであり
連携 【外部ツール】
Indeed
LINE
ZOOM
Slack
Googleカレンダー
Office365
Chatwork ほか
【人事管理システム】
カオナビ

「採用一括かんりくん」の公式サイトはこちら。

 採用計画は単年度だけで検討するものではなく、5年、10年先の人材計画を見据えて検討されるものです。

 採用管理システムの運用もまた、数年間継続して利用し、採用広報の効果を経年で計測できるよう設計するのが望ましいと言えます。

 「まずはいろいろ使用してみて、その使い勝手を把握したい」場合は、短いスパンで募集導線が単一の求人サイト出稿のタイミングで試してみてはいかがでしょうか。

 自社に合った採用管理システムで「採用力アップ」を目指しましょう。

※2021年8月18日追記。記事冒頭の表で、HRMOS採用の機能について自社求人ページ作成機能が「×」となっていましたが「○」の誤りでした。おわびして訂正いたします。