目次

  1. EPAとは FTAとの違い
    1. WTOとの違い
    2. 日本のEPA・FTA締結国
  2. 輸出でEPAを利用する手順
  3. EPAのための特定原産地証明書とは
  4. 「原産地証明ナビ」とは
    1. 原産地証明ナビで作成できる8つの資料
  5. 原産地証明ナビの利用手順
    1. 企業リスト・商品リストの登録
    2. 取引情報シートを入力
    3. 根拠書類・原産地申告書・インボイス等の必要情報を入力
    4. 書類を確認して出力

 外務省によると、FTAとは「Free Trade Agreement」の頭文字を取ったもので、自由貿易協定を意味します。特定の国や地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁などを削減・撤廃することを目的としています。

 一方のEPAとは「Economic Partnership Agreement」の頭文字を取ったもので、経済連携協定を意味します。貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作りなど、FTAより広い経済関係の強化を目的としています。

 日本とEPAやFTAを締結している国に自社製品を輸出したい国内企業からすると、関税や輸入を規制なしに、または一部削減して輸出できるメリットがあります。

 WTO(世界貿易機関)は世界の貿易ルールを決める国際機関で「いずれかの国に与える最も有利な待遇を、他のすべての加盟国に対しても与える」という最恵国待遇を原則にしています。

 ただし、先進国と途上国との溝が埋まらず、交渉に時間がかかっています。こうしたなか、特定の国や地域同士の協定であるEPAやFTAが広がりつつあります。

EPA・FTAとWTOとの違い(経産省の公式サイトから引用)

 日本のEPA・FTAの現状(2021年1月現在)は次の通りです。

  • 発効済・署名済……シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN全体、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、TPP12(署名済)、TPP11、日EU・EPA、米国、英国、RCEP(署名済)
  • 交渉中……トルコ、コロンビア、日中韓
日本と世界各国との経済連携協定の概要(経産省の公式サイトから引用)

 JETROや経産省によると、自社の商品の輸出時にEPAを利用したい場合は次の手順が必要となります。

  1. 輸出相手国がEPAの対象国か確認
  2. 貿易品目の分類に使う世界共通の番号(HSコード)の中から当てはまるものを確認
  3. EPAによる特恵税率が輸出相手国で通常適用される税率より有利なのかを確認
  4. 輸出産品が原産品となるために満たす必要がある原産地規則を確認
  5. 原産地の証明に必要な書類を作成

 EPAを利用するには、輸出企業において輸出商品がEPA締結国の原産品であること(原産性)を証明する「原産地証明」が必要になります。

 しかし、手順の理解が十分でないことや、社内体制が整備できていないことなどから、特に中小企業のEPA利用はなかなか普及してきませんでした。

 そこで、JETROは2021年8月から簡単に資料を作成できるツール「原産地証明ナビ」の無償提供を始めました。

 ツールの案内に従って入力する必要情報にもとづいて、輸出商品の原産性が自動的に判定されると同時に、書類が自動作成されます。さらに、企業情報や商品情報をツール上に蓄積することで入力の手間を減らせます。

 原産地証明ナビで作成できる資料は次の通りです。

  1. 関税分類変更基準の根拠書類
  2. 付加価値基準の根拠書類
  3. 関税分類変更基準と付加価値基準併用の根拠書類
  4. 「日EU・EPA」の原産地証明書
  5. 「CPTPP(TPP11)」の原産地証明書
  6. 「日英EPA」の原産地証明書
  7. インボイス
  8. パッキングリスト

※インボイスとパッキングリストは輸出の必要書類で、EPAを利用しない輸出でも利用できます。

 原産地証明ナビの使い方は次の手順で進めてください。

 輸出者や生産者の日本側企業、輸出先となる外国企業の情報、輸出商品の情報をそれぞれのリストに登録します。リストに登録することで、企業情報や商品情報を都度入力する手間を省けます。

 「取引情報シート」では、個々の取引に応じて、取引企業や製品を選択します。前項で登録した企業情報や製品情報が選択肢になって選べます。

 必要な書類に応じてシートを選択し、情報を入力します。「取引情報シート」で選択した企業情報・商品情報は「取引情報を転記」をクリックすることで、転記できます。

 プレビューで確認の上で、「PDFで出力」をクリックすると、書類がPDF形式で出力されます。