目次

  1. 経営承継円滑化法とは
  2. 中小企業を取り巻く環境
  3. 経営承継円滑化法の支援策
  4. 民法特例とは
  5. 金融支援とは
  6. 事業承継税制とは
    1. 提出期限が迫る特例承継計画
    2. 今後の税制改正の動向
    3. 事業承継税制適用によるリスク
  7. 会社法特例とは
    1. 経営困難要件
    2. 円滑承継困難要件
    3. 会社法特例の手続きの流れ
  8. まとめ

 経営承継円滑化法の正式名称は「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」と言います。

 同法は2008年、中小企業の円滑な事業承継を支援するための基礎となる法律として成立。その後、複数回の改正を経て支援策の充実を図っています。

 経営者になじみが深い事業承継税制は、同法の創設とともに措置された支援策の一つで、基本的に「経営承継円滑化法の認定=事業承継税制の適用」となることから、両者は双子のような関係にあります。

 また、同法には、遺留分の紛争を防止する特例(民法特例)や、M&Aにも活用できる金融支援などがあります。近年では「法人版事業承継税制の特例」(18年)、「個人版事業承継税制」(19年)、「個人版民法特例」(同)、「会社法特例(所在不明株主に関する会社法の特例)」(21年)を創設しています。

 本稿では、事業承継の力強い味方である経営承継円滑化法の支援策について、詳しく解説します。

 経営者の高齢化が年々進み、事業承継への関心が高まる中で、中小企業の後継者不在率は近年、改善傾向にありました。しかし、東京商工リサーチの「2020年『休廃業・解散企業』動向調査」によると、新型コロナウイルス感染症の影響などで、20年は過去最多の廃業件数となりました。

 中小企業庁の試算では、25年までに平均引退年齢とされる70歳を超える中小企業経営者は約245万人、うち約半数の127万人が後継者未定と言われています。

中小企業の経営者年齢の分布。年代が進むごとに、年齢が高まっています(出典:中小企業白書)

 これを放置すれば、廃業数の増加で、サプライチェーンの断絶・経営資源の散逸など、地域経済や雇用に大きな影響を及ぼすおそれがあり、25年までの累計で650万人の雇用、約22兆円のGDPが消失する可能性があり、中小企業の事業承継は喫緊の課題とされています。

 このような中で、経営承継円滑化法は、中小企業の円滑な事業承継を通じた地域経済の活性化および地域雇用の維持を目的とし、税制や金融支援等について様々な支援措置を講じています。

休廃業・解散件数の推移(出典:東京商工リサーチ「2020年『休廃業・解散企業』動向調査」)

 本章から、経営承継円滑化法の支援策を紹介します。

 多くの中小企業において株主は経営者本人です。また、経営者個人の資産に占める自社株式や事業用資産の割合が大きいといわれています。

 このため、中小企業で経営者の相続が発生すると、以下の課題に直面する可能性があります。

  1. 遺留分による紛争
  2. 経営者交代による経営(信用)不安と資金調達の困難性
  3. 自社株式にかかる相続税負担
  4. 連絡が取れない所在不明株主の存在

 経営承継円滑化法では、これらの課題に対し、1では「民法特例」、2は「金融支援」、3は「事業承継税制」、4は新たに創設された「会社法特例(所在不明株主に関する会社法の特例)」を講じています。

 民法では、相続人の生活の安定や、相続人間の公平性確保のために、「遺留分」という最低限の相続の権利(原則として法定相続分の2分の1)を保障しています。

 遺留分を侵害された相続人は、遺留分以上の財産を取得した相続人などに対し、侵害された分に相当する金銭の請求が認められています。この権利を「遺留分侵害額請求権」と言います。

 中小企業は、株主自身が経営者として、所有と経営を一体化した上で会社を成長させるとともに、経営者個人が私有財産を会社に提供しているケースも少なくありません。特に同族会社においては、自社株式や土地などの事業用資産を後継者に移すことが、円滑な経営の承継や事業の継続を図る上で重要です。

 しかし、旧代表者の遺産に占める自社株式や事業用資産の割合が大きい場合、後継者は他の相続人の遺留分を侵害する可能性が高く、紛争が生じるおそれがあります。

 そこで、経営承継円滑化法では、遺留分に係る紛争リスクを解決するため、遺留分に関する民法の特例制度(民法特例)を講じています。

 具体的には、旧代表者の生前に、後継者と推定相続人全員で次のような合意ができます。

  1. 除外合意

     後継者に贈与された自社株式や事業用資産の価額について、遺留分を算定するための財産の価額から除外すること。

  2. 固定合意

     後継者に贈与された自社株式の価額について、遺留分を算定するための財産の価額に算入する金額を、合意時の時価に固定すること。

 なお、除外合意と固定合意は、二者択一ではなく、組み合わせることが可能です。例えば、後継者が旧代表者からの贈与等により取得した100株のうち60株を除外合意の対象とし、残りの40株を固定合意の対象とすることもできます。

除外合意と固定合意(出典:民法特例申請マニュアル)

 上記の合意は、経済産業大臣の確認の上、家庭裁判所の許可を受けることで有効となります。なお、経済産業大臣の確認を受けるには当該合意から1カ月以内の申請が必要で、さらに家庭裁判所の許可には当該確認から1カ月以内の申し立てが必要です。

 このように、合意後は速やかに手続きを行う必要がある一方、贈与から合意までの期間に定めはありません。例えば、10年前の贈与や複数年に及ぶ贈与についても、合意は可能です。

 なお、混同されることが多いですが、事業承継税制とは併用可能であるものの、それぞれ要件や申請手続きなどが異なります。

 例えば、事業承継税制の特例では、最大3人の後継者まで適用できますが、民法特例では後継者1人に限られますし、旧代表者以外からの贈与は民法特例の対象となりません。

 また、事業承継税制は生前贈与のほか、相続や遺贈でも適用できますが、民法特例は生前贈与に限られる一方、民法特例では、贈与時に旧代表者が代表を退任していなくとも適用を受けることができます。

 さらに、「経済産業大臣の確認」が必要な民法特例では、中小企業庁へ申請をするのに対し、「都道府県知事の認定」が必要な事業承継税制では、本社の所在する都道府県へ申請する必要があります。

 民法特例の概要、手続きの詳細は、中小企業庁の「民法特例の申請マニュアル」などをご参照ください。

 中小企業の事業承継には、様々な資金が必要となる場合があります。例えば、親族内承継では、主に以下の三つが想定されます。

  1. 買取資金

     分散した自社株式や事業用資産の買い取りに必要

  2. 納税資金

     相続する自社株式や事業用資産にかかる相続税の納税に必要

  3. 運転資金

     経営者交代など信用低下による取引先からの支払サイトの短縮、借入時の金利条件の悪化などに対応する資金。

 また、MBOやM&Aなどの第三者承継では、株主である先代経営者などから株式を買い取るために、多額の「買取資金」が必要な場合があります。

経営承継円滑化法における金融支援(出典:中小企業庁「事業承継における融資・保証制度」)

 経営承継円滑化法では、上記のような資金ニーズを表のように3類型に分類し、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けた会社又は個人に対し、信用保証と制度融資について、以下の特例措置を講じています。

1.中小企業信用保険法の特例

 買取資金などを金融機関から調達しやすくするために、信用保証協会の通常の保証枠とは別枠が設けられます(信用保証枠が倍に増えるイメージです。なお、会社の代表者及び事業を営んでいない個人は、特例により通常の保証枠が設けられます)。

信用保証協会の別枠(出典:同上)

2.日本政策金融公庫法等の特例 

 会社の代表者または事業を営んでいない個人でも、日本政策金融公庫などからの制度融資が利用可能となります(日本政策金融公庫の場合、最大7億2千万円)。

                    ◇

 例えば、承継した後に必要となる資金(表-1)については、経営者交代後に、後継者が自社株式や事業用資産を買い取るための資金などが対象となります。

 また、これから承継するために必要な資金(表-2)については、経営者交代前に、M&Aで他社の株式等を買い取るための資金などが対象となります。

 さらに、経営者保証が付されている融資を、経営者保証が不要な融資に借り換えるための資金(表-3)についても対象となります。

 このように、金融支援は、親族内承継から第三者承継まで幅広く活用でき、後継者が事業承継をためらう要因となる経営者保証についても、借り換えにより不要とできます。

 なお、金融支援を受けるためには、経営承継円滑化法による都道府県知事の認定を受けた上で、金融機関や信用保証協会による審査を受ける必要があります。

 金融支援の概要や手続きの詳細などは、中小企業庁の「金融支援の申請マニュアル」などをご参照ください。

 事業承継税制とは、自社株式や事業用資産にかかる贈与税・相続税を猶予し、最終的に免除する制度です。

 特に18年度の税制改正で創設された、法人版事業承継税制の特例措置では、自社株式にかかる贈与税・相続税を100%猶予・免除することが可能となったことから、ツギノジダイの記事をはじめ、多くの媒体で紹介されています。

法人版事業承継税制の概要(出典:中小企業庁「申請マニュアル第1章 事業承継税制(特例措置)の概要」)

 このため、本章では制度の概要は割愛し、法人版事業承継税制の実務上のポイントなどを解説します。

 法人版事業承継税制の特例措置(以下「特例措置」といいます。)の適用を受けるためには、まずは提出期限(23年3月末)が迫る「特例承継計画」の策定が肝要です。

 「特例承継計画」とは、後継者候補や承継時までの経営見通し、承継後5年間の事業計画などを簡易に記載した計画書で、特例措置適用の必要条件となっています。特例承継計画を有効にするためには、都道府県知事の確認を受ける必要がありますが、確認を受けるためには、23年3月末までに提出しなければなりません。

 経営者の中には後継者を決めかねている方もおられると思いますが、特例承継計画では3人まで後継者候補を記載できますし、期限内に提出をしていれば、期限後に後継者候補を変更することもできます。

 また、特例承継計画の提出後、結果的に事業承継を行わなかった場合でも、ペナルティーや報告義務などはありません。

 なお、20年度の経営承継円滑化法省令改正では、合併などの組織再編があった場合における特例承継計画の確認効果の引継規定を創設しています。

 例えば、特例承継計画の確認を受けたA社が、B社に吸収合併されて消滅した場合でも、一定の要件を満たすときは、B社が特例承継計画の確認を受けたものとみなされます。すなわち、特例承継計画の確認を受けていないB社で特例措置の適用を受けることができるということです。

 また、21年度税制改正では、特例承継計画の確認を受けた場合には、実務上問題とされていた「相続直前における後継者の役員就任要件」を除外することが認められました。

 このように、特例承継計画の提出はメリットこそあれ、デメリットはありませんので、事業承継を検討中の経営者は、差し当たって特例承継計画の策定をお勧めします。

 筆者が中企庁の担当官時代(18年10月~21年3月)から特例措置の更なる拡充(例えば、免除要件の緩和等)を要望する声がございましたが、特例措置が自民党政権下における異次元の措置として創設されたものであること、また、理念なく拡充することは、法的安定性や課税の公平性の観点から問題であることなどから、非常に困難と思料します。

 このため、今後数年内に事業承継を予定している経営者は、無為に拡充されることを期待し、事業承継を遅らせるのではなく、現行制度を前提に検討されるべきと考えます。

 なお、特例承継計画の提出期限については、昨今の感染症の影響などに鑑み、23年度税制改正において延長される可能性はありますが、早期に提出をすることによる不利益はありませんので、一日も早く提出をすることが肝要です。

1.報告忘れによる取消リスク

 事業承継税制については、税理士など専門家でもその評価が分かれており、ネガティブな理由として「事業承継税制適用後の報告忘れによる取消リスク」を挙げる方がいます。

 事業承継税制では、適用後、免除事由に該当するまでは、税務署等に報告義務(当初5年間は毎年、都道府県と税務署に、6年目以後は3年に1回税務署への報告義務があります)があり、法令上は報告期限を過ぎた場合には、取消事由に該当する旨の定めがあります。

 他方で、事業承継税制には、税務署長がやむを得ないと認める場合に期限後の提出を認める規定(宥恕規定)も講じられております。

 一般的に「宥恕規定」は、天災など他律的な場合にのみ認められ、単純失念等の場合は対象外と解されていますが、事業承継税制はその適用が数十年に及ぶため、弾力的に対応すべきという旨の「事務提要」が、国税庁から税務署へ通達されています。

 現に筆者が担当官時代には、単純失念で提出期限を数カ月以上遅れた事案でも、認定を継続し、猶予を認めています。加えて、税務署は提出期限の3カ月前に報告期限についての「お知らせ」を通知してくれるので、「事業承継税制適用後の報告忘れによる取消リスク」については、過度に心配する必要はないものと思います。

2.取り消しになった場合の納税リスク

 免除を受ける前に猶予が取り消しになった場合の「納税リスク」を挙げる方もいますが、事業承継税制を適用し、猶予が取り消されたからといって、もともと納税すべき贈与税・相続税を納めるだけで、税額(本税)が増えるわけではありません。

 もっとも、納税が猶予されていた期間に対する「期限の利益」に対し、利息に相当する「利子税」を支払う必要はありますが、延滞税(21年は年8.8%)と異なり、利子税の割合は非常に低く(同年の利子税は年0.4%)、住宅ローン金利よりも低い水準となっています。民法における法定利率が3%であることを踏まえると、期限の利益に対する対価としては、非常に優遇されていることが分かります。

 さらに、申告期限の翌日から5年間(経営承継期間と言います)経過後に、取消となった場合には、当初5年分の利子税が免除される「利子税免除の特例」まであります。例えば、1千万円の納税猶予を受けた場合において、6年後に取消となったときは、利子税は1年分の4万円(21年の割合と同率と仮定した場合)となります。

3.経営環境悪化による減免措置

 特例措置には、「経営環境の悪化による減免措置」も講じられており、例えば、業績が傾き、第三者にM&Aや解散などをした場合には、猶予されていた贈与税・相続税の減免を受けられます。他方、事業承継税制の適用を受けず承継時に納税をした場合は、その後会社が無くなっても、払った贈与税・相続税の減免(還付)は受けられません。

 このように、事業承継税制を適用することで、承継後の経営不安も一定程度ヘッジできます。

 もちろん、事業承継税制も完璧ではなく、適用しない方がいいケースや留意すべき点などはあり、将来猶予が取り消されるリスクもゼロにはできません。

 それでも、制度を正しく理解することで、適切にリスクをコントロールすることは可能です。事業承継税制を検討する場合は、制度に精通した税理士への相談をお勧めします。

 事業承継税制の適用の前提となる経営承継円滑化法の認定手続きの詳細などは、中小企業庁の「申請マニュアル」などをご参照ください。

 中小企業は少数の株主が株式を保有している場合が多く、各株主の議決権割合が高い傾向があります。このため、所在が不明となっている株主(所在不明株主)がいる場合、事業承継、特にM&A等の第三者承継の障害になることがあります。

 会社法上、株式会社において所在不明株主がいる場合は、強制的に保有株式の買取り等を行うことが認められておりますが、当該所在不明株主への通知・催告が5年以上継続して到達せず、かつ、当該所在不明株主が5年間継続して配当を受領していない(配当の支給がない場合も含まれます)場合に限られています。

 このため、いざ事業承継を決断しても、所在不明株主の問題を解消する必要があれば、5年後でなければ実行できないなど、実務上ハードルがありました。

 そこで、21年6月に経営承継円滑化法の改正を行い、一定以上の割合で所在不明株主がいる株式会社が、都道府県知事の認定を受けた上で、一定の手続保障を行った場合は、会社法における5年を1年に短縮する特例措置(会社法特例)が創設され、同年8月2日に施行されました。

 認定を受けるには、中小企業者である株式会社が以下の2要件をいずれも満たす必要があります。

 代表者が年齢、健康状態、その他の事情により、継続的かつ安定的に経営を行うことが困難で、事業活動の継続に支障が生じていること。

 例えば、次のような場合です。

  • 代表者の年齢が60歳超
  • 代表者の健康状態が日常業務に支障を来している
  • 外部環境の急激な変化(新型コロナウイルス感染症も含む)による突然の業績悪化など

 一定数の株主が所在不明のため、後継者への円滑な承継が困難であること。「一定数」とは、所在不明株主が有する議決権数のことで、後継者の有無及び事業承継の手法等に応じ、次の(A)~(D)に定める割合になります。

 なお、中小企業庁が公表した申請マニュアルによると、「後継者以外の他者が所在不明株主の有する株式の譲受人等となる場合において、後継者により他者が指定されているときは、後継者が決まっている場合に該当するものとして判断します」(申請マニュアル12頁(注1)「株式会社事業後継者が定まっている場合」の判断について)とあることから、会社法特例においては、必ずしも後継者又は発行会社が譲受人等となる必要はないものと解され、例えば、持株会社などが受け皿となることも想定されます。

① 認定申請日時点で後継者が決まっている場合

(A)10%基準(株式譲渡などによる事業承継を想定)

 10%超、かつ、「1-後継者の要求する議決権割合(最低50%超)」超

(B)1/3基準(事業譲渡、組織再編などによる事業承継を想定)

 1/3超

② 認定申請日時点で後継者が未定の場合

(C)1/3基準(株式併合などによる株式集約を想定)

 1/3超

(D)10%基準(特別支配株主による株式集約を想定)

 10%超、かつ、経営株主等(代表者又は代表者であった者並びにそれらの親族をいいます。)と加算して90%以上

                     ◇

 上記の要件を満たし、都道府県知事の認定を受けた後は、手続保障として二重に異議申述手続を行います。具体的には「会社法特例によることを明示した異議申述手続」を行った上で、「会社法198条の異議申述手続」を行うこととなります。

 異議申述手続とは、所在不明株主に異議を述べる機会を与えるため、官報への公告と所在不明株主への個別催告を行う手続きを指します。個別催告は株主名簿に記載された所在不明株主の住所に宛てて通知すれば足り、実際には届かなくても、通常届くべき時期に届いたものとみなされます。

 その後、どちらの異議申述手続にも異議がなければ裁判所に申し立て、許可を受けることで、本来5年だった手続きの期間を1年に短縮し、所在不明株主から買取り等が行えます。

 会社法特例の手続きの流れは以下の通りです。なお、1と2は先後を問わないとされています。

  1. 所在不明株主への通知等の不到達、配当金未受領の期間が1年以上継続
  2. 都道府県知事の認定(認定の有効期限は原則2年)
  3. 会社法特例における異議申述手続
  4. 会社法198条1項における異議申述手続
  5. 裁判所へ売却許可の申立、許可
  6. 株式買取り等の手続

会社法特例の手続き例(出典:中小企業庁「会社法特例のパンフレット」)

 なお、裁判所への手続上、株主に対する通知・催告が到達しなかった事実の疎明には、一般的に株主総会の招集通知及び返戻封筒を提出することが求められますので、株主総会の招集手続きを適切に行い、返戻封筒を会社で保管しておくことが重要です。

 また、会社法特例の対象となる株式は「市場価格のない株式」に該当するため、第三者による「株価鑑定書」を裁判所に提出し、買取価格の相当性を疎明する必要があります。裁判所に認められる株価評価については、専門性が求められることから、専門の公認会計士、税理士等にご相談されることをお勧めします。

 会社法特例の概要や、手続きの詳細などは中小企業庁の「会社法特例の申請マニュアル」などをご参照ください。

 経営承継円滑化法は、事業承継税制、金融支援、民法特例及び会社法特例と、幅広い支援策を講じており、上手に活用すれば、経営(事業)の承継を円滑に行えます。

 他方、事業承継税制以外の支援策は、活用実績が乏しいものとなっております。魅力的な制度でも実際に活用されなければ意味がありません。

 今後、事業承継を予定する中小企業の経営者の皆様には、ぜひ活用を検討いただき、税理士などの専門家や金融機関をはじめとする支援機関の皆様も、支援策の存在を経営者に周知いただければ幸いです。

荒川勝彦さん

税理士法人山田&パートナーズ マネージャー 税理士

中央大学卒業。事業承継税制を専門とし、資産家の相続対策や法人の組織再編等を得意分野とする。過去には、メガバンクにおいて資産家の承継対策や金融商品の設計等に従事した経験を持つ。また、近年では、2018年10月から2年半にわたり経済産業省中小企業庁の課長補佐(任期付職員)として法人版事業承継税制の見直し、個人版事業承継税制や経営資源集約化税制等の創設、中小M&Aガイドラインの策定等、中央省庁にて事業承継施策の立案・立法等に携わる。