目次

  1. クラウドソーシングとは?
    1. クラウドソーシングのメリット・デメリット
    2. クラウドソーシングの発注形態
    3. クラウドソーシングで発注される業務の例
  2. クラウドソーシングにおける業務発注手順
    1. Step1. 発注内容を決める
    2. Step 2. 募集する
    3. Step 3. 公開し、応募を待つ
    4. Step 4. 受注者を決める
    5. Step 5. 検収・納品
    6. Step 6. 報酬を確定し、評価する
    7. ワーカーに直接依頼する方法も
  3. クラウドソーシングで起きがちな失敗やトラブルと対策
    1. 応募が来ない
    2. ワーカーと連絡が取れない
    3. ワーカーとトラブルになった
  4. クラウドソーシングサイト主要3選
    1. クラウドワークス
    2. ランサーズ
    3. クラウディア
  5. それぞれの特性に合わせてクラウドソーシングの活用を

 クラウドソーシング(Crowdsourcing)とは、社外のクラウド(大衆)に仕事をアウトソース(外注)する一連の仕組みのことです。

 社外の人材に仕事をアウトソースする仕組そのものは、インターネットが台頭する以前から存在していましたが、インターネットの普及とともに、インターネットを介して仕事をアウトソースするクラウドソーシングサイトが次々と生まれてきました。

 現在、一般にクラウドソーシングという言葉は、企業と外部の人材をつなぐウェブサイトやアプリケーション(クラウドソーシングサイト)という意味で使われています。

 では、クラウドソーシングのメリットとデメリットは何でしょうか。発注者と受注者の、それぞれをまとめてみます。

発注者のメリットとデメリット

メリット デメリット
社内にない才能やスキルを活用できる 機密情報や知的財産などの情報管理が必要
人件費などをある程度抑えられる 優秀な人材を独占しづらい
プロジェクト管理がしやすい クラウドソーシングサイトを利用した場合、手数料が必要

受注者のメリットとデメリット

メリット デメリット
副業として仕事を受注できる 仕事の量にばらつきがある
複数の仕事を受注できる 受注単価にばらつきがある
自分でスケジューリングができる クラウドソーシングサイトを利用した場合、手数料が必要

 クラウドソーシングには、タスク、コンペ、プロジェクトの三種類の発注形態があります。

  • タスク…発注者と受注者が直接やり取りをせずに行う発注形態
  • コンペ…複数の成果物を募り、その中から発注者が気に入ったものを選ぶ発注形態
  • プロジェクト…発注者と受注者が直接やり取りをしながら仕事を進める発注形態

タスク

 タスクとは、発注者と受注者がやり取りすることなく、簡単な作業を受注者が行うスタイルの発注形態です。

 発注内容を、作業数という形で行ってほしい作業量と一緒にインターネット上に公開すると、それを見た人が内容に従って作業をしてくれます。発注者は、あとから作業内容を見て、問題がなければ報酬を支払います。

 短文のライティングやアンケートといった比較的簡単な仕事が多く、単価もコンペやプロジェクトに比べて安価なケースが多いです。

コンペ

 コンペは、発注内容をインターネット上に公開して複数の成果物を募り、その中から発注者が気に入ったものを選ぶスタイルの発注形態です。

 ロゴデザインや新製品のネーミングといった仕事に関して、応募者がスキルや実績で勝負するタイプです。

プロジェクト

 プロジェクトはタスクの上級版で、発注内容をインターネット上に公開して応募者を募り、発注者と選定された受注者が直接やり取りをしながら仕事を進める発注形態です。

 仕事のスケジュールや単価などは、発注者が事前に決めたどおりの内容で進めるときもあれば、受注者選定後にやり取りして決定していくときもあります。

 Webコンテンツ制作のような比較的短期間で終わる仕事から、システム開発・改修など数ヶ月にわたって行う長期間の仕事まで、幅広く用いられています。

 コンペで発注者に選ばれた受注者が、その後も継続してプロジェクトで仕事を受注するといったケースも多いようです。 

 クラウドソーシングで発注される業務ですが、非常に幅広くあります。

 例えば、ランサーズでは「システム開発・運用」「Web制作・Webデザイン」といったIT系の仕事から、「ライティング・ネーミング」「写真・動画・ナレーション」などのコンテンツ系、「翻訳・通訳サービス」「事務・コンサル・専門職・その他」といった業務系の仕事までやり取りされています。

 クラウドソーシングの単価は、ケースバイケースですが、一般的にコーディングやプログラミングなどのハイスキル系の仕事の方が単価は高くなるようです。

 また、デザインや動画などのコンテンツ系の仕事も、実績が豊富な人の単価が上がる傾向にあります。

 では、実際にクラウドソーシングで仕事を発注する際の手順を説明しましょう。

 通常は、ランサーズやクラウドワークスなどのクラウドソーシングサイトを使って発注します。

 ここでは、クラウドソーシングサイトで、近日開催予定のセミナーのランディングページ制作を依頼するケースを想定してみましょう。

 最初のステップは発注内容の決定です。

 発注するに際しては、期待される成果物の内容やイメージをできるだけ明確にしておくことが重要です。

 漠然と「ユニークで目立つランディングページを作って下さい」といった内容では受注者はイメージができません。

 例えば、ランディングページの作成とひと言に言っても、たとえば文章作成だけなのか、デザインのみなのか、あるいはコーディング作業もあわせてお願いするのか、など作業の範囲はさまざまです。

 作業の範囲は、広げれば当然ながらその分、コストがかかります。一方で、狭すぎると自社で対応する作業が増え、外注のメリットが薄れてしまいます。

 ワーカーにどこまでお願いするのか、社内のリソース(逆に自社で対応できる範囲)とコストを天秤にかけたうえで決定する必要があります。

 また、ワーカーが間違った方向で作業をしないように、明確にできることはすべて明確にして下さい。

 今回で言えば、ロールモデルやデザイン案などを用意し、ランディングページのターゲット、連動させるSNSなどの媒体、セミナーの詳細情報、フォームの内容、決済方法などを含めた仕様、納品方法、成果物のフォーマット等々を明らかにしておきます。

 その上で、具体的に依頼内容をまとめましょう。例えば、ランサーズでは次のような形です。

【発注内容参考例】

●依頼の目的・背景……当社主催セミナー集客用ランディングページのデザインとコーディングをお願いします。ラフイメージをお渡ししますので、それをベースに制作をお願いいたします。テキストとイメージ写真もすべてこちらで用意します。問合せ・申込フォームの入力内容も用意します

●ターゲット像……20代から40代のビジネスマン、男性および女性

●ページ数……1ページ

●スマホ対応の有無……レスポンシブWebデザイン

●参考URL……https://abcde.co.jp

●業務の範囲 ……デザイン及びコーディング

●用意してある素材……テキスト、写真

●納品ファイル HTML/CSS形式(.html/.css)

●補足説明 Webサーバーへのアップロードはこちらで行います

 これにより、ワーカーに実際に何を依頼するのかが明らかになります。

 ランディングページの制作であれば、複数の人に応募してもらうプロジェクトで募集するのがいいでしょう。クラウドソーシングサイトの指示に従い、必要情報を入力してゆきます。

 なお、予算ですが、事前に類似の仕事の募集がないかチェックし、ある程度の相場感をつかんでおくといいでしょう。相場を掴んでおけば、実力のある人を呼び込みたいときも、必要以上にコストをかける必要がなくなります。

 また、募集期限は最初は1週間程度に設定し、応募状況を見ながら調整するといいでしょう。募集期間はいつでも延長できます。

 情報を入力したら公開して応募を待ちます。ランディングページの制作は人気のある仕事ですので、公開すれば比較的早く応募者が出てくるでしょう。

 ここでのポイントは、応募期間終了前に良さそうな人が出てきても、募集を締め切らないことことです。

 「腕に自信がある応募者」は、応募期間の終了間際になって提案してくる傾向にあります。大物は最後に現れるようです。

 応募期間が終了したら受注者を決めます。受注者選びは、その後の成果物のクオリティに関わるため、提案内容、提案金額、これまでの実績、プロフィール、評価などを慎重に見ることが大切です。

 それぞれ次のポイントを見てみましょう。

受注者のチェック項目 チェックポイント
提案内容 こちらの依頼内容を正しく理解しているか、またそれに対する提案がしっかりとできているかをチェックしましょう。
今回の発注内容で言えば、ターゲット像と参考サイトを見てこちらが希望するデザインの方向性を理解し、それに対して必要な要素や追加したほうがいい内容を端的に説明している方だと、希望通りのものを仕上げてくれる可能性が高いでしょう。
提案金額 一般的には、スキルや実績のある人の単価は高くなる傾向にあります。いたずらに安さだけを求めず、提案内容やこれまでの実績、プロフィールなどほかのポイントも見て総合的に判断して下さい。
これまでの実績 ランディングページなどの制作については、これまでの実績がしっかりとチェックすることが重要です。
今回で言えば、とくに20代から40代のビジネスパーソンで、ランディングページを作成したことがある方を積極的に採用したいところです。
プロフィール スキルや実績のある人の多くは、プロフィールも充実しています。その人が何を強みにしているのか、これまでどんなことを経験してきているのかを重点的にチェックして下さい。
評価 評価も重要なポイントです。特に納期や品質に関する評価は、トラブルを未然に防ぐためにしっかりとチェックして下さい。
また評価のコメントにも目を通すようにしましょう。

 これらを見て、総合的に判断して下さい。

 当選者が決まったら通知をし、そのまま仕事を依頼します。通常は発注者が報酬を仮払いし、受注者が承諾すると仕事開始となります。

 受注者の仕事が終わったら成果物を納品してもらいます。多くのケースではファイルなどの成果物をメッセージに添付して納品します。

 もし成果物に修正点があれば、その旨をメッセージで伝えます。

 修正依頼は、基本的に、送られてきた成果物が最初の発注内容を満たしてないものだったときに行うものです。最初の発注内容とは異なる修正指示を出すと、「話が違う」となってワーカーとトラブルになったり、追加料金を支払う必要が出てきたりします。

 どこをどう直したらいいのかワーカーがすぐにわかるようにできるだけ具体的にし、また指示に納得してもらえるように、なぜ修正が必要なのか理由も添えるようにしましょう。

 修正依頼は、できるだけ早めに修正依頼した方がスムースにいくケースが多いとされています。

 たしかに納品してから1週間、音沙汰がなく、そのあと急に修正の依頼をされたらワーカーも戸惑ってしまいます。

 しかし、急ぐあまり、指示の丁寧さを欠けば、トラブルにつながりやすくなります。それによりワーカーが辞退して、自社で作業を巻き取る形となってしまっては本末転倒です。

 ワーカーの立場になり、どう修正をお願いしたら快く引き受けてくれるか、という視点を忘れないことが大切です。

 なお、ほとんどのクラウドソーシングサイトでは、サイトのメッセージング以外で受注者とやり取りすることは禁じられているので注意して下さい。

 成果物に問題がなければプロジェクトを終了し、報酬を確定させます。同時にまた、受注者を評価します。

 ここでのポイントは、星をつけてお礼を述べるだけではなく、できるだけ具体的に評価した理由を書き込むことです。

 たとえばランディングページの制作においては、「デザインが軽量でレスポンシブ対応がしっかりしていて、スマートフォンユーザーにフレンドリーなものに仕上がりました」などとコメントするといいでしょう。

 後に別の仕事を依頼する可能性がある場合は、とりわけそのようにして下さい。

 なお、プロジェクトで募集や選定をしている時間がないといった場合は、最初からワーカーを探して直接依頼する方法もあります。

 ほとんどのクラウドソーシングサイトでは、登録しているワーカーを検索できます。

 上述した「受注者のチェック項目」を参考にしながらスキルや実績などをチェックして、お願いできそうなワーカーにメッセージして相談してみましょう。

 クラウドソーシングは、前述したようにさまざまなメリットがありますが、一方でデメリットもあり、それによって失敗やトラブルが起きるケースがままあります。

 よくあるのが、「応募が来ない」「ワーカーと連絡が取れない」「ワーカーとトラブルになった」です。これらに対して、発注者はどのように対応すべきでしょうか。

 コンペに応募が来ない最大の理由は、次の3つです。

  • 仕事の内容がよくわからない
  • 仕事の単価が安い
  • 発注者の情報が少なく怪しいイメージを持たれる

 対策は、とにかく仕事の内容に関する情報や発注者についての情報を増やすことです。また予算についても、あらかじめ高めに設定しておく必要があります。

 プロジェクトの途中でワーカーと連絡が取れなくなるケースもしばしばあります。その場合、とにかくマメにメッセージを送るしかありません。

 メッセージを数回送っても連絡が取れない場合は、連絡催促申請手続きを行いましょう。事務局からワーカーに連絡が行き、それでも不通の場合はプロジェクトがキャンセルされます。

 また、プロジェクト進行中にワーカーとトラブルになるケースも少なくありません。

 クラウドソーシングサイトでは、仕事についてのやりとりは発注者とワーカーが直接行うのが基本ですが、トラブルがどうしても解決できない時は事務局へサポートを依頼しましょう。

 最後に、クラウドソーシングサイト主要3選をご紹介します。

 クラウドワークスは、国内最大級のクラウドソーシングサイトです。

 2020年9月時点の登録ワーカー数442万人、登録企業数72万社おり、ランサーズと共に我が国クラウドソーシングサイトの二強を構成しています。

 比較的テック系の仕事が多く、最近は地方創生関連のプロジェクトなども展開しています。

サイト名 クラウドワークス(Crowdworks)
運営者 クラウドワークス
登録ワーカー数 442万人
登録企業数 72万社
発注形態 タスク・コンペ・プロジェクト
手数料 5~20%
おすすめの利用シーン Webサイトのデザイン、ランディングページの制作といったコンテンツ制作、システム開発系全般を発注したいとき

 クラウドワークスの公式サイトはこちら。

 2021年8月現在で登録ワーカー数110万人・登録企業数35万社のクラウドソーシングサイト。

 エンジニア、デザイナー、ライターなどの277カテゴリーの仕事の依頼が可能です。ロゴデザインやウェブデザインなどのデザイン系に強く、利用満足度98%を誇っています。

 ワーカーが自分のスキルを販売するシステムなども用意されています。

 クラウドワークスよりもデザイン・コンテンツ系の仕事が多い印象です。

サイト名 ランサーズ(Lancers)
運営者 ランサーズ
登録ワーカー数 110万人
登録企業数 35万社
発注形態 タスク・コンペ・プロジェクト
手数料 5~20%
おすすめの利用シーン ライティング、ブログ記事執筆などのテキストベースのコンテンツ制作、動画制作を依頼したいとき

 ランサーズの公式サイトはこちら。

 クラウドワークス、ランサーズに次ぐクラスの大型クラウドソーシングサイト。2021年8月時点での登録ワーカー数は100万人以上です。

 クラウディアでは、ライター、デザイナー、エンジニアなどの仕事に加え、事務系や軽作業などの仕事も依頼できます。

 発注側キャンセル料無料で、システム手数料もクラウドワークス、ランサーズよりも安価になのが特徴です。

サイト名 クラウディア(Craudia)
運営者 エムフロ
登録ワーカー数 100万人
登録企業数 不明
発注形態 タスク・コンペ・プロジェクト・時間給
手数料 3~15%
おすすめの利用シーン 事務系ワークや軽作業などをアウトソースしたいとき

 クラウディアの公式サイトはこちら。

 ギグエコノミーの普及により、クラウドソーシングサイトを活用して仕事を発注する機運は今後ますます高まって行くのは間違いありません。

 ただ、クラウドソーシングサイトごとにワーカーのタイプや個性などに特色があります。

 特にクラウドソーシングを多用する計画の企業においては、クラウドソーシングサイトは複数登録し、それぞれの特性に合わせて活用されることをおすすめします。