目次

  1. メール共有システムとは
  2. メール共有システムの3つのメリット
    1. 担当者の明確化による抜け漏れ重複防止
    2. 対応状況の可視化による遅延防止
    3. メール蓄積により、新入社員も過去の対応履歴を閲覧可能
  3. メール共有システムの選定ポイント
    1. 対応チャネルがニーズにマッチしているか
    2. 自社で利用中のサービスとの連携は可能か
    3. サポートは丁寧で充実しているか
  4. おすすめのメール共有システム4選
    1. メールワイズ
    2. メールディーラー
    3. Re:lation(リレーション)
    4. Freshdesk
  5. メール共有システムを活用するコツ
  6. IT活用の便利さは体験しないと分からない

 メール共有システムとは、問い合わせメール対応を効率化するサービスです。

 メール共有とは、ただメールを複数人で共有することではなく、問い合わせメールの「対応状況」を共有することだと捉えると分かりやすいです。

 単にメールを共有するだけなら、OutlookやGmailでもできます。

 しかし、各メールについて、抜け漏れなく返信できているのかをチェックするには、メールを1通ずつ確認する必要があります。

 もしかしたら、誰も返信していないメールに対して、2人同時に返信してしまうかもしれません。

 「この問い合わせ対応やってる?」「このメールの返信よろしく」というように、口頭やメールなどで都度確認して回避している方もいらっしゃると思いますが、コミュニケーションに多くの時間を取られているのではないでしょうか。

 そこで、おすすめなのがメール共有システムです。

 メール共有システムを利用すると、メール1通ごとに情報を付加することができます。たとえば、メール1通1通に対して、「担当者」情報を付ければ、返信漏れや重複対応を防ぐことができます。

 これはメリットの1つに過ぎません。メール共有システムは、問い合わせ対応の顧客満足度向上に寄与するだけでなく、問い合わせ業務の効率化に役立ちます。

 メール共有システムの具体的なメリットを3つ紹介します。

 メール共有システム上で、問い合わせメール1通1通に対して担当者を割り当てることができます。

 すると、誰が見ても担当者が一目瞭然になります。そして、担当者が割り当てられていない問い合わせもすぐに分かります。

 「メールに返信した人がその問い合わせの担当者だ」と思う方もいらっしゃると思います。

 私の経験上、返信トラブルはまだ1通も返信を出していない状況で起こりやすいです。

 誰かが返信するだろうと思って誰も返信しなかったり、1通目の返信を出すまでに時間がかかってしまい、上司が都度状況を確認しなければいけないという状況が発生したりします。

 担当者を明確にするだけでも、業務効率がアップするのです。

 メール共有システム上で、問い合わせメール1通1通に対して対応状況(ステータス)を入力することができます。「未着手/着手中/完了」といったものです。

 問い合わせ対応の遅延は、顧客の信頼を損ないかねません。

 どの問い合わせ対応が順調で、遅延しているのはどれなのか。対応状況を可視化して一覧表示すると、すぐに分かって便利です。

 また、問い合わせに対して、任意のコメントを残すこともできます。

 問い合わせ内容によっては、回答に時間がかかるものもあるでしょう。

 そんなとき、「納期の確認中」のようなコメントがあれば、上司の方は都度状況を口頭で確認しなくても、メール共有システムを見るだけで状況が分かります。

 新しく入社した方が問い合わせ対応に入るとき、「この顧客には、これまでどのような対応をしてきているのか」を確認するために、入社前の問い合わせ対応メールを、先輩社員に見せてもらうケースがあるかと思います。

 もしくは、以前使っていたパソコンを開き、古いメールを見て確認するということもあるのではないでしょうか。

 メール共有システムにはメールがシステム自体に蓄積されますので、新しく入社した方でも、システムにアクセスするだけで古い問い合わせメールとその対応履歴を見ることができます。

 顧客からしたら、問い合わせ対応を行う従業員が新人かどうか関係ありません。

 過去の対応履歴を簡単に共有できて、新人でも過去を踏まえた対応ができるのも、大きなメリットの1つです。

 「メール共有システム」で検索すると、多くのサービスがヒットして、どれを選べば良いか分からないですよね。

 先ほどお伝えした3つのメリットは基本的な機能ですので、どのサービスでもメリットを享受できます。本章では、選定ポイントを3つ紹介します。

 メール共有システムは、基本的にメール以外の「チャネル」にも対応しています。

 チャネルとは、ここではメール共有サービスに対して、情報が入ってくる経路のことだと考えてください。問い合わせの入口と捉えても構いません。

 たとえば、対応チャネルに「メール」とある場合、送られてきた問い合わせメールが自動的にメール共有システムへ保存されます。

 顧客との接点は多様化してきており、近年ではメールだけでなく、LINEやSNSを活用する企業も増えてきました。

 メール共有システムによって対応チャネルが異なりますので、自社の事情に合わせて選びましょう。

 外部サービスとの連携が充実しているメール共有システムを利用すると、社内で利用しているシステムやクラウドサービスと連携できます。

 たとえば、顧客管理システムと利用すれば横断的に情報を見れますし、Chatworkと連携すれば通知をChatworkで受け取ることができます。業務の効率化につながるのでおすすめです。

 ただし、連携サービスが多いこと自体がメリットなわけではありません。

 連携できるサービスを利用しておらず、今後も導入予定がないのであれば、連携機能にこだわる必要はありません。

 メール共有システムは、数日〜1週間程度で利用開始できるものが多いですが、導入後の利用期間は数年続くでしょう。

 サービスのバージョンアップが頻繁にあったり、機能が変更されたり、画面レイアウトが変わったりすることもあります。安心して継続的に利用し続けるために、サポート体制を確認しましょう。

 顧客対応が主な用途であるメール共有システムの会社なので、どこもサポート体制はある程度しっかりしていると思いますが、対応内容や丁寧さは好みが分かれるところです。

 一度問い合わせしてみて、反応を見てみることをおすすめします。

 多数あるメール共有システムの中から、おすすめ4つを厳選して紹介します。比較表を作成しました。

サービス名 メールワイズ メールディーラー Re:lation
(リレーション)
Freshdesk
特徴 ・メール共有に特化したサービス
・費用が安く、コストパフォーマンスが高い
・対応チャンネルや外部サービスとの連携が豊富
・TwitterとFacebook連携は未対応
・TwitterやLINE公式アカウントと連携可能
・オプション扱いの機能が多い
・TwitterやFacebookと連携可能
・一部日本語化されていない
費用 初期費用
無料
月額費用
500円~/人
初期費用 50,000円
月額費用 20,000円〜
初期費用
0~50,000円
月額費用
0~76,800円
(プランによる)
初期費用
無料
月額費用
0~95ドル/人
(プランによる)
おすすめの企業 ・問い合わせ窓口がメールのみの企業
・機能が多くても使いこなせる人がいない企業
・ECサイトを運用している企業
・メールディーラーと連携可能なサービスを利用している企業
・ECサイトを運用している企業
・TwitterやLINE公式アカウントを運用している企業
・Facebook公式ページを運用している企
・外国人従業員が問い合わせ対応を行う企業

 問い合わせ窓口がメールだけであれば、メールワイズがおすすめです。他のメール共有システムと比較すると機能が少ないように見えるかもしれませんが、メール共有に必要な機能は揃っています。

 導入社数10,000社以上と、実績も豊富で安心です。

サービス名 メールワイズ
提供企業 サイボウズ
特徴 ・メール共有に特化したサービス
・費用が安く、コストパフォーマンスが高い
対応チャネル ・メール
・電話履歴/訪問履歴(自分で入力)
連携性 自社サービスであるkintoneのみ
費用 初期費用 無料
月額費用
【スタンダードコース】500円/人
【プレミアムコース】1,500円/人
おすすめの企業 ・問い合わせ窓口がメールのみの企業
・機能が多くても使いこなせる人がいない企業
公式URL https://mailwise.cybozu.co.jp/

 対応チャネルや外部サービスとの連携が豊富なのが特徴です。LINE公式アカウントや、楽天市場、Yahoo!ショッピングで顧客との接点を持つ場合に、おすすめです。

 導入者数6,000社以上であり、メール共有管理システムでは12年連続売上シェアNo.1と、実績も豊富で安心です。

サービス名 メールディーラー
提供会社 ラクス
特徴 ・対応チャンネルや外部サービスとの連携が豊富
・TwitterとFacebook連携は未対応
・初期費用が高い
➔無料トライアルで入念なチェックがおすすめ
対応チャネル ・メール
・電話応対メモ(自分で入力)
・LINE
・R-messe(楽天市場)
・Yahoo!ショッピング
連携性 ・受注管理システムやロジスティクス関連サービスなど、20以上のサービスと連携可能
・自社開発したAPI連携可能なシステムとも連携可能
費用 初期費用 50,000円
月額費用 20,000円〜
おすすめの企業 ・ECサイトを運用している企業
・メールディーラーと連携可能なサービスを利用している企業
公式URL https://www.maildealer.jp/

 メールディーラー同様に、対応チャネルや外部サービスとの連携が豊富です。

 とくに、Twitter連携ができる数少ないメール共有システムですので、企業のTwitter公式アカウントを運用されている方におすすめです。

サービス名 Re:lation(リレーション)
提供会社 インゲージ
特徴 ・TwitterやLINE公式アカウントと連携可能
・オプション扱いの機能が多い
※実現したいことを明確にして見積もりを取得する必要があることに注意
対応チャネル ・メール
・電話履歴(自分で入力)
・LINE
・R-messe(楽天市場)
・Yahoo!ショッピング
・Twitter
連携性 ・EC向けサービスやCRMなど、50以上のサービスと連携可能
・自社開発したAPI連携可能なシステムとも連携可能
費用 【フリー】
初期費用 無料
月額費用 無料
【ライト】
初期費用 15,000円
月額費用 12,800円(3人の合計)
【スタンダード】
初期費用 50,000円
月額費用 29,800円(10人の合計)
【プレミアム】
初期費用 50,000円
月額費用 76,800円(50人の合計)
上記に加え、各種オプション費用
おすすめの企業 ・TwitterやLINE公式アカウントを運用している企業
・ECサイトを運用している企業
公式URL https://ingage.jp/relation/

 Facebook連携ができる数少ないメール共有システムで、企業のFacebook公式ページを運用されている方におすすめです。

 海外のサービスであり、一部日本語化されていない部分があります。インバウンドビジネスやグローバル展開を行っていて、外国人従業員が問い合わせ対応を行うような場合に、おすすめです。

サービス名 Freshdesk
提供会社 Freshworks Inc.
特徴 ・TwitterやFacebookと連携可能
・一部日本語化されていない
※英語が苦手な方が運用する場合は注意
対応チャネル ・メール
・電話応対メモ(自分で入力)
・LINE
・Twitter
・Facebook
連携性 ・1,000以上のサービスと連携可能
・自社開発したAPI連携可能なシステムとも連携可能
費用 初期費用 無料
月額費用
【Free】無料
【Growth】18ドル/人
【Pro】59ドル/人
【Enterprise】95ドル/人
おすすめの企業 ・Facebook公式ページを運用している企業
・外国人従業員が問い合わせ対応を行う企業
公式URL https://freshdesk.com/jp/

 メール共有システムは問い合わせメール対応をサポートするサービスであり、全自動ですべて行ってくれる魔法のツールではありません。あくまで、運用するのは人間です。

 たとえば、せっかくメール共有システムを導入して、担当者が割り当てられていない問い合わせメールがひと目で分かったとしても、そのまま放置したら意味がないですよね。

 私の経験上、問い合わせ対応者が増えれば増えるほど、どのカテゴリにも属さないような問い合わせに誰も対応しなくて、こぼれおちやすくなります。

 メール共有システムのメリットを享受するために、運用ルールを文書化しておくことをおすすめします。たとえば、次のようなことを決めておくと良いでしょう。

  • 問い合わせメールが来たら、何時間以内に回答するか
  • 問い合わせメールごとの対応者をどのように決めるか
  • 対応履歴のコメントはどの程度の粒度で残すか
  • 障害でメール共有システムへアクセスできないときは、どのように対応するか

 1点だけ、注意があります。メール共有システムには様々な設定ができますが、今後の運用体制を検討した上で、各種設定を行ってください。

 メール共有システムにもよりますが、メールを自動的にフォルダ分けしたり、担当者を自動的に付けたり、外部サービスと連携できる機能があったりします。

 これらの機能を使いこなせる従業員の方がいたとして、細かく設定した場合、その方が退職されたらどうなるでしょうか。

 今後も、同じレベルで使いこなせる従業員を安定して雇えるのであれば問題ありませんが、そうでない場合は、必要最小限の設定にしておくことをおすすめします。

 現状、問い合わせ対応ができているのに、お金をかけてまでメール共有システムを導入する必要があるのか?そう思う方もいらっしゃるかと思います。

 問い合わせメールの件数にもよりますが、仮にひとり1日10分、問い合わせ対応時間が減ったとします。

 金額に換算するといくらになるでしょうか。メール共有システムの利用費用の元は取れないでしょうか。

 もし今、問い合わせ対応を複数人で、対面で口頭というアナログな方法でフォローしあいながら行っているのであれば、メール共有システムでデジタル化するだけで、業務効率が上がります。

 体外的にアピールすれば、ITに理解がある企業として認知され、採用ブランディングの向上につながる可能性もあります。

 こうしたメール共有システムのメリットは、実際に利用してみないと、なかなか実感できないと思います。

 どのサービスも無料トライアルがありますので、ぜひ一度試してみてください。「やっぱりうちの会社では必要ないな」と思ったのなら、やめれば良いのです。