目次

  1. 給与計算ソフトを選ぶときのポイント
    1. 勤怠管理機能の有無
    2. 手当項目や計算式の設定柔軟性
    3. チェック作業の進めやすさ(UIのわかりやすさ)
    4. 既存システムとの連携
    5. サポート体制の充実度合い
  2. おすすめの給与計算ソフト比較5選
    1. freee人事労務
    2. マネーフォワード クラウド給与
    3. ジョブカン給与計算
    4. Gozal
    5. jinjer給与
  3. 給与計算ソフトを利用する時の注意点
    1. 勤怠管理は正しく行う
    2. 自動化しても正確性の担保にあたり一定の知識は必要
    3. 法改正対応、毎年対応が必要な作業を忘れずに
  4. どのシステムにもメリットデメリットがあるので優先順位をつけた選定を

 給与計算ソフトとは、給与計算の処理を自動化するシステムのことです。付随して、勤怠管理・社会保険手続・年末調整等の機能が付いているものもあります。

 給与計算ソフトには次のようなメリットがあり、特に給与計算の誤りや工数を削減したいという課題を抱えている企業に非常に有効です。

  • 給与計算業務を自動化でき、業務効率化につながる
  • 法改正による変化(例:計算式、保険料率等)への対応がスムーズになるため、情報収集の手間や計算間違いの削減が期待できる
  • ヒューマンエラーを減らすことができるので、給与計算業務担当者の心理的負担が小さくなる
  • 給与計算知識が少ない担当者でも業務を行えるので、従業員教育やWチェックにかかる時間コスト・人件費を削減できる

 一方、給与計算ソフトと言っても、さまざまな種類のものがあります。

 一度ソフトを導入すると、別ソフトへの乗り替えには一定の工数がかかることから、最初の選定が大きな鍵を握ります。

 実務上、重要と思われるポイントをご紹介しますので、是非自社にあったソフト選びの参考にしてください。

 そもそも給与計算にあたっては勤怠管理機能が必須です。なぜなら、時間外労働や欠勤、遅刻早退など、勤怠実績を元にして、毎月の給与額が計算されるからです。

 給与計算ソフトには、(1)給与計算と同一のシステム内に勤怠管理機能があるもの、(2)同一シリーズ内の勤怠管理システムと組み合わせて使うもの、(3)他の勤怠管理システムと組み合わせて使うものの3タイプがあります。

 (1)の例がfreee人事労務、Gozal、(2)の例がマネーフォワードクラウド給与、ジョブカン給与、jinjer給与などです。

 このタイプを見極めないと、いざ給与計算を行おうとした際に、元になる勤怠実績をどこで確認すれば良いか困ってしまいます。

 さらに、勤怠管理システムによって集計の方法が異なります。

 例えば、深夜に働いた時間の集計一つとっても、全てまとめて集計するパターンや、平日深夜・所定休日深夜・法定休日深夜、のように項目を分けて集計するパターンなど複数の方法が挙げられます。

 自社の計算方法にあった集計方法を採用しているシステムでなければ、かえって手間が増えてしまうことにもなりかねないので、勤怠管理機能の有無に加えて、勤怠管理機能がある場合にはその内容も合わせて確認すると良いでしょう。

 なお、各ソフトの勤怠機能の有無・内容については、基本的にWebサイトに記載されています。もし書かれていない場合は、問い合わせるようにしましょう。

 手当の項目名や計算式の設定の柔軟さは、システムに応じて異なります。

 内包された計算式に従って設定を行うものや、四則演算を入力するものなど、設定の仕方はさまざまです。

 担当者の知識レベルや給与体系の複雑さに応じて、自社に合ったものを選ぶ必要があります。

 特に、フレキシブルな給与体系を運用している会社の場合、システムの自動計算式に当てはまらずに一部システム外での手計算が必要になる、といった事態も生じかねないので、十分に注意する必要があります。

 導入を検討しているソフトの手当項目や計算式の設定柔軟性については、Webサイトで公開されている説明を確認しましょう。

 特殊な計算項目がある会社については、無料お試しプランなどを活用して実際に検証してみるのがおすすめです。

 毎月この手順で進める、というプロセスが示されているものや、月額変更のアラート(給与が変わった場合に社会保険料等級の変更が発生する、等)が出るものなど、給与計算や付随して発生する作業を進めやすい機能であるか、という点も重要です。

 また、従業員ごとに完了ステータスをメモできるか、チェックできるか、もソフトに応じて異なります。

 特に給与計算業務を誰でも行えるようにしたい、と考える会社の場合、チェック作業が進めやすいUIであるかは業務効率化度合いに大きく関係してくる部分です。

 この項目を確認するには、無料お試しプランなどを活用して具体的な流れを掴むのが最も効果的です。また、Webサイトで公開されているユーザーの声なども参考になります。

 自社で既に使っているシステム(会計、経費精算、勤怠管理など)がある場合には、適切に連携が行えるかを確認しましょう。

 同一シリーズ内のシステムであれば問題はありませんが、そうではなくてもAPI連携に対応していれば使い勝手という観点では影響はありません。

 Webサイトで公開されている連携システム一覧を確認するほか、組み合わせて用いている事例が実際にあるかどうか、何かトラブルが起きていないかどうか、などといったことを具体的に問い合わせてみるのも有効です。

 カスタマーサポート体制の充実度合いも重要なポイントです。

 システムの仕様は複雑なので、ヘルプページだけでは完結しない疑問点は必ず発生します。

 チャットや電話でのサポートが受けられるのか、サポートサービスは有料か無料か、といった点も確認すると良いでしょう。

 また、導入時の初期設定サポートを提供しているサービスもあります。

 こうしたサポートの対応時間や手段は、Webサイトで確認しましょう。また、無料お試し期間中に実際に問い合わせを行ってみて、対応速度やわかりやすさなどをチェックすることをおすすめします。

 上記の観点を踏まえ、5つソフトをご紹介します。なお、全てクラウド型のソフトをご紹介しています。

 freee人事労務は、freee株式会社が提供するサービスです。

 最大の特徴は同一システム内で勤怠管理から給与計算、明細発行まで完結できる点にあります。(さらに、同一シリーズのfreee会計などと組み合わせて使うことで、経費精算や会計処理も効率化できます。)

 UIもわかりやすく、3つのプラン別に機能・料金を選択できます。

 賃金体系が複雑ではなく、手当ごとの細かい計算式を設定する必要がない会社には最もおすすめのサービスです。

ソフト名 freee人事労務
提供会社 freee株式会社
機能

勤怠管理
給与計算
電子明細
社員情報管理
年末調整

特徴

・勤怠から給与計算、明細発行が同一システム内で完結できる
・UIがわかりやすい
・使いたい機能に合わせてプランを選択できる
・手当の計算式のカスタマイズの幅は広くない

おすすめの会社

・一つのシステムに人事労務業務を集約したい会社
・会社の規模や状況に応じてサービス内容を使い分けたい会社
・賃金体系がシンプルな会社

料金

年額プランと月額プランがあります。ここでは月額プランの金額を参考までに掲載します。


<ミニマムプラン>
月額2,200円 従業員4人目以降 +300円 / 人

<ベーシックプラン>
月額4,480円 従業員4人目以降 +500円  / 人

<プロフェッショナルプラン>
月額9,280円 従業員4人目以降 +700円 / 人

<エンタープライズプラン>
要問い合わせ

公式URL https://www.freee.co.jp/hr/

 マネーフォワードクラウド給与は、株式会社マネーフォワードが提供するサービスです。

 マネーフォワードクラウド勤怠や経費精算、会計等と組み合わせて使うことができます。

 計算式も比較的柔軟に設定することができ、大きなデメリットのないバランスの良いサービスと言えます。

ソフト名 マネーフォワード クラウド給与
提供会社 株式会社マネーフォワード
機能

給与計算
電子明細
社員情報管理

特徴

・マネーフォワード他シリーズ(勤怠・経費精算・年末調整・社会保険・マイナンバー等)と連携することで人事労務手続を網羅できる
・前月比較機能、従業員ごとのチェックボックス、メモ欄が充実している等、確認作業が行いやすいUIとなっている
・社会保険の複数の適用事業所を設定できる

おすすめの会社

・従業員数が多く、複数人でチェック作業を行う会社
・KING OF TIME等、他社の勤怠ソフトを使っている会社
・社会保険の申請手続まで自社で行う会社

料金

年額プランと月額プランがあります。ここでは月額プランの金額を参考までに掲載します。プラン機能はシリーズ全体に対して適用されるもので、給与システムの機能はいずれも同じです。

<スモールビジネス>
月額3,980円 従業員6人目以降 +300円 / 人

<ビジネス>
月額5,980円 従業員6人目以降 +300円 / 人

公式URL https://biz.moneyforward.com/payroll/

 ジョブカン給与計算は、株式会社DONUTSが提供するサービスです。

 勤怠管理やワークフロー、経費精算など、同一シリーズ内のサービスと組み合わせて使うことができます。

 細かい給与規定グループを設定できたり、四則演算を利用した支給・控除項目を設定できるなど、カスタマイズの幅が広いです。

ソフト名 ジョブカン給与計算
提供会社 株式会社DONUTS
機能

給与計算
電子明細
社員情報管理

特徴

・途中入社・退職者の表示アシスト機能など、担当者の負担を減らす便利機能が豊富
・カスタマイズの幅が広い
・現金・現物支給にも対応している

おすすめの会社

・手当や控除が多く、従業員ごとに支給項目が異なることが多い会社
・勤怠、ワークフロー、採用管理まで一括で管理したい会社

料金

月額 400円 / 人
(500人を超える場合は要問い合わせ)

公式URL https://payroll.jobcan.ne.jp

 Gozalは、株式会社BECが提供するサービスです。

 freee人事労務同様、同一システム内で勤怠管理から給与計算、関連する社員情報管理が完結できます。

 また、勤怠項目・給与支給項目について柔軟なカスタマイズができる点も特徴です。

 従業員数が増えてきたのでフレキシブルな給与体系を導入・運用したい、給与計算を内製化したい、などと考えている企業におすすめのサービスです。

ソフト名 Gozal(ゴザル)
提供会社 株式会社BEC
機能

勤怠管理
給与計算
電子明細
社員情報管理

特徴

・勤怠から給与計算、明細発行が同一システム内で完結できる
・給与計算式の柔軟なカスタマイズにより多様な計算を自動化
・経験豊富なサポートチームによる導入・運用フォロー体制

おすすめの会社

・50名を超えてユニークな人事制度などを給与と絡めて設計しようとしている会社
・組織の拡大によって労務管理の工数が増えている会社
・人事労務システムを内製化しようとしている会社

料金

月額 700円 / 人
(年間一括払いの場合 590円 / 人)

公式URL https://bec.co.jp/

 jinjer給与は、jinjer株式会社が提供するサービスです。

 従業員ごとの締め処理や明細公開日時設定など、他の給与計算ソフトにはないユニークな機能が多くあります。

 同一シリーズでは、雇用契約、ワークフロー、電子契約、web会議、コンディション管理など、会計を除くバックオフィス業務を幅広くカバーしている点も特徴的です。

ソフト名 jinjer給与
提供会社 jinjer株式会社
機能

給与計算
電子明細
年末調整

特徴

・UIがわかりやすく、ステップに沿って進めることができる
・従業員ごとに給与計算の締め処理を行える
・四則演算を利用して項目名や計算式を柔軟に設定できる

おすすめの会社

・従業員ごとに給与支給の取り扱いを柔軟に対応したい会社
・幅広いバックオフィス業務を1つのデータベースに集約して管理したい会社

料金

月額 500円 / 人
(1,000人を超える場合は要問い合わせ)

公式URL https://hcm-jinjer.com/payroll/

 せっかくソフトを導入しても、正しい給与計算が行われなければ意味がありません。ここでは、ソフト導入後に気をつけたいポイントを3つご紹介します。

 当然ですが、勤怠が正しく入力、集計されていなければ、正しい給与計算は行えません。

 正確な打刻が行われているか、項目の設定は適切か、各項目に正しく集計されているか、という点は十分に注意が必要です。

 たとえば、勤怠締めスケジュールをあらかじめ決めて周知徹底をすることにより、余裕を持ったスケジュールで給与計算業務を行えるのでミスをぐっと減らせます。

 また、例えば年次有給休暇や振替休日、代休を取得した際、などをトリガーとして定期的に出勤簿を見直すことも有効ではないかと思います。

 ソフトを用いて給与計算を自動化したとしても、社会保険の随時改定(月額変更)など、システム内で完結しない業務は発生します。

 また、正確な給与計算を行うにあたっては、従業員情報の変更や給与情報の改定など、担当者がタイムリーにシステム内の情報をアップデートする必要があります。

 そういった観点からは、毎月のチェック体制の仕組み化も同時に行う必要があるでしょう。

 残業代計算の基礎となる時間単価は、毎月の平均所定労働日数に応じて異なるケースがほとんどです。

 毎月の平均所定労働日数は年間休日数に応じて決まるため、原則として毎年見直しが必要となります。

 システムを導入して給与計算を自動化していても、この作業が漏れているケースが多いです。対応事項と対応時期を明記したチェックリストを作成するなどして、忘れないようにしましょう。

 ご紹介した通り、各給与計算ソフトにはメリットデメリットがあります。

 自社の給与体系の複雑さ、担当者の知識経験、他業務で使用しているソフト、それから予算感などをリストアップし、優先順位をつけて選定を行うことをおすすめします。