目次

  1. ライスパワーエキスを化粧品に
  2. 大学院生時代から家業に関わる
  3. 酒造りを経験して家業になじむ
  4. 商品企画が酷評される
  5. 価値観を発信するマーケティング
  6. 商品企画と情報発信を統合
  7. 社長の心を動かした説得
  8. 長宗我部元親の教訓を胸に

 勇心酒造は1854年に創業し、現在は従業員約120人を抱えています。年間売り上げ約32億円のうち、祖業の日本酒事業は1%未満。酒造りの技術を生かして開発した「ライスパワーエキス」を用いた化粧品事業が大部分を占めます。

 ライスパワーエキスは、5代目社長で農学博士でもある孝仁さんの父・孝さん(79)が開発した独自素材です。国産米100%で造られ、抽出した米のエキスに微生物を組み合わせて樽の中で発酵させます。複雑なアミノ酸群などが主成分です。

 このエキスは、肌の水分保持能の向上、皮脂分泌の抑制、肌の清浄化、入浴後の湯冷めを防ぐなど、様々なスキンケア効果が確認されているといいます。

ロングセラーとなった薬用入浴液「アトピスマイル」

 同社は36種類のライスパワーエキスを開発し、製品化してきました。中でも1987年に発売された商品は、当時、コメ由来の有効成分を持つ医薬部外品として注目されたのち、2002年に「アトピスマイル薬用入浴液」としてリニューアル発売されました。

 常務の孝仁さんも農学博士号を持ち、研究開発からマーケティングまで幅広い業務を担います。「ライスパワーエキスは肌本来の力を引き出す点が特徴です。『加える・補う』といった商品とは一線を画しています」

 孝仁さんは父から「文明を後世に伝える」という酒蔵の役割を聞かされ、子どものころから家業を継ぐ意識が芽生えていました。ただ、大学進学のとき、後継者としての難しい立場を感じました。

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