採用面接で人材を見抜く質問をする方法とは【質問の参考例付き】
面接時の受け答えは完璧な印象だったのに……。こんな入社後のミスマッチを避けるため「自社に合う人材」を見抜く面接の工夫を考えてみませんか?どんな質問で応募者の本質を見ることができるか、そのポイントと質問例を20年以上応募者側の本音を聞き続けるキャリアコンサルタントが紹介します。
面接時の受け答えは完璧な印象だったのに……。こんな入社後のミスマッチを避けるため「自社に合う人材」を見抜く面接の工夫を考えてみませんか?どんな質問で応募者の本質を見ることができるか、そのポイントと質問例を20年以上応募者側の本音を聞き続けるキャリアコンサルタントが紹介します。
目次
「面接での評価と、実際に働き始めてからの評価が違う」。そもそも、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
これらの「面接失敗」を引き起こす理由のなかで、面接時の工夫によって回避できるもののひとつが「お互いの情報開示と理解促進」です。
厚生労働省「雇用動向調査」のなかに、「転職入職者が前職を辞めた理由」があります。特に注目すべき3つの理由をピックアップしました。
これらは、ひとことでまとめると「思っていたのと違った」という理由です。
思っていたのと違うから、やる気が出ない。
この状況を回避するために必要なのが、求人する側の情報開示と、相手に合わせた理解促進です。
つまり「面接時の質問を通じて、自社の業務や環境に対する理解を促し、求職者とのマッチ度を測る」ような質問が「自社に合う人材を見抜くための採用面接質問」ということになります。
「こんな質問をすれば応募者の本音がたちどころに引き出せる!」……。このような魔法の質問はありませんが、質問を考えるうえでのポイントはあります。
「自社に合う人材を見抜くための採用面接質問」を考えるためには、まず「自社に合う人材」の共通認識を持つことが重要です。
「明るく前向きで仕事に対する知見があり、成長意欲が強く上司に素直に教えを請える。いざというときは休日返上しても業務を遂行し、積極的に周囲と交流する」……。こんな「優秀な若手人材」は、どんな会社に入っても同じように取り組むのでしょうか。そのようなことはありません。
そもそもどんな人材が「自社に合う」のか、社内で共通認識がなければ面接はいつまでも、たまたま良い人材が応募してきてくれるのを待つ状態になってしまいます。
まずは業務を遂行するうえで、客観的に必要な能力要件をピックアップします。このとき「能力」と「性格」を混同しないようにしましょう。
上記の「優秀な若手人材」の例でいえば、「明るく前向き」「素直」というところです。その一方で「業務を遂行するために必要な能力・スキル」で判断しようとすれば、面接官が違ってもブレが少なくなります。
会社内における「自社に合う人材」のイメージが固まったら、具体的に質問を考えてみます。
ポイントのひとつが、「自社に合う人材を見抜くための採用面接質問」では、応募者のことを一方的に聞き出すのではなく、会社の情報提供につながる内容にすることです。
もちろん、最低限の企業理解は、応募の意欲をみるうえで必須と言えます。
しかし、そもそも「企業研究に必要な情報」をほとんど公開していなければ、企業研究は進みませんし、意欲を高めることもできません。
そのため、良い質問を考えるうえでは、ホームページの採用情報の充実が前提条件です。
特に重要なコンテンツは「実際の業務内容」です。
単に「法人営業」と記載するよりも、具体的な商材、営業サイクル、チームで担当するか個人で担当するか、担当はどのように決められるのか、新規開拓の割合はどれくらいなのか、語学力の必要性など「仕事をする環境」がイメージできるように紹介しましょう。
また、その後のキャリアステップや一緒に働く上司や同僚などの紹介、社内風景などが伝わるとよりミスマッチを防ぎやすくなります。
それらの情報提供を踏まえ、面接時により深い情報提供につながるような質疑を用意しましょう。
「自社に合う人材を見抜くための採用面接質問」を考えるときは「質問の意図が応募者に伝わるか」という視点も持ちましょう。
何のためにその質問をしているのか、どのように答えれば良いか全く判断できない質問は応募者を不安にさせるだけです。
場合によっては、質問の意図を解説することも有効なので、用意していおくといいでしょう。
それでは、上記のポイントを踏まえ、応募者の「何を」見抜きたいかに合わせて、質問例を紹介します。
「面接時の質問を通じて、自社の業務や環境に対する理解を促し、求職者とのマッチ度を測る」ための質問を考えるには、「マッチ度」を測るための基準が必要です。
今回は、一般的に採用面接の際、重視されることが多い資質や特徴をピックアップして、具体的な質問例を作成しました。
応募者の「何を」見抜く必要があるかは会社によっても、職種によっても異なります。「何を」見抜くために「どのような質問」をするかを必ずワンセットで検討しましょう。
質問例 |
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「性格的に、どんな上司や同僚だとうれしいな、と思われますか?」 「これまで仕事で褒められたことで、一番うれしかったことを教えてください」 |
「素直さ」「前向きさ」「明るさ」「真面目さ」などなど、性格上で「良し」とされる美徳はさまざまです。
企業によっては、「経験もスキルも資格も一切不問。しかし、素直さだけは必要」というケースもあるだけに、人柄=性格を見抜くことを重点的にチェックしたいという相談は少なくありません。
もちろん、第一印象と大きく変わらないことも多いのですが、これまでの「第三者との交流の経験」から語ってもらうと、イメージのギャップを見つけられる場合があります。
質問例 |
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「給与体系についてと、休日休暇の申請の仕方について、今日はお時間がないのでどちらかについて詳しくご説明しようと思います。どちらの方がより興味がありますか?」 |
面接で伝える転職理由=キャリアアップは同じでも、ひとによってその「本音」はさまざまです。
「キャリアアップのため、と言っているが本音としては給与額アップ。そのためには休日は少なくなってもかまわない」
「キャリアップのために、資格を取りたい。そのためには時間を確保して勉強できる環境で仕事をしたい」
など、いろいろな答えがあります。
上記の質問をするときは、安心して話ができるような環境づくりも心がけましょう。
質問例 |
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「選考のスピードは、早い方がよいですか?それとも、じっくり考えるためのお時間を取って進める方がよいですか?」 「ご希望であれば、半日時間をとっての職場見学会もご用意しますが、希望されますか?」 |
企業研究のための時間も、内定後の検討期間も比較的じっくりとれる新卒採用の場合ではなく、中途採用の場合の例になります。
現職の仕事が忙しい方であれば、一度に進められる選考はそう多くありません。
その忙しい合間を縫ってさらにその企業に時間をかけたいと考えるか、他社との比較の必要性を考えないほど志望度が高いかなどの確認ができます。
質問例 |
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「ご応募いただいた弊社職種について、どのような能力が必要だとお考えになられますか?」 「弊社〇〇職の仕事内容について、何か確認しておきたいことはありませんか?」 |
一般的に「とても自分にはできそうもない」と思った仕事に興味を持って応募することは、ほとんどありません。
しかし「具体的にどのような仕事をするのか」イメージがあいまいだからこそ興味を持つ、ということはあり得ます。
これこそが「思っていたのと違う」を引き起こす原因です。応募者がどのような仕事内容をイメージして自社に興味をもったのか、詳しく確認する質問です。
質問例 |
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「これまで仕事をしてこられたなかで、良い環境だと感じたチームと、改善の余地があると感じたチーム、それぞれどのようなチームだったか教えてください」 |
大人数の中でチームと一員として働きたいか、少人数の固定メンバーが居心地よく感じるか、年齢や性別が近しい方がよいか、基本的にひとりでの作業を好むか……。
こうした「人間関係の向き不向き」を確認するには、これまでどのような環境を好んで選んできたか、またどのような環境に苦痛を感じたかを確認するとイメージしやすくなります。
「人材を見抜く」ためには、質問内容に力を入れるだけでなく、応募者がより自己開示しやすいような環境づくりが不可欠です。
採用面接を行ううえで、最低限しておきたいことを採用面接前・採用面接時・採用面接後の3つに分けてまとめました。
採用面接が始まる前に、可能なかぎりしておきたいことは次の2つです。
当日になって慌てて面接場所を探す、事前に送付されたはずの履歴書が見つからない、面接中になんども面接官に電話が入る……このような「採用側の準備不足」は志望度を下げる可能性があります。
周囲の話し声や目線が気にならない場所を用意し、待機場所に予告なく10分以上放置することがないように段取りをしましょう。
また、社内のメンバーに「採用面接が実施されること」を周知することも大切です。
今回「自社に合った人材を見抜くためのオリジナル質問」の考え方について紹介してきましたが、一般的な志望理由や、自己PRを聞いても意味がない……というわけではありません。
あらかじめ想定できる質問内容に対して、真摯な姿勢で準備すること自体が評価の対象になります。
また、面接の始まりは「想定通り」の質問をすることで、応募者の緊張を和らげる効果もあります。
すべての質問を、応募者が事前に準備ができない独自性の高いものにする必要はありません。
採用面接当日にとくにしておきたいことは、次の3つです。
威圧的にふるまう、無関心に見える、これらの態度はもちろん「百害あって一利なし」です。
「一見問題ないように見えるが、避けるべき態度」としては、丁寧語・敬語を使わない話し方が挙げられます。
面接官が明らかに年配で、応募者が若年層だとついフランクな態度で接してしまうこともあるかもしれませんが、避けた方がよいでしょう。
応募者と面接官は対等な立場・関係であることを伝えるという意味でも、意識しておきたいところです。
採用面接では、就職差別につながる可能性がある恐れがある質問をすることはできません。
【本人に責任のないこと】
・ご出身はどちらですか?
・ご両親の本籍地は?
・同居の家族構成を教えてください
・お住まいは借家ですか?持ち家ですか?
・大きな病気をした経験はありますか?
【自由であるべき思想・信条に関わること】
・宗教についてどのようにお考えですか?
・支持政党を教えてください
・前職では労働組合に加入されていましたか?
・購読している新聞・愛読書を教えてください
違反した場合、職業安定法に基づいて行政指導や改善命令などの対象となる場合があります。
近年、zoomなどのオンライン会議ツールを利用したオンライン面接も一般的に取り入れられるようになっています。
時間や場所の制約から比較的自由に実施できるため、オンライン面接を実施したことでこれまでは出会えなかった層の応募者と接点がもてるというメリットもあります。
オンライン面接を実施する際に重要なポイントは3つです。
なお、面接時の記録を取る場合、必ず応募者の同意を事前に確認してください。予告なく録画状態になることで、不安に感じる応募者は少なくありません。
入社後、面接時の評価と実際の評価の一致度を向上するためには、評価が不可欠です。
「なんとなく成功・失敗」ではなく、どのような点が合致し、どのような点が合致しなかったか、経年で振り返りを実施することをおすすめします。
良い採用とは、応募者と会社側、双方が納得・満足するものであるはずです。
一般的に「社員の紹介」などで入社した応募者の評価が高くなるのは、事前の情報量が多く「入社してみたらイメージと違った」という点が少ないことが理由のひとつ。
「良い人材を見抜く」ことは、同時に「応募者にとって自社こそが良い職場であることを見抜いてもらう」ことでもあります。
じっくり準備して選考に取り組みましょう。
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