目次

  1. 許認可が事業承継のリスクに
  2. 許認可で留意すべきポイント
  3. 「許認可の世代交代」を考える
    1. 基礎知識
    2. リスクについて
    3. 時間軸別のToDoリスト
    4. 業種別ケーススタディー
  4. 「許認可等」の種類と違い
    1. 許可(免許)
    2. 認可
    3. 認証
    4. 登録
  5. 確認するべき許認可等の要件
    1. 有効期限や提出先
    2. 資格者
    3. 事業を行う場所
    4. 資産や資本
    5. 事業主体
  6. まとめ

 筆者の事務所には事業承継と相続の相談が多く寄せられます。しかしその多くは、後継ぎ候補を誰にするか、資産をどうシフトするかという「ヒト」と「カネ」の相談です。

 そんな相談者に筆者は「許認可などの承継準備は検討できていますか」と問いかけます。

 すると、ほとんどの経営者と後継ぎは「今までずっと事業を続けて税の申告もしてきた。なんとかなります」などと答えます。「うちの会社はどんな許認可等を持っているのかな」と首をかしげる方さえいます。

 しかし、許認可等の承継に失敗すれば、「ヒト」「カネ」にも影響して、事業承継が大失敗となりかねません。

 このような経営者と後継ぎには、次のように注意を促しています。

  1. 許認可等の承継準備に失敗すれば、事業承継が予定通りに進まない可能性があり、結果として取引先を失うこともある。
  2. 許認可取得の前提条件・要件を知り、棚卸しすることで、事業承継の際も許可、認可、登録、免許が失効せず、外部への悪影響もなくなる。
  3. 許認可の継続要件を満たさないケースを事前に把握することで、失効しないように解決策を考えることができる。

 みなさんの事業も、何らかの「許認可等」を取得しているのではないでしょうか。

 飲食業、建設業、不動産業、運輸業、産業廃棄物収集運搬業、倉庫業、人材派遣業、製造業、個人医院、医療法人など、許認可等が必要な業種は多岐にわたります。

 開業当時は許認可等の体制を万全にするため、専門家へ相談している経営者がほとんどです。

 しかし、経営者と後継ぎはその後も以下の三つに留意する必要があります。

  • 許認可等のメンテナンス(維持管理保全)
  • 事業規模拡大に向けた許認可等のパワーアップ
  • 許認可等の世代交代

 許認可と事業承継を考える本シリーズでは、「許認可等の世代交代」がスムーズに進むように、10年先を見据えて今から準備すべきことを中心に、身近な例を挙げて取り上げます。トピックは以下の通りです。

 「許認可等」の種類、自社が保有する許認可等及びその仕組み(どうしてその許認可等が取得できているのかなどの要件)、法人と個人事業主との違い。

 許認可の承継準備を怠ると起こりうること、経営者の急死や従業員の突然の退職など、万が一の場合に許認可はどうなるのか。

  1. 計画段階
  2. 承継に着手する段階
  3. 事業承継の最中
  4. 承継後

 他社の実例を知り、自社の世代交代に生かす

 第1回は上記のうち「1.基礎知識」について解説します。

 必要な「許認可等」は事業の種類ごとに違います。それぞれの微妙な違いを知ることが必要です。

 「許認可等」と一口に言っても、取得のハードルが高いものから順に、主に許可、認可、認証、登録に大別されます(個別事案によって取得の難易度は異なります。本記事は一般的なケースについて言及します)。

 それぞれの違いをご存じでしょうか。

 デジタル大辞泉から用語の意味を引用しながら、行政書士として多数の許認可等の相談及び申請代理を手がけてきた経験をもとに、それぞれの違いを説明します。

 一般に禁止されている行為について、特定人に対しまたは特定の事件に関してその禁止を解除する行政行為のことをいう。法令により公共の福祉の観点からいったんは一般的に禁止している行為を、一定の場合に個別の申請に基づいて解除する行政行為のこと。許可をしてもらうことにより、それまで禁止していた事項をできるようになる。

 「許可」の例としては以下のものが挙げられます

  • 建設業許可
  • 飲食店営業許可
  • 労働者派遣事業許可
  • 運送事業経営許可
  • 宅建業免許

 つまり、許可を得ていなければ事業を禁止されるので、許可を得ずに事業を行うと罰則が課されます。なお「免許」とほぼ同義になります。

 たとえ要件が整っても行政庁の裁量、つまり監督官庁の考え方次第で、許可がもらえない場合があるのが特徴です。許認可等のなかでいちばん難易度が高いものといえます。

 許可は100%保証されているものではないため、筆者が相談を受けた場合、「要件が整っていたとしても確実に取れるわけではない」と事前に説明します。

 行政法学上は、行政行為のうち私人の契約、合同行為を補修して法律行為の効力要件とするものをいう。補充行為である。認可の申請があった場合、行政は、当事者が必要とする要件を満たしていると認められれば認可を行う。

 「認可」の例としては「医療法人設立認可」のようなものがあります。 

 認可の場合は、要件が整っていれば行政庁からOKが出て、その事業を行う権限がもらえるといえます。

 つまり、認可を得ることで法律上の行為を完成させるので、認可を得ていなくても罰則はないのが原則です。半面、認可なしにおこなった行為は無効となります。

 一定の行為または文書が正当な手続きや方式でなされた事実を、公の機関が証明することをいう。

 具体的には以下の例が挙げられます。

  • NPO法人設立認証
  • 定款認証

 つまり、手続きが形式にのっとっていることを確認し、その存在を認めることだけなので、その事業内容が合法なのかまでは言及しません。

 認証は認可と違って権限がもらえるわけではなく、存在に対してOKをもらうだけです。

 行政機関において一定の事項を多くの場合関係人の申請により、公募に記載することをいう。法定の規定に基づいてなされる登録は、必要事項を掲載した書類を行政機関に提出し、かつ行政機関がその内容を公簿に登録して初めて、関係人は事業をおこなえるようになる。

 「登録」については、以下の事業例が挙げられます。

  • 電気工事業登録
  • 医療機器製造業登録

 つまり、提出した書類が整ってさえいれば「こういう事業をしてもいい業者」ということが、行政庁の公簿へ登録されるだけとなります。

 前章で述べたように、事業に必要な「許認可等」は、事業の種類によって必要なものが違います(以降は、これらの種類を総括する場合に「許認可等」と呼びます)。

 経営者や後継ぎの皆様はまず、自社の事業でどの許認可等が必要なのかを確認し、さらに要件をチェックしましょう。

 自社がどうしてその許認可等を取得できたのか、そして許認可等を維持するには何をしなければならないかを理解するのです。

 ここからは、自社の許認可等について確認し、要件チェックを行うための手順について解説します。

 まずは自社の事業に必要な許認可等の種類を知り、その有効期限や書類の提出先(主務官公署)を確認することが大切です。

 以下、主な業種と許認可の種類、有効期限、主務官庁について表にまとめました(営む事業の詳細によって必要な許認可等は複数になる可能性があります)。

業種 許認可の種類 有効期限 許認可等をもらう先(主務官庁)
建設業その他工事業 一般建設業許可
特定建設業許可
電気工事業登録
5年 国土交通大臣または都道府県知事
不動産業 宅地建物取引業免許
マンション管理業登録
賃貸住宅管理業登録
5年 国土交通大臣または都道府県知事
製造業
販売業
食料品製造業許可 5年をくだらない期間 保健所長
酒類製造業免許 なし 税務署長
医薬品製造販売業許可 5年 厚生労働大臣または都道府県知事
医療機器製造販売業許可 5年 厚生労働大臣または都道府県知事
医療機器製造業登録 5年 厚生労働大臣
運送業

一般旅客自動車運送事業許可

なし

国土交通大臣

自家用有償旅客運送事業登録

2年(更新時2年または3年)

飲食業 飲食業許可
深夜酒類提供の届出
5年をくだらない期間 保健所長
古物商 古物商許可

なし

公安委員会
旅館業 旅館業許可

なし

都道府県知事
住宅宿泊管理業者登録 国土交通大臣
産業廃棄物収集運搬業 一般産業廃棄物収集運搬業許可 5年 都道府県知事または政令指定都市
職業紹介業 有料職業紹介事業許可 3年(2回目以降5年) 厚生労働大臣
労働者派遣業 労働者派遣事業 3年(2回目以降5年) 厚生労働大臣

 許認可等の種類によっては、国家資格や民間資格を持つ人が役員もしくは正規従業員にいなければならないケースが少なくありません。

 従って資格取得者の要件確認は必須になります。どんな資格を持つ人が必要か、役員でなければならないのか、資格者は正社員か非正規社員か、ほかの仕事と兼業でもいいのか、といった項目の確認が考えられます。

 要件を満たす人物がいなくなった場合、事業継続が難しくなる事態を招きかねません。

 例えば、建設業許可を取得するためには、経営業務の経験が5年以上ある人が役員もしくは役員に準ずる地位にいなければなりません。建設業許可の種類によっては建築士、1級土木施工管理技士などの国家資格を保有する人が、役員もしくは正規従業員にいなければならないのです。

 宅地建物取引業免許の取得でも、従業員5人のうち1人が宅地建物取引士でなければなりません。その宅地建物取引士は専任性が求められるため、ほかの仕事をしている場合は、専任性が否認されることもあります。

 飲食業では食品衛生管理者の資格を持つ人が、運送業関連の許認可では運行管理者資格を持つ人や実務経験のある人が必要です。

 許認可等を取得するのは会社であっても、経営陣や雇われる人個人に一定の要件が求められる場合があるのです。

 また、各種許認可等ごとに欠格要件が定められ、資格者や役員の中に一定の罪を犯した人がいる場合は不許可事由になることがあります。

 資格者や役員が認知症などで判断能力が著しく低下している場合も許可が取れないケースがあります。

 許可によっては、事業主体となる法人本店を市街化調整区域や農用地内に置いてはいけないという制限、本店内に営業に適する設備を完備するといった要件があります。事業を実施している場所が、このような要件を満たしているかどうかを確認することも必要です。

 許認可等を取るために保有資産や資本金の要件、株主の要件があるのかを確認することです。

 特定建設業許可など許認可等の種類によっては、資本金や純資産額の要件、過去数年の決算が赤字であってはいけないなど、決算内容の細かい部分まで要件を満たさなければならない場合があります。毎年、決算前のチェックが必要です。

 また、株主が会社か個人か、その支配関係について許認可の要件になっている場合があります。

 事業主体が法人か個人かによって許認可要件が変わってくるケースがあるため、取得している許認可ごとにチェックしておきましょう。法人でないと許可がとれない場合もあるので要注意です。

 今回は、許認可等の世代交代のために知っておくべき許認可等の基本知識を解説しました。意外とここまで意識をしていなかったという方が多いのではないでしょうか。

 経営者と後継ぎはまず、自社の許認可について知ることから始めましょう。