目次

  1. ニーズと満足度に乖離
  2. ミスマッチの実態は
  3. 評価基準は「口頭説明」がトップ
  4. 入社後に求める結果の言語化を

 コンサルティング会社・識学が2022年1月、全国の中小企業(従業員数5人以上300人未満)で直近3年間に自社の中途採用に関わった経営者や正社員に対し、インターネットで調査を行いました。

 各企業に中途採用の実施状況を尋ねると、19年は83.7%が実施し、コロナ禍の影響を受けた20年は78.7%、21年も79.7%で、少し数字を落としたものの依然として高いニーズがあることがわかりました。

 また、22年に中途採用を行う意向があるかを尋ねたところ、「行う予定」57.7%、「決まっていないが可能性はある」26.3%で、84%の企業が意欲を見せています。

 一方、中途採用を行っても、必ずしも満足がいく結果が得られていないという実態も見えてきました。

 「中途採用で入社した社員が期待したほどの成果をあげていないと感じたり、他の社員からそのような評判を聞いたりすることがあるか」という質問に、「ある」と答えた人が62.7%にのぼり、「ない」という回答(29.7%)の2倍強となりました。

 関連質問として「中途採用に関わった経験の中で、これまでに『こんなはずではなかった』と感じた経験がありますか」と尋ねると、75.7%が「ある」と回答しています。

 エピソードを具体的に聞くと、以下の回答がありました。

  • 面接では人柄が素晴らしいのに、入社してからは挨拶もできなかったり、コミュニケーションがとれない方で驚いた(35歳女性 /管理職(候補)を採用)
  • 面接時にはやる気で前のめりの姿勢を見せていたが、いざ仕事を始めると不満ばかりを口にしてまともに仕事をしていなかった(54歳男性 /一般社員を採用)
  • すぐに辞めたりあきらめない事をアピールしていたので採用したら、 すぐに辛いと言い出し即退職された(46歳男性 /一般社員を採用)
  • 大企業からの転職で期待したが、全く役に立たないことがあった(58歳男性 /一般社員を採用)
  • 経験豊富な職務経歴書の内容と実際の働きぶりがあまりにも違っていた。 仕事を一から教えなければならなかった(54歳男性 /管理職(候補)を採用)
  • 採用した人材の経歴に虚偽があった(40歳男性 /一般社員を採用)
  • 良さそうな転職話を聞いたようで 、採用投資を回収する前に辞められたこと(47歳男性 /管理職(候補)を採用)

 こうした採用のミスマッチを防ぐにはどうすればいいのでしょうか。採用担当者のスキルを上げるのが近道に見えますが、育成には多大なコストもかかるため、中小企業には現実的ではない場合もあります。

 中途採用の評価項目と評価基準について、選考や合否決定に関わる社員とどのように共有しているかを複数回答で尋ねると、「口頭で説明」(68.9%)が最も多く、「評価項目を記載したシートで共有」(40.3%)、「評価基準を記載したシートで共有」(19.8%)という回答を大きく上回りました。

 これについて、調査リポートでは「一次選考、二次選考と進む中で複数の社員が選考や合否決定に関わる場合、人によって評価基準が異なることも考えられます。評価項目と評価基準は明文化し、曖昧な表現を極力排除して社内共有することが望ましいです」などと指摘しています。

 リポートでは、入社後にどのような結果を求めるのかを明確にすることの重要性も指摘しています。

 中途採用に関してあらかじめ社内で設定している評価項目を複数回答で聞いたところ、「人柄・性質」は64.7%だった一方、「自社で出してほしい結果」は26.0%にとどまりました。

 数字で表現できる結果は認識がずれにくいため、リポートでは「どんな結果を出すために採用したいのかを言語化することから始めてみてはいかがでしょうか」と呼び掛けています。