目次

  1. リブランディングとは
  2. リブランディングを行う上でのポイント
    1. リブランディングすべきタイミングかよく検討する
    2. 中途半端にせず大胆に行う
    3. 見た目だけを変えない
  3. リブランディングの進め方
    1. 現在地を確認する
    2. どう思われたいのかを考える
    3. ギャップの要因を明確にする
    4. なるべく多面的にリブランド案を出す
    5. リブランディングをニュースリリースする
  4. リブランディングの成功事例
    1. ものづくり企業の例
    2. ハウスメーカーの例
  5. 内側から外側の順でリブランディングを

 リブランディングとは、顧客や社内、求職者など企業とのステークホルダーからの「見え方」や「思われ方」を大きく変えることです。

 企業の価値を高めていく活動であるブランディングという言葉に、「再び」を意味するリ(RE)が加わった言葉で、価値や見え方を再構成し、より一層無駄なく価値を高めていく重要な施策です。

 見え方を大きく変えるきっかけは、事業承継や事業内容の変化、時代の変化など様々ですが、企業が伝えたいイメージと、ステークホルダーが感じているイメージにギャップが生まれ、何かしらの違和感があったときにリブランディングを検討する企業が多いようです。

 特に今の時代は環境の変化が目まぐるしく、これまで言わずとも伝わっていたような想いが、受け取り手によって大きく異なってしまうことなどがあり、自社の価値を再度見つめ直し新たなブランドを築く必要がでてきています。

 さらに、中小企業は人材不足の解消や価格競争からの脱却が必要とされているため、リブランディングは一層重視されています。

リブランディングの定義と大まかな進め方
リブランディングの定義と大まかな進め方(デザイン:吉田咲雪)

 リブランディングで行う施策は通常のブランディングと同じで、ロゴやウェブサイトなどのビジュアル面の変更から、ミッションやビジョンなど経営理念の変更まで、ハード面ソフト面の両面で様々な施策を実施します。

 多岐にわたる取り組みであり、時間もそれなりに要するため、失敗しないように慎重に進める必要があるでしょう。実行する上でのポイントをご紹介します。

 リブランディングに取り組むとき、大事なのは、そもそもリブランディングが必要なのかをよく考え、適切なタイミングで実行することです。

 明確な理由がないときや行うべきではないタイミングでリブランディングに取り組むと、既存顧客が減ってしまったり、これまで取れていた人材が獲得できなかったりとマイナス効果につながることもあります。

 リブランディングは、企業側がステークホルダーに対して「このように感じてほしい」と、ステークホルダーが企業に対して「こう感じている」にギャップが生まれた際に検討をすすめるべきです。

 以下、ギャップが生まれやすい具体例をご紹介します。

具体例①経営者の世代交代が行われたとき

 親世代など前の世代から引き継いだ会社にて、今の時代に適した事業を展開したい、若い世代の求職者を増やしたいと考える経営者は多いでしょう。

 しかし、そうした会社は、前の世代の経営スタイルや事業内容などの影響で、世間から「昭和の古臭い企業」というイメージを持たれていることがしばしばあります。

 リブランディングを実施し、先進的でチャレンジをしている今風な企業というイメージに再構成できれば、そうしたギャップを埋めることができます。

具体例②創業当初の事業と現在の事業が大きく変わるとき

 時代の変化により、創業当初の事業と現在の事業が大きく変わるときも、ギャップが生じている可能性があるため、リブランディングが有効な施策になります。

 とくに創業当初の事業で大きく成長してきた企業は、世間からのイメージが創業当初のままであることが少なくありません。

 そのままの状態で現在の事業を続けてしまうと、旧来の顧客が離れやすくなってしまうため、アイデンティティである旧イメージの良いところを上手く活用しながら、リブランディングしていくことが重要です。

具体例③事業の特徴に対するイメージが乖離しているとわかったとき

 顧客アンケートなどを実施し、事業に対して想定していたイメージと顧客が実際に持っているイメージにギャップが生じているとわかったときも、リブランディングを行うべきタイミングと言えます。

 たとえば、ある事業の特徴のひとつに「価格が安い」というものがあり、「お手頃価格でコスパの良いブランド」というイメージを持たれたいと考えていたとしましょう。

 そこで顧客からの声を集めたところ、「安かろう悪かろうの激安ブランド」というイメージを持たれていたことに気づいたとします。

 こうしたギャップが生じていると、イメージから想定していた顧客像も実際と異なりやすくなります。事業を展開する上で新たに考えた施策が、顧客に刺さりにくくなる可能性もあるでしょう。

 そのため、「値段は比較的安いし、サービスもしっかりしている」というイメージへの転換などをするリブランディングが必要です。

 リブランディングに取り組むことが決まったときは、大胆に様々な視点でブランド再構築をすることが大切です。

 リブランディングとは「見え方」や「思われ方」を大きく変えることですので、ロゴやWEBサイトなどのデザイン面はもちろん、社名そのものやリブランディングと絡めた新規事業など新たな取組もセットで行うと、よりリブランディングがうまくいきます。

 逆に、こそっと社名だけ変更する、こそっとWEBサイトだけリニューアルするだけでは、リブランディングの目的達成ができない場合がありますので、費用感とのバランスを確認しながらも大胆な施策が重要です。

 これはリブランディングだけでなく通常のブランディングでも言えることですが、デザイン面などの見た目だけを変えるだけではリブランディングの本質的な目的は達成できません。

 デザインの力はとても重要ですが、デザインの力のみでリブランディングをした場合、そのメッキは簡単に剥がれてしまいます。

 なぜリブランディングが必要だったのかをしっかりと言語化し、見た目と同時にその中身である行動指針や新たな方針に則った事業なども再構築することが必要です。

 リブランディングで、より事業が加速できるよう、リブランディングの進め方を紹介します。

 まずは現在、自社のブランドがどのポジションにいるのか現在地を把握することです。

 「きっと世間はこう思っている」と決めつけず、現状への違和感や課題を感じたときには、ありとあらゆるステークホルダーからどう思われているのかを調査します。周りの人に直接聞いてみること、社内アンケート、顧客アンケートを取ることなどでリアルな声を集めます。

 必要に応じて調査会社などを活用するのも良いでしょう。

 現在地を確認したら、次に「今後はどう思われたいのか」、これからのブランドをつくっていくメンバーと理想のイメージを考えます。

 また、「こう思われたい」を考えるのと同時に、「誰に」どう思われたいのかも検討が必要です。求職者であればどんな求職者なのか、顧客であればどのような層なのか、対象となる相手を決めます。

 さらに、相手だけではなく、自社は社会においてどんな存在意義があり、どのような社会にしていきたいのかなどを考え、新たなパーパスやミッションなどの理念を再定義しましょう。

 現状のイメージと、誰にどう思われたいのかを考えると、自ずと「高級と思われたいのに、カジュアルだと思われている」「先進的な未来ある会社と思われたいのに、古臭い昭和の会社だと思われている」などのギャップが見えてきます。

 ギャップがはっきりしたら、具体的になぜそこにギャップが生まれるのかをディスカッションします。

 社名なのかロゴなのか、ウェブサイトなのか、はたまた事業内容なのか、広告なのか、社員の態度なのか…。ありとあらゆる要素が考えられますし、一つに絞らずに思いつくだけリストアップします。

 なぜギャップが生まれているのか、どこにギャップが生まれているのかを考えるためにはなるべく多くの人にヒアリングすることと、すべての声を真に受けないということが大事です。

 調査の中では様々な意見を目にすることが多くなりますが、全てに答えようとするとぶれてしまい、誰にも伝わらないブランディングになってしまうリスクがあります。複数人が指摘したギャップやイメージに目を向けて、施策を検討するのが良いでしょう。

 理想と現実のギャップが分かれば、あとはそのギャップを埋めていく方法を考え、実行していくことです。

 デザイン面であればロゴやウェブサイト、名刺などに反映させていくことです。

 看板から営業車まですべてのデザイン物を一度に変えると莫大なコストが掛かってしまう場合もありますが、なるべく1年以内にはすべて足並みを揃えるようにしましょう。

 また、デザイン面だけでなく新規事業や働き方、理念やビジョンなども合わせて再検討し、対外的にも対内的にも1つの円を描くような一貫したブランディング施策を打ち出すことが重要です。

 やるべき施策が決まったあとは、ニュースリリースする日付を決めてお披露目の準備をします。

 社名変更が伴う場合などは、取引先などの関係者への形式的なお知らせも必要になってきますが、ここもリブランディングの良い機会と捉え、なぜ新しいブランドになったのか、新しいブランドではどのような理念やコンセプトがあるのかを伝えましょう。

 社内への伝達も重要です。説明がないとビジュアル面だけのリニューアルと捉えてしまう社員も少なくありません。キックオフの場を設け、リブランディングの意図や過程、具体的な施策までを共有しましょう。

 最後に、報道関係へのプレスリリースも忘れずに行いましょう。特に歴史ある企業のリブランディングの場合はニュース性も高く、もしメディアへの掲載が決まれば非常にメリットのある宣伝となります。

 リブランディングの成功事例を紹介します。

 とある工場を営むものづくり会社では、会社の売上成績はとても良かったものの深刻な人材不足に悩まされていました。世界への展開も視野に入れていたのですが、優秀な人材がなかなか集まりません。

 後継者である次期社長との打ち合わせや市場へのリサーチの結果、「ビジュアル面の古さからは到底世界への展開があるようには見えない」「企業としての成績の良さや想いなどの部分を知れる場所がない」という明確な理由が判明しました。

 そこで、このものづくり会社では、それらの課題を一つずつディスカッションし、社名変更という大きなきっかけを機に、経営理念からビジュアルイメージまでを一新しました。

 具体的には以下です。

  • 社名が古い→グローバル展開が伝わるカタカナ社名に変更
  • ロゴもなく会社のイメージがつかない→業界のイメージに囚われないロゴデザインを制作
  • 未来あるビジョンがない→社会の中での存在意義の明確化と中期ビジョン・長期ビジョンの策定
  • ウェブサイトがない→ビジョンを大きく掲げたウェブサイトの制作。デザインも現代風に

 もともと企業としての成績は良い上に、海外展開を視野に入れたものづくり企業という独自性の高いブランディングを行ったため、企業説明会でのブース集客がこれまでの倍になったとのことです。

 あるハウスメーカーでは価格の安さを売りに販売を重ね、大きな実績をつくってきました。

 しかし、あるとき口コミや憶測などから「安くてクオリティも低い」というイメージが強くなってしまい、安いけれどすぐに壊れる家、安いけれど工事が雑な家といったイメージがついてしまっていることが判明。

 また、いざリブランディングを検討してみると、商品のデザインや広告宣伝などのビジュアルだけに原因があるのではなく、顧客とのコミュニケーション不足が悪い口コミを生み、今のような自体になっているということがわかってきました。

 そこで新商品開発をきっかけに、ビジュアルデザインの刷新と同時に、顧客のアフターフォロー(CS)に力を入れるという方針でリブランディングを開始しました。

 今では、「安い家」から、コスパが良い家というブランドイメージを与え非常に良い成績を収めています。

 リブランディングが、見た目の改善施策だけではなく、顧客体験や想いなどソフト面でも施策が必要であったという事例です。

 リブランディングの必要性を感じているときは、見た目のリニューアルによる見られ方の変化を中心に、施策を考えることが多くなります。

 しかし、通常のブランディング同様、デザインなど見せ方の前に、誰にとってどんなブランドで在りたいのかというような在り方を言語化し進めていくことが重要です。

 より意味のあるリブランディングになるよう、方向性などのソフト面から考えてデザイン面へという順番を忘れずに取り組むとよいでしょう。