目次

  1. 人材開発支援助成金とは
  2. 2022年4月からの見直しは3コース
  3. 共通の見直しのポイント
    1. 訓練施設の要件の変更
    2. 訓練講師の要件の変更
  4. 特定訓練コースの見直し
    1. OJTの助成額を定額制へ
    2. 対象訓練の統廃合
    3. 「若年人材育成訓練」の対象労働者の変更
  5. 特別育成訓練コース
    1. OJTの助成額を定額制へ
    2. 助成対象訓練の変更
    3. 計画届提出時の書類の変更
  6. 過去の改正の概要
  7. 今後の見直しの方向性

 製品やサービスの質を維持・向上させたい、生産性を上げたい、事業拡大して新たな分野に進出したいと考えたとき、将来にわたって活躍できる人材を育てるために「職務に必要な能力とは何か」「いつまでにどのレベルに達してほしいか」などの計画的な人材育成が必要になります。

 厚生労働省によると、人材開発支援助成金とは、事業内の職業能力開発計画を立て、計画に沿って従業員に職業訓練を実施する事業主などを支援する制度です。どんな従業員に向けての訓練かによって7つのコースがあります。

 人材開発支援助成金は、制度の見直しも多いため、申請前には自社の取り組みが対象になっているか、厚労省の公式サイト「人材開発支援助成金」で確認してください。

 2022年度から見直しとなるのは、次の3つのコースです。

  • 特定訓練コース……正規雇用労働者を対象とした生産性向上に資する訓練など
  • 一般訓練コース……正規雇用労働者を対象とした訓練
  • 特別育成訓練コース……非正規雇用労働者を対象とした訓練

 まず、3つのコースに共通する見直しポイントがあります。

 対象となる訓練施設は次の通りです。

  1. 公共職業能力開発施設など
  2. 事業主・事業主団体の設置する施設
  3. 学校教育法による大学等
  4. 各種学校等(専修学校など)

 今回の見直しにより、対象となる訓練施設から「事業主・事業主団体の設置する施設」の一部が除外されます。除外となるのは、次の通りです。

  • 申請事業主(取締役含む)の3親等以内の親族が設置する施設
  • 申請事業主の取締役・雇用する労働者が設置する施設
  • グループ事業主が設置する施設で、不特定の者を対象とせずに訓練を実施する施設
  • 申請事業主が設置する別法人の施設

 講師を招いて事業内で訓練する場合に、講師は次のいずれかに当てはまる必要があります。

  • 公共職業能力開発施設や各種学校等の施設に所属する指導員等
  • 職業訓練指導員免許を有する者(訓練の内容に直接関係する職種である)
  • 1級の技能検定に合格した者( 訓練の内容に直接関係する職種である)
  • 訓練分野の指導員・講師経験が3年以上の者または実務経験が10年以上

 また、新たに訓練計画提出時に「OFF-JT部外講師要件確認書」の提出が必要になります。

 次にコースごとの見直しのポイントを整理します。

 特定訓練コースとは、正社員に対して、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、若年者への訓練、労働生産性向上に資する訓練など、10時間以上の訓練を実施したときに、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するコースです。

 2022年4月からの見直しで次の3つの変更があります。

  1. OJTの助成額を定額制へ
  2. 対象訓練の統廃合
  3. 「若年人材育成訓練」の対象労働者の変更

 OJTを実施した場合の助成額が定額制に変わります。

見直し前
OJT1時間あたり
見直し後
1訓練あたり
特定訓練コース
(認定実習併用職業訓練)
665円 20万円
特別育成訓練コース
(有期実習型訓練)
760円 10万円

 OJT訓練指導者が1日に指導できる受講者は3人までです。

見直し前 見直し後
労働生産性向上訓練
若年人材育成訓練
熟練技能育成・承継訓練
変更なし
グローバル人材育成訓練 廃止
特定分野認定実習併用訓練(建設業、製造業、情報通信業) 特定分野認定実習併用訓練に統廃合。対象となる労働者を「雇い入れ日または転換日から訓練開始日までが2週間以内」から「3カ月以内」に変更
認定実習併用職業訓練

 このほか、従業員の主体的なキャリア形成を定期的で促進・支援する総合的なセルフ・キャリアドック制度導入の上乗せ措置(+15%)を廃止し、定期的なキャリアコンサルティング制度の規定を必須化することになりました。

 若年人材育成訓練(35歳未満)の対象労働者の要件が次のように変わります。

見直し前 雇用契約締結後5年を経過していない
労働者
見直し後 事業所の雇用保険被保険者となった日
から5年を経過していない労働者

 非正規雇用(被保険者以外)で一定年数雇用された人を正社員化して訓練を実施した場合も、新たに助成対象となります。

 特別育成訓練コースとは、有期契約労働者などの人材育成に取り組んだ場合に助成するコースです。

  1. OJTの助成額を定額制へ
  2. 助成対象訓練の変更
  3. 計画届提出時の書類の変更

 OJTの助成額の定額制については、前段の特定訓練コースと同じです。

 対象訓練のうち接遇・マナー講習など「職業または職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となる訓練」の取り扱いが変更となります。

見直し前 職務に関連した内容に限り
制限なく実施可能
見直し後 訓練時間数に占める割合が半分未満
であることが必要

 まず、計画届提出時に新たに2つの書類が必要になります。

  • 訓練別対象者一覧
  • 訓練の実施内容などを確認する書類(実施主体の概要、目的、訓練日ごとのカリキュラム、実施日時、場所が分かるもの)

 有期実習型訓練に係る訓練計画予定表は廃止されます。有期実習型訓練に係る訓練カリキュラムは新たな様式での提出が必要になります。

 2022年より前にも定期的に制度は改正されています。2021年12月21日のおもな改正内容は次の通りです。

  • 特定訓練コースの労働生産性向上訓練に、ITSS(ITスキル標準)レベル2となる訓練(実践的情報通信技術資格)を位置づけ
  • 特別育成訓練コースの経費助成限度額を正規雇用労働者を対象とする訓練と同じ水準に引き上げ
  • 特別育成訓練コースの経費助成に生産性要件を設定するとともに、正規雇用労働者等への転換等の実施の有無による経費助成率に差異

 それより前の過去の改正は厚労省の公式サイトで一覧できます。

 厚労省は2022年1月までさらなる改正に向けて提案を募集しました。今後、応募があったを踏まえてメニュー化した訓練を高率助成の対象とするなどの見直しを行うことを検討しています。