シフト勤務制度を始めるには?手順や届出、シフト管理システムを紹介
柔軟な働き方が実現できるということで、定時勤務のみだった会社がシフト勤務を導入するケースが増加しています。導入には就業規則の改定が必要ですが、「労働時間はシフトによる」のみの記載では作成義務を果たしたことになりません。導入手順を解説したのち、シフト管理システム3つを紹介します。
柔軟な働き方が実現できるということで、定時勤務のみだった会社がシフト勤務を導入するケースが増加しています。導入には就業規則の改定が必要ですが、「労働時間はシフトによる」のみの記載では作成義務を果たしたことになりません。導入手順を解説したのち、シフト管理システム3つを紹介します。
目次
シフト勤務とは、基本の始業終業時刻を定めつつ、従業員からの申請や業務内容により、会社が勤務時間をずらすことができる勤務制度です。
たとえば、基本の始業終業時刻と、早番遅番シフトを次のように定めたとします。
そして日ごとのシフト希望を従業員から募り、会社がシフト配置していきます。1時間程度の勤務時間の繰上げ繰下げの申請を受け付けるケースもあります。
従業員は柔軟な働き方ができるメリットがあり、会社側は従業員のプライベートを重んじつつ、必要な業務・時間にシフトを充てることにより効率的な事業の運営ができるメリットがあります。
「申請により勤務時間をずらす」「柔軟な働き方」ということで、変形労働時間制の1つであるフレックスタイム制と混同されることがありますが、次のような違いがあります。
シフト制 | フレックスタイム制 | |
---|---|---|
始業終業時刻の決定 | 会社 | 従業員 |
時間外労働の判定 | 1日8時間又は週40時間を超えた分 | 清算期間(1か月~3か月)における法定労働時間の総枠を超えた分 |
シフト勤務で雇用する場合、または現在定時で勤務している従業員をシフト勤務とする場合の手順は次の5ステップとなります。
手順ごとの詳細を解説します。
従業員との労働契約締結に際し、会社は労働契約の期間や就業場所などの労働条件を明示します。
明示すべき労働条件には、始業終業時刻や休日も含まれています。シフト勤務の場合でも、始業終業時刻・休日の部分を単に「シフトによる」の記載では足りません。
労働条件通知書にはそれぞれ次のような記載をしましょう。
新規に雇用する場合で、労働契約締結時点でシフトが決定しているときは、確定しているシフト表もあわせて交付しましょう。
従業員を定時勤務からシフト勤務に変更させる場合は、労働契約内容の変更にあたります。労使対等の立場といった労働契約の基本原則に基づき、会社側が一方的に強いることのないよう、対象者と話し合い合意することが必要です。
ここで従業員との合意形成にしこりが残ると、「思っていたよりシフトが少ない/多い」といったトラブルになりやすいです。
トラブルを防ぐためにも、シフト勤務の労働条件については事前に対象労働者とよく話し合い、定めた労働条件を雇用契約書として作成し、両者の署名・捺印をしたうえで残すと良いでしょう。
就業規則もシフト勤務の労働条件に沿って改定します。同一の会社内で複数の勤務態様がある場合は、その勤務態様ごとに始業終業時刻などを規定しなければなりません。
シフト勤務の場合は、「シフトによる」や「個別の労働契約による」といった記載のみでは就業規則の作成義務を果たしたことになりません。
就業規則には、基本となる始業終業時刻や休日を記載したうえで、「具体的にはシフトによる」や「具体的には個別の労働契約で定める」とします。
労働条件のほか、次のような事項を就業規則に定めておくと、シフト勤務対象者へ一律にルールを設けることもできます。
就業規則を改定するときは、従業員代表者の意見書を添付したうえで労働基準監督署に提出します。
従業員代表の決定方法は、挙手、選挙、話し合いなど様々です。管理監督者がなることや、会社が一方的に定めることは認められていません。
意見書の様式は特に定められていませんが、労働局のサイトで様式を公開しています。
就業規則に対し意見が無かった場合は「特にありません」と記載します。
次に就業規則を、会社所在地を管轄する労働基準監督署へ提出します。提出するものは、下記の3点です。
就業規則の改定部分が少なければ新旧対照表を作り、これに代えることも可能です。就業規則変更届は、意見書と同様に様式の定めはありません。労働局のひな型を使っても良いと思います。
書類が2部ずつあるのは受領印のついた控えをもらうためです。就業規則の提出は郵送も可能ですが、その場合は返送用の封筒・切手などを忘れずに同封しましょう。
就業規則の提出は作成や改定があった際に「遅滞なく」とされています。もちろん改定就業規則の施行日前の提出でも問題ありません。
重要なのが改定就業規則の周知です。周知させてはじめて改定就業規則が効力をあらわします。周知は口頭ではなく、見やすい場所への掲示やデジタルデータとしていつでも閲覧できる状態にすることなどが求められます。
シフト作成や通知のルールは、就業規則や個別の労働条件通知書の内容によります。シフトの決定権は会社にありますが、就業規則といったルールに基づき、従業員の希望や事情を考慮しながら作成することが必要です。
また、決定したシフトはなるべく早めに従業員へ通知することが好ましいです。1か月単位の変形労働時間制では、対象期間の始まる直前の労働日までに通知することとなっています。
1週間や1か月の一定期間のシフトを定めたら、その期間が始まる直前の労働日までには通知するようにしましょう。
シフト勤務の場合でも、時間外労働や休憩時間は定時勤務の従業員と同じように考えなければなりません。年次有給休暇についても、所定労働日数が少なかったとしたら、その日数に応じた付与が必要です。
手作業でシフト作成をしていると、日ごと・時間帯別の人員配置、休日の設定、従業員からの申請・希望を踏まえつつ、上記の労働時間や有給の管理もしなければならず、作成担当者の負担は大きいです。
そういったときは、従業員からの申請と設定された条件を基に、自動でシフトを作成するシフト管理システムが便利です。
シフト管理システムは多々ありますが、会社の業種によって適したものは様々です。下記に一般的な選び方のポイントを挙げます。
次に、それぞれ特徴ある強みをもったシステムを3つ紹介します。
詳細な勤務条件設定が強みのシステムです。従業員ごとの休日日数はもちろん、曜日を考慮した勤務・休日や、週・月の総労働時間設定も可能です。無料トライアル期間も2カ月と長めなので、じっくり試してから利用の判断ができます。
システム名 | 勤務シフト作成お助けマンDay |
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提供会社 | 鉄道情報システム |
特徴 | ・交代制勤務に特化 ・勤務条件の細かい設定が可能 ・画面共有問い合わせなどサポートが充実 |
利用時の注意点 | 従業員のシフト希望入力がスマホのみなので、スマホを持っていない従業員分は作成者が入力する |
費用(税抜) | 初期費用20万円 1~50名:月額15,000円(スマホ利用オプション含む) |
おすすめの企業 | ・24時間稼働の企業 ・ITサービス(システム保守) |
公式URL | https://www.otasukeman.jp/ |
シフト管理以外の機能も充実したカスタマイズ性に優れたシステムです。給与計算もジョブカン給与計算、freee、MFクラウド、弥生給与など多くのシステムと連携しています。
システム名 | ジョブカン勤怠管理 |
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提供会社 | DONUTS |
特徴 | ・予実管理から給与ソフト連携まで可能 ・LINE上でシフト確認 ・画面上の言語が6外国語から設定 |
利用時の注意点 | 月額最低利用料金(2,000円(税抜))あり |
費用(税抜) | 月額400円/人(プラン3) |
おすすめの企業 | ・他の労務管理システム導入を検討している企業 ・医療機関 |
公式URL | https://jobcan.ne.jp/ |
LINE上でのシフト回収機能が優れたシステムです。週の労働時間に定めがある外国人留学生にも対応しており、アルバイトやパートタイマーが多く在籍する会社におすすめです。
システム名 | らくしふ |
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提供会社 | クロスビット |
特徴 | ・LINEでシフト希望回収 ・外国人留学生の労働時間を考慮 ・複数事業所間の人員リソース共有 |
利用時の注意点 | LINE上でシステムアカウントと友達になる必要がある |
費用 | 要問い合わせ |
おすすめの企業 | ・アルバイト・パートタイマーが多く在籍する多店舗企業 ・飲食 |
公式URL | https://rakushifu.jp/ |
シフト勤務導入の肝となる部分は「シフト勤務の労働条件を定める」ところです。ここは時間に余裕をもって取り組みましょう。
労働条件の定めと合意形成が上手くできれば、後の導入手順はそう難しいことはないと思います。
シフト勤務導入後は、シフト作成者の負担具合を注視してください。シフト作成のために時間外労働が発生しているようなら、システム利用を検討した方がよいでしょう。
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