20年前の2002年8月5日、日本マクドナルドが、最安値となる59円(税別)でハンバーガーを販売しました。

「59円バーガー」の販売が始まり、店の出入り口に掲げられた広告=2002年8月5日、東京都豊島区、朝日新聞社

その翌日付の朝日新聞では、「安さどこまで!? 59円バーガー登場 マックが新価格」との見出しとともに、こう伝えています。

ハンバーガー業界最大手の日本マクドナルドは5日、主力商品の価格について、ハンバーガー80円を59円、チーズバーガー120円を79円、フランクバーガー150円を75円に値下げするなどの価格改定を全国約3900店舗でスタートさせた。

2002年8月6日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

この値下げの背景には、牛海綿状脳症(BSE)の影響で消費者の「牛肉離れ」が起き、低迷していた売上高を販売量の増加で底上げする狙いがありました。

BSEとは、牛の病気の1つ。

厚生労働省によると、BSEプリオンと呼ばれる病原体に牛が感染した場合、牛の脳の組織がスポンジ状になり、異常行動、運動失調などを示し、死亡するとされています。

このBSEに感染した牛の脳などを原料としたエサがほかの牛に与えられたことが原因で、イギリスなどを中心に牛へのBSEの感染が広がりました。

厚労省によると、日本でも2001年9月以降、2009年1月までの間に36頭の感染牛が発見されました。

対策がとられ、日本では2003年以降に生まれた牛からは確認されていないといいます。

日本マクドナルドが安全性をアピールするために公開したミートパティの生産工場=2001年11月、千葉県松尾町、朝日新聞社

当時の日本マクドナルドの値下げは、デフレ経済の動向にも影響を与えるのではないかとの見方から、注目を集めました。

この「59円ハンバーガー」の効果はどれほどだったのでしょうか。

2003年1月9日付の朝日新聞記事では、厳しい状況がわかります。

2002年2月、「いつまでもデフレではない」(藤田田会長)との判断から2年間続けてきた平日半額セールを打ち切り、ハンバーガーを65円から80円に「値上げ」した。しかしその途端、客数、売上高(いずれも既存店ベース)ともに前年比2割近く減った。

8月に59円へ再値下げ。客数の下落には歯止めがかかったが、今度は値下げが客単価を直撃し、8月以降、毎月の売上高(同)は、前年比4~11%減が続いている。

2003年1月9日付の朝日新聞朝刊(東京本社版)

その後、日本マクドナルドは2003年7月に「59円ハンバーガー」を80円に値上げ。

客単価が回復し、売上高(既存店ベース)もプラスになったといいます。

「59円ハンバーガー」の80円への値上げについて報じる2003年6月10日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

安売り戦略の象徴とされたこの「59円ハンバーガー」は、商品やサービスの適正な価格とは何かを考えるうえで、ヒントになるのではないでしょうか。

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年8月5日に公開した記事を転載しました)