【1月20日は何の日】47年前、大和運輸(現ヤマト運輸)が宅急便を開始
「10年前にこんなことが…」「あのサービスは20年前から?」。ビジネスシーンの会話の“タネ”になるような、過去に社会を賑わせた話題を不定期で紹介します。
「10年前にこんなことが…」「あのサービスは20年前から?」。ビジネスシーンの会話の“タネ”になるような、過去に社会を賑わせた話題を不定期で紹介します。
47年前の1976年1月20日、大和運輸(現在のヤマト運輸)が宅急便を始めました。
1982年12月10日付朝日新聞夕刊(東京本社版)によると、宅急便の登場前、トラック運送の主な仕事は、企業からの大口荷物を運ぶことでした。
家庭の小口荷物を1つずつ集めて配るのは効率が悪いとして民間に敬遠され、いずれも公共機関である郵便の小包(6kg以下)と国鉄の小荷物(30kg以下)に任されていたそうです。
大和運輸は1976年に「一軒一軒のお宅に、急いで配達する」という意味を込めて宅急便を開始。
記事によると、「戦前から、三越を中心にデパートの配送の仕事を手がけ、各戸配りには慣れていた」そうです。
これをきっかけに、日本通運のペリカン便、西濃運輸のカンガルー宅配便など、トラックで小口荷物を配達する「宅配便」が全国に広がりました。
宅急便のシンボルマークであるクロネコはどのようにして生まれたのでしょうか。
ヤマトホールディングスの公式サイトなどによると、創業者で初代社長の小倉康臣氏が1950年代に海外視察でアメリカを訪れた際、運送会社アライド・バン・ラインズ社のトラックに描かれたネコの親子のマークを見つけたことがきっかけだといいます。
親ネコが子ネコを口にくわえて優しく運ぶ姿に、小倉氏は「お客様の荷物を丁寧に取り扱う気持ちが表れている」と強く共感。
1957年にアライド社と業務提携を結んだ際、このマークを使う許可を得て、クロネコの親子がトラックに描かれるようになりました。
1980年代に投入したテレビCMにより、「クロネコヤマトの宅急便」のうたい文句は全国に浸透。
同時に扱い個数も右肩上がりに伸びました。
前述の記事によると、1981年度の取扱数はヤマトだけで5000万個に達し、国鉄の手小荷物(3300万個)をしのぎ、郵便小包(1億5000万個)を猛追しました。
その後もヤマトは斬新なアイデアを次々打ち出し、宅配便業界トップの地位を固めていきます。
1983年の「スキー宅急便」、1984年の「ゴルフ宅急便」に続き、1987年には「クール宅急便」をスタート。
食品を冷蔵(5度)、氷温(0度)、冷凍(マイナス18度)の3種類の温度帯に分けて運ぶ、全国初のサービスでした。
1991年には四国と福井県に進出し、念願だった全国ネットが完成。
1999年には台湾でセブン-イレブンを展開する統一集団と現地会社を設立し、初めて「宅急便」の海外進出を果たしました。
私たちの生活インフラとなった宅急便ですが、近年は影の部分も目立つようになりました。
ドライバーの長時間労働が深刻化したのです。
2017年6月19日朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、2016年度にヤマトが扱った荷物量は約19億個。
10年前と比べ6割も増えました。
アマゾンなどネット通販の拡大が大きな要因です。
同時に、単身・共働き世帯の増加により、再配達や夜間の配達も増えました。
ドライバー不足は解消されないままで、社内調査で約190億円分の残業代未払いが判明しました。
これを受け、ヤマト運輸は手厚いサービスの一部や働き方の見直しを表明。
2017年には配達の時間指定「正午〜午後2時」をなくし、個人向け配送料金を27年ぶりに値上げしました。
直近では、コロナ下の巣ごもり需要で、宅配便の取扱量はさらに増えています。
しかし、人手不足による配送の大きな遅れは出ていないそうです。
なぜでしょうか。
2021年3月31日付朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、ヤマトを始めとした大手各社が、人手を補う投資を進めていることが一因のようです。
ヤマトは2020〜2023年度の4年間で、デジタル分野に1000億円を投じる方針。
特にデータ分析に注力し、トラックや荷物の動向を蓄積しているそうです。
人工知能を活用し、いつ、どこで、どのくらい人手が必要かといった業務量の予測精度を高めています。
スマホでほしい物を注文すれば、当日や翌日に家に届く便利な時代になりました。
私たちの快適な暮らしは、ヤマトを始めとする宅配各社に支えられていることを忘れずにいたいですね。
(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2022年1月20日に公開した記事を転載しました)
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