47年前の1975年12月21日、第1回コミックマーケットが開かれました。

コミックマーケットとはマンガ同人誌の即売会で、「コミケ」の略称で親しまれています。

コミケ公式サイトによると、第1回は中心スタッフ4名によって企画され、東京・虎ノ門の日本消防会館会議室にて開催。

32サークル、推定700人が参加したそうです。

 

その後、中学生から20代にかけての若者の支持を背景に、徐々に規模が拡大しました。

年に複数回開かれ、1987年8月の第32回には5万人以上が参加。

市民グループが主催する屋内イベントとしては日本最大、と言われるようになりました。

コミックマーケットの盛況ぶりについて報じる1987年9月22日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

1987年9月22日付朝日新聞朝刊によると、この前月に東京・平和島の東京流通センターで開かれたコミケには、全国から4600サークルが参加。

申し込みは約6400サークルあったものの、会場面積が足りず抽選で絞り込んだそうです。

「入場券代わりのカタログ(400円)3万3000部は連日売り切れ。入場を待つ人は広い敷地にも入り切れず、会場内は身動きもできないほど」と熱気を伝えています。

 

出品作の大多数は既存マンガのパロディーもの。

ただ、就職活動体験記や雑誌グラビア目次など、マンガ以外の多彩な出品も見られたようです。

 

コミケの盛況によって、マンガは読むだけのものではなくなりました。

一般人がマンガを描いて出版することが容易になり、マンガ本の自費出版ブームが到来したのです。

1989年6月20日付朝日新聞朝刊の記事で、マンガ評論家の米沢嘉博さんは「プロになっている人のたちの70、80%は、いまやコミックマーケットを卒業しているんです」と指摘。

マンガ文化を語る上で、コミケは不可欠な存在になっていきました。

2015年末、アニメファンでにぎわうコミックマーケットの様子=2015年12月、東京ビッグサイト、朝日新聞社

コミケの貢献もあって大きく発展した日本のマンガ文化ですが、新型コロナウイルスの影響で転換点に立たされています。

2020年5月26日付朝日新聞夕刊によると、外出自粛が求められる中、家で楽しめるマンガを読む人は増加。

出版科学研究所の調べで、2020年3月のコミックスの推定販売金額は前年同月比で約19%伸びました。

一方で、雑誌や単行本は販売延期が相次ぎました。

編集や印刷、流通などをコロナ前と同じペースで進めることが難しくなったためです。

コロナ時代のマンガ界の状況を伝える2020年5月26日付朝日新聞夕刊(大阪本社版)

大人数が一堂に会するコミケは、感染リスク回避のため、2020年5月の開催が中止になりました。

代わりに「エアコミケ」が開かれ、同人誌の情報交換やコスプレ写真の投稿、同人誌の販売などがインターネット上で行われました。

コミケ準備会によると、ツイッター上の「#エアコミケ」のツイート・リツイート数は5日間で43万超。

盛り上がりを見せ、オンラインに可能性を見出しました。

2019年夏のコミケの様子。ポスターで告知していた2020年5月の開催は、コロナ禍により中止となった=2019年8月、東京ビッグサイト、朝日新聞社

その後、2020年12月と2021年5月もリアル開催は見送られましたが、2021年12月に東京ビッグサイトで2年ぶりに開かれました。

2022年8月にも2日間開かれ、夏としては3年ぶりの開催となりました。

いずれも参加者数を制限しての開催でしたが、マンガ文化のリアルな場は徐々に戻りつつあります。

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年12月21日に公開した記事を一部修正して転載しました)