64年前の1958年10月18日、フラフープが東京都内のデパートで発売されました。

フラフープが東京都内のデパートで発売されたと報じる1958年10月19日付の朝日新聞朝刊(東京本社版)

フラフープは1957年にオーストラリアで木製のものが考案され、翌年アメリカでプラスチック製に改良されて流行しました。

ヨーロッパでも人気が出て、その後、日本にも上陸しました。

日本での発売を報じた1958年10月19日付朝日新聞朝刊(東京本社版)では、フラフープを「直径90センチ、硬質ポリエチレン製の輪を、床に落ちないよう身体でふってクルクル回すというもの」と説明しています。

 

フラフープは一大ブームを巻き起こします。

1958年11月10日付朝日新聞夕刊(東京本社版)によると、東京・池袋のデパートでは直近の数日間、開店前に行列するフラフープの購入希望者に整理券を発行しましたが、1日の販売分である400個の整理券が1時間足らずでなくなったそうです。

「なかには戦時中の配給米取りにならんだ一昔前を思い出して話合っている人もいた」との一文もあります。

 

フラフープは男女問わず子どもたちからの人気を獲得しました。

血液の流れを良くしたり、皮下脂肪を減らしたり、新陳代謝を促したりする効果があるとして、若い女性からも支持を集めたようです。

比較的安いこともブームを後押ししました。

フラフープで遊んでいた少年の胃に穴が空き、重体になったと報じる1958年11月17日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

一方、ネガティブな報道も相次ぐようになります。

1958年11月13日には、横浜市内でフラフープで遊んでいた6歳の女の子がオート三輪にひかれて重傷を負いました。

4日後の11月17日付朝日新聞朝刊(東京本社版)では、15歳の病弱な少年がフラフープで遊んだとたんに胃に穴が空いて重体となった、と報じています。

フラフープの激しい回転運動で、胃の上部に大豆サイズの穴が空いたとしています。

 

さらに5日後の11月22日には、千葉県東金市の東金小学校で、全生徒に対してフラフープ禁止令が出ました。

学校に持ってくるのも、校内で遊ぶのも禁止。

家庭でも、病弱な子は「やってはいけない」、健康な子でも「一度に百回転以上続けてやってはいけない」という内容です。

 

こうした逆風により、フラフープ熱は一気に下火となりました。

腸捻転を起こす、交通事故が起きるといった風評が広がったことで、ブームは1ヶ月半の短命に終わったのです。

当時の新聞では、在庫を抱えて困惑したり、他の商品に転用できないか知恵を絞ったりする業者の声が取り上げられています。

中国の小学校の校庭でフラフープを楽しむ子どもたち=1992年、中国・北京市、朝日新聞社

時は流れ、ブームは中国へと場所を移します。

1992年4月24日朝日新聞夕刊(東京本社版)によると、健康に良いとのうわさが広がり、中国の子どもや若い女性が熱中。

北京の様子として「ほとんどの小学校が課外活動に採り入れたため、街にはカラフルな硬質プラスチック製の輪を手に登下校する児童の姿が目立つ」とあります。

 

時代はめぐり、フラフープが再び注目を集めます。

2007年ごろからアメリカを中心に、エクササイズの1つとして取り上げられるようになったのです。

千葉県東金市がフラフープを使った町おこしに乗り出したことを伝える2010年11月28日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

2010年11月28日朝日新聞朝刊(東京本社版)は、千葉県東金市がフラフープを使った町おこしを始めたと報じています。

市内の小学校が「フラフープ禁止令」を出し、フラフープブーム終息の一因となった東金市。

その歴史を逆手に取り、フラフープをたたえる記念碑を建て、回したフープをぶつけ合う「フープバトル選手権」まで開きました。

 

かつて流れた「健康に悪い」といううわさは本当なのでしょうか。

2012年8月25日付朝日新聞朝刊(東京本社版)の記事は「このうわさは間違いで、医学的な因果関係は認められていない」と明記しています。

この記事によると、フラフープを10分間回し続けると、ジョギングと同程度の100キロカロリーを消費できるそうです。

腸腰筋を使うため、マッサージ効果で臓器の動きが活発になり、便秘解消も期待できるといいます。

 

コロナ禍で運動不足に悩む人も多い昨今。

自宅でフラフープを回してみるのもいいかもしれません。

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年10月18日に公開した記事を転載しました)