6年前の2016年9月29日、アメリカの配車サービス大手、「ウーバー・テクノロジーズ」の子会社、「ウーバー・イーツ」が日本で事業を始めました。

ウーバー・イーツが日本でサービスを始めることを伝える2016年9月29日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

スマートフォンを通じて注文を受け、恵比寿や渋谷、青山、赤坂、六本木、麻布といった都心のレストラン約150軒から料理を運んでもらえるサービスからのスタートでした。

 

専用アプリを通じて配達先の住所や注文者の名前、クレジットカード情報を入力したうえで飲食店や料理を選ぶと、店側は注文が確定したところで調理を始めます。

料理ができあがると配達員が飲食店まで自転車やバイクで取りに行き、配達先に届けるサービスです。

 

注文者は、アプリを通じてスマホで配達員の顔写真や現在の位置を確認することもできます。

このシステムを使えば、レストランは車や配達員を独自に抱えることなく出前の注文を受け、届けることができるようになります。

 

サービス網はその後、横浜市や大阪市、名古屋市など、まずは大都市圏に広がり、全国にも広がるようになりました。

これまで徳島、島根、鳥取、福井の4県が空白県でしたが、2021年9月28日、徳島市、松江市、鳥取市、福井市でもサービスが始まり、全国47都道府県すべてにサービス網が広がりました。

 

もともとウーバーは2009年、アメリカのサンフランシスコで創業したベンチャー企業です。

スマホアプリで車を呼び出し、あらかじめ登録したクレジットカードで決済できるサービスが特徴で、瞬く間にアメリカ中に広がりました。

多くの先進国や新興国、途上国にも商圏を拡大し、日本には2014年3月に進出しました。

 

そのウーバーが、多角化の一環で本社のあるサンフランシスコで2014年8月に始めた出前サービスが、ウーバー・イーツでした。

その2年後、日本にも進出することになりました。

飲食店の店頭に掲げられた「ウーバー・イーツ」のロゴ=2020年2月18日、東京都中央区、朝日新聞社

自宅や職場から外出することなく手軽、手短に食事を済ませたいニーズを取り込み、加盟店もユーザー数も直後から急拡大。

新型コロナウイルスの感染拡大で「巣ごもり需要」が広がったことも、ウーバー・イーツには追い風となりました。

自転車で配達をするウーバー・イーツの配達員=2019年8月1日、東京都渋谷区、朝日新聞社

2021年5月の段階で加盟店は全国に約10万店。

配達員も全国に約10万人もいるそうです。

 

事業が拡大する一方で、配達を急ぐウーバーの配達員によるバイクや自転車の危険運転が社会問題化するようにもなりました。

ウーバーのロゴ入りのリュックを担いだ配達員が首都高速を自転車で走行しているという目撃情報や、「携帯電話を見ながら運転している」「歩道でスピードを出していて危ない」「信号を無視した」などの110番通報が目立つようになり、警視庁も警鐘を鳴らしています。

ウーバー・イーツの配達員と思われる自転車の事故や通報が相次いでいることを伝えた2020年5月23日付朝日新聞夕刊(東京本社版)

配達員はウーバーと雇用関係はなく、個人事業主という立場で契約しています。

このため労災や雇用保険の対象にはならず、事故に遭った際の補償が十分でないなどの不安定な労働環境も問題視されるようになりました。

配達員への報酬が適正かどうかや、副業で働いている配達員が適切に確定申告をして納税しているかについても、税務当局などが関心を強めています。

労働組合「ウーバーイーツユニオン」結成を伝える2019年10月4日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

首都圏などで働く配達員らは2019年10月、労働組合「ウーバーイーツユニオン」を結成しました。

団体交渉などを通じてウーバー側に対し、不安定な労働環境の改善を求めていく考えです。

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年9月29日に公開した記事を一部修正して転載しました)