目次

  1. 不妊治療と仕事の両立支援が必要な背景
    1. 治療の負担が離職に影響
    2. 一般事業主行動計画に追加
    3. 不妊治療が2022年4月から保険適用に
  2. 両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)とは
  3. 助成対象となる事業主
  4. 助成額
    1. 環境整備・休暇の取得等
    2. 長期休暇の加算
  5. 助成金の申請手順
    1. 企業トップによる方針の周知
    2. 社内ニーズ調査の実施
    3. 就業規則等への規定
    4. 就業規則等の周知
    5. 両立支援担当者の選任
    6. 不妊治療両立支援プランの策定

 職場で不妊治療への支援が必要な理由は次のようなことが挙げられます。

 厚生労働省が2017年12月、男女2060人にインターネットを通じて実施した実態調査によると、不妊治療をしたことがあると答えたのは265人で、そのうち、42人が「仕事と両立できず退職した」と回答し、仕事との両立が難しい状況が明らかになりました。

 両立に困難を感じる理由には「通院回数の多さ」「精神面での負担が大きい」「通院にかかる時間がよめない」ことがありました。

 こうしたなか、厚生労働省は2021年4月から事業主が一般事業主行動計画に盛り込むことが望ましい事項として、「不妊治療を受ける労働者に配慮した措置の実施」を追加しました。従業員101人以上の企業には、行動計画の策定・届出、公表・周知が義務付けられています。

 さらに、2022年4月から、不妊治療のうち関係学会のガイドラインなどで有効性・安全性が確認された治療法が保険適用となりました。これにより治療に取り組む人が増えることが考えられます。詳しくは厚生労働省の公式サイトで確認してください。

 一方、不妊治療と仕事との両立するための制度が整っていない企業は少なくありません。そこで、厚生労働省は両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)を設けました。不妊治療と仕事との両立に資する職場環境の整備に取り組み、不妊治療のために利用可能な休暇制度や両立支援制度を労働者に利用させた中小企業事業主を支援する目的があります。 

 対象となる事業主は、次のいずれか、または複数の制度を導入し、労働者に利用させた中小企業事業主が助成金の支給対象となります。一方、労働者は性別や雇用形態を問わず、不妊治療を受ける場合に対象になります。

  • 不妊治療のための休暇制度(多目的・特定目的とも可)
  • 所定外労働制限制度
  • 時差出勤制度
  • 短時間勤務制度
  • フレックスタイム制
  • テレワーク

 受け取れる助成金は2つのステップに分かれます。

 最初の労働者が休暇制度・両立支援制度を合計5日(回)利用した場合に28.5万円(生産性要件を満たした場合は36万円)を受け取ることができます。

 上記28.5万円を受給し、さらに労働者が不妊治療休暇を20日以上連続して取得した場合、さらに28.5万円(生産性要件を満たした場合は36万円)を受給できます。

 助成金はまず制度をつくり、労働者が制度を利用してから受け取ることができます。具体的な手順は次の通りです。

  1. 企業トップによる方針の周知
  2. 社内ニーズ調査の実施
  3. 就業規則等への規定
  4. 就業規則等の周知
  5. 両立支援担当者の選任
  6. 不妊治療両立支援プランの策定

 不妊治療休暇・両立支援制度を利用しやすい職場風土にするため、企業トップが制度の利用促進についての方針をすべての労働者に周知しましょう

 つぎに社員の意識、希望する制度・環境整備について調査します。具体的には、不妊治療と仕事の両立に関して、労働者が求めている制度や支援策について把握するため、アンケート調査や自己申告制度を活用しましょう。対象労働者による制度の利用開始日の前日までに調査してください。

 社員が不妊治療を受けることを把握したら、制度内容、制度利用に係る手続きや賃金等の取扱いについて、就業規則等に規定します。対象労働者による制度の利用開始日の前日までに規定しましょう。

不妊治療休暇の規定例

第○条 労働者が不妊治療を受けている場合で、その勤務しないことが相当であると認められるときには、必要と認められる日数(時間数)について、有給による休暇を与える。

2 休暇取得の際の賃金の計算方法については、年次有給休暇と同様の方法により算定する。

3 休暇を取得する場合は、所定の手続により所属長に申請しなければならない。

 就業規則に規定すれば、基本的には対象となる労働者が制度を利用開始する日の前日までに周知しましょう。

 不妊治療を受ける労働者からの相談への対応、不妊治療両立支援プランの策定を行う担当者を選びましょう。両立支援担当者は人事労務の担当や産業保健スタッフなどが担うことが考えられます。対象となる労働者が制度を利用開始する日の前日までに選びましょう。

 不妊治療を受ける社員を、両立支援担当者が把握したら、基本的には対象労働者による制度の利用開始日の前日までに少なくとも1回以上面談し、プランをつくりましょう。