CXとは?CSやUXとの違い、重要性、向上の手順、成功事例を解説
CX(Customer Experience:カスタマーエクスペリエンス)とは、顧客体験や顧客体験価値と訳され、商品・サービスの感情的な価値を示す言葉です。本記事では、CXについて、CSやUXとの違いを交えながら整理した上で、向上させる具体的な手順や成功事例をご紹介します。
CX(Customer Experience:カスタマーエクスペリエンス)とは、顧客体験や顧客体験価値と訳され、商品・サービスの感情的な価値を示す言葉です。本記事では、CXについて、CSやUXとの違いを交えながら整理した上で、向上させる具体的な手順や成功事例をご紹介します。
目次
CX(Customer Experience:カスタマーエクスペリエンス)とは顧客体験、または顧客体験価値のことであり、顧客が企業と接点を持つ期間すべてを通して得られる価値を指す言葉です。
顧客が、ある企業の商品・サービスを「知る前」「知ってから購入する前」「購入するとき」「購入した後」に、その商品やサービスに対して何を感じたのかを示すものともいえます。
顧客と企業の一連のやり取りを通して、顧客の期待を上回る体験を提供できているか、という重要な観点を与えてくれるのがCXです。
CXに類似する言葉に、CS(Customer Satisfaction:カスタマーサティスファクション)と、UX(User Experience:ユーザーエクスペリエンス)があります。
CSは顧客満足度を指す言葉で、顧客が抱く満足や不満をアンケートなどを通して把握し、何を改善すべきなのかを認識するための、ものさしです。
CXが商品・サービスに対するあらゆる体験価値に対して、その結果、顧客が満足しているかどうかを図る指標がCSとなります。
UXは、自社の商品やサービスを利用したときに得られる体験を指します。CXは顧客との取引に関わらずすべての顧客を指し、UXは主に取引がある顧客を指すという違いがあります。
CX・CS・UXの関係を図で示すと、以下のとおりです。
CXが重要視されている理由には、主に次の3つがあげられます。
「近代マーケティングの父」と呼ばれるアメリカの経済学者フィリップ・コトラーは『コトラーのマーケティング5.0』(朝日新聞出版)の中で、若い世代の関心は「人類にプラスの変化をもたらし、人間の生活の質を向上させる」方向に向かっていると指摘しています(同書 p.66)。一顧客の観点からいえば「より良いものを求める欲求が高まっている」ということです。
また、要求が高度化すると、例えば「品質がよいだけでなく、おしゃれな冷蔵庫がほしい」「デザイン性はそこまで求めていないので、安価で機能性に優れた冷蔵庫がほしい」といったように要求が分散化します。実際、それによって、顧客の要求を類型化して個々に対応することが必要になっている企業は少なくないでしょう。
このときに役立つのが、CXという考え方です。
いくら高度化・分散化している顧客の要求に応えようとしても、商品・サービスそのものの価値だけにフォーカスしていては、顧客から他社と同じように評価されがちです。
しかし、例えば「この冷蔵庫を使えば、商品バーコードを読み取る機能によって、スマートフォンにレシピ情報をアップしたり、足りなくなっている食材を認識した上でECで簡単に購入したりできる」といった文脈が加われば、顧客が「あの会社の冷蔵庫は、ほかの会社とは違って良いものだ」「私のニッチな要求に応えてくれるものだ」と判断しやすくなります。
CXは、このように、高度化・分散化している顧客の要求に対して応えるための観点を与えてくれることから、重要視されているのです。
2020年以降、私たちは、新型コロナウイルス感染症によって、これまでの日常的な活動に何らかの制約と変化を求められるようになりました。徐々に取り戻しつつある今も、以前と同様ではなく、新しい生活様式へのフィットが前提となっているでしょう。
それは企業の活動においても同様で、デジタル化(オンライン化)がさらに進行するだけでなく、その環境に適応する形でオンラインを起点とした新たなサービスが生み出されています。
CXが重要視されているのは、従来のオフラインでもたらされる体験価値と、オンラインでもたらされる体験価値がとくに異なるからです。
飲食店の料理を食べるのはこれまでその店舗で食べるのが当たり前でしたが、中食というテイクアウト、さらにデリバリーという宅配が流行りました。食べるものは同じでも、店舗と家で食べるのは異なるでしょう。
このように同じサービス・商品であっても、体験が変化すると従来のやり方では同じように価値を感じてくれない可能性があります。とくにオフラインからオンラインへ変わるとそれが顕著に現れるため、どんな体験を提供すれば価値を感じてくれるのかを考えなおさなければいけません。これが、CXが注目されている理由のひとつです。
今では当然のように利用しているマップ機能、音声認識、スマートフォンデバイス、アプリ機能などは、ここ10年の歴史で積み上げられた技術革新でしょう。
これらの機能は常にアップデートされて改善が進み、気づいたら新しい機能が生まれています。生まれたときからデジタルに触れてきた世代と、デジタルネガティブでデジタルとの接点が少ない世代とのギャップはますます広がっており、世代間のデジタルギャップはマーケティングにおいて目下の課題とされています。
とくに注意しなければいけないのが、商品・サービスを幅広い世代に提供する企業です。
例えば、企業への問い合わせ一つとっても、電話を必要とする世代とネットですべて完結したい世代とに分かれます。このどちらの要望にも応えるために、デジタルサポートの多様化を進める重要な考え方がCXです。
CXを向上させるには、顧客から「どう思われているか?」「どう思われたいか?」「どう思われたか?」という顧客評価を軸に、時系列に沿って必要な施策を行うのが近道です。
まずは、手順と、それぞれのステップで行いたいアクションをまとめた表をご覧ください。
手順 | Step1:顧客にどう思われているか、現状を把握する | Step2:顧客にどう思われたいか、企業のあるべき方向性を見つめなおす | Step3:顧客にどう思われたか、企業の改善活動を通して顧客の再評価を得る |
---|---|---|---|
アクション | ・顧客へのアンケート/ヒアリング 対象とする顧客は、未顧客(市場)、現顧客、過去顧客などに分類されるすべてが対象 |
・自社の強み/弱みを洗い出す 価格、商品品質やラインナップ、提供スピードなど、何を伸ばし、補完すべきかを整理する |
・改善アクションに対する再評価 Step2で課題改善を取り組んだ結果、顧客にどう評価されたか確認する |
各ステップについて、順に詳しく解説します。
まずは顧客にどう思われているのか、現状を把握します。アンケートを取ったり直接ヒアリングしたりするなどして、その商品・サービスに対する評価を集めましょう。
ポイントは、未顧客・現顧客・過去顧客などすべてを対象としつつ、顧客の属性ごとにアプローチの仕方を変えることです。
例えば、未顧客であれば、何が購入の決定要因になっているのか、どの企業と比較されているのかなどの購入因子を探ります。
現顧客であれば、現在に何を満足として、何を不満と感じているか継続因子を探ってみてください。過去顧客に対しては、止める理由や事情などの顧客の離反因子を探ってみましょう。
現状を把握したら、次に顧客にどう思われたいのか、企業のあるべき方向性を見つめなおします。
自社の強み/弱みを価格、商品品質やラインアップ、提供スピードなどに分類して評価の程度を分類して、何を改善すべきかを決めましょう。
改善活動に実際に取り組んだら、それについて再度、顧客に評価をしてもらいます。方法は、Step1と同様です。企業と顧客にとって意味あることを認識できたかによって、活動の継続・中止を判断しましょう。
再評価を受けるときは、顧客が自社のサービスや商品の何を評価していたのか、ということを探ることも大切です。
最後に、CXを向上させた企業事例を2つ、ご紹介します。事例からわかるCX向上のポイントも解説しているので、施策を検討するときの参考にしてください。
企業A社では、一定回数をリピートされた定期継続の顧客にだけ参加できるキャンペーンを企画したところ、これまでにない反響となりました。キャンペーンの応募もさることながら、応募の有無に関わらず、その後の継続にも好影響を及ぼす結果となりました。
気が利いていると感じる情緒的な経験価値が、CX向上につながるとわかる事例です。具体的には、
・自分が特別に選ばれたことに対する満足感
・参加条件となった一定回数を購入したことに対する自分に対するプラス評価
・予告なく実施された企画に対する驚きと嬉しさ
などがあると、CXは向上しやすくなります。
企業B社では、商品のリニューアルに関して過去に顧客から度重なるヒアリングやアンケートを通して、現行商品の改善点を洗い出していました。そして顧客の声を反映する形で商品をリニューアル。
その際、既存顧客に向けて、リニューアルに至った背景の説明と、顧客の声を形にできたことへの感謝をDMやメールで伝えると共に、割引などの特典を添えて先行予約を行ったところ、過去の商品販促にはない反応を得られることになりました。
特定の集団に帰属していると感じる社会的経験価値の提供によって、CXが向上した事例です。
・普段、自分が使っている商品に対して思っていることが認められたことへの満足感
・他の顧客も同じようなことを思っていたということの共感
・事前に報告を受けたことに対する帰属意識への充足感
などが具体的に提供できると、CXの向上が目指せるでしょう。
CXは、商品・サービスの付加価値のため、顧客体験価値がすべての事業課題を解決するものではありません。
しかし、機能・価格・性能といった合理的な価値は、時間の経過と共に他社の追従などによって比較を余儀なくされます。
そのため、企業にとって商品・サービスの魅力度を高めていくことが企業活動の根幹であることは今後も変わらず重要でしょう。
筆者は、商品・サービスの他に、顧客にとって「この企業と取引する、もう一つの意味」を認識させることが、CXの本質であると考えます。
企業がCXを考えて実践することは、商品やサービスの開発と同じくらいに重要であり、顧客の立場に立って、望むことを実践することが、事業活動のサクセスルートを辿るということなのではないでしょうか。
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