目次

  1. 仕入管理とは 
  2. 仕入管理のプロセス
    1. 見積もり依頼と検討
    2. 購買契約の締結
    3. 発注対応
    4. 入庫と検収の対応
    5. 仕入帳簿への対応と支払い
  3. 仕入管理の課題
    1. 手作業が多くミスが生じやすい
    2. 業務の属人化につながりやすい
  4. 仕入管理はソフト(システム)の導入がおすすめ 
    1. 仕入管理ソフト(システム)の選び方 
    2. おすすめの仕入管理ソフト(システム) 
  5. 仕入管理は企業の売上・利益向上の肝

 仕入管理とは、仕入先から届いた商品・部品・原材料などを適切にコントロールすることです。

 商品・部品・原材料が不足すれば販売や製造に大きな影響を与えます。売上を得る機会を失うわけですから、企業にとってマイナスです。一方で在庫を過剰に抱えると、保管費用も対応人員も嵩み、利益圧縮の原因となります。

 仕入管理をすることは、販売の機会を逃すことなく利益を最大化する上で、必要不可欠な業務なのです。

仕入管理の流れとおすすめソフト2選
仕入管理の流れとおすすめソフト2選(デザイン:増渕舞)

 仕入管理は次のような流れで実施します。

  1. 見積もり依頼と検討
  2. 購買契約の締結
  3. 発注対応
  4. 入庫と検収の対応
  5. 仕入帳簿への対応と支払い

 以下から具体的に説明します。

 商品・部品・原材料を仕入れる時には、必ず見積もり依頼をします。見積もりを依頼する先は、商品・部品・原材料が複数企業から仕入れられる場合は必ず2~3社から見積もりを取りましょう。

 見積もり依頼と言うと、初めて取引をする場合や仕入価格が変動する商品を取引する場合に依頼するものだと考える人が多いです。しかし、同じ相手と決まった金額で仕入取引をしている場合であっても、見積もり依頼は重要となります。見積もり依頼を疎かにしていると、仕入れコストを下げられるチャンスを見逃しかねないからです。仕入コストの抑制という観点からも、見積もり依頼はしましょう。

 仕入先の候補企業から見積もりが届いたら、見積書を含めた提案内容を内容を確認します。仕入価格だけではなく仕入前後の対応など総合的に判断できたら、仕入先との契約です。複数回に渡って継続的に仕入先との取引が続く場合には、購買契約を締結します。

 一度きりの発注をする場合には、見積もり内容に合わせて発注書を作成するだけで終えてしまうことが一般的です。しかし、継続して発注をする場合は仕入企業との間で購買契約を締結します。

 購買契約を締結する際には、通常、次のような内容を取り決めます。

購買契約で取り決める主な項目と契約内容例

1. 購買契約の内容
甲を委託者、乙を受託者として製作・加工委託される物品(以下「目的物」)に関して甲乙間で締結されるすべての個々の取引契約(以下「個別契約」)に適用されるものとする。

2. 契約期間
本契約締結日より1年間とする。ただし、期間満了の1ヶ月前までに甲乙いずれか一方からの文書による更新拒絶の意思表示がないときは、本契約と同一内容でさらに1年間延長されるものとし、その後もこの例によるものとする。

3. 機密保持
甲および乙は、本契約により知り得た事項を含む相手方の業務上または技術上の秘密事項を、本契約の有効期間中は勿論、その終了後といえども厳重に保持しなければならない。また乙は、本契約の有効期間中および終了後においても、甲の業務上または技術上の秘密事項を本契約の目的以外の目的に使用してはならない。

4. 保証内容
乙は、目的物が甲の注文書、貸与書類、見本等に適合することを甲に対し保証するものとする。

5. 解約条件
甲または乙は次の各号のーに該当する事由が生じたときは、相手方に対し催告その他いかなる手続を行なうことなく書面による通知により、直ちに本契約の一部または全部を解除
できる。
① 甲または乙が本契約のいずれかの規定に違背したとき。
② 甲または乙が正当な理由なく期限内に個別契約上の義務を履行する見込みがないと認めたとき。
③ 甲または乙が災害その他やむを得ない事由により個別契約上の義務を遂行することが困難と認められたとき。

6. 支払いの締日
検収完了月末締め

7. 支払い日
翌月末支払い

8. 支払い方法
指定口座に振り込むものとする。なお、その際の手数料については甲が支払うものとする。

9. クレームについての対応
甲および乙は、本契約に係る消費者からの問い合わせ事項が発生した場合には、商慣習によるほか信義誠実の精神に基づき、別途協議のうえ解決するものとする。

 購買契約が締結されたら、上記の9項目と仕入先の企業名・連絡先、仕入先コードを仕入先台帳に記載します。

 商品・部品・原材料の在庫に補充が必要になると、発注対応をします。一般的には発注書(注文書)を用いて書面で発注します。

 発注書(注文書)に最低限記載しておきたい内容は次の通りです。

  • 発注日
  • 発注番号
  • 納入場所
  • 商品・部品・原材料
  • 金額
  • 納期

 発注した人の役割は、発注書(注文書)を送付して終わりというわけではありません。発注書(注文書)に記載した納期通りに納入されるかどうかしっかり確認する、といった対応が必要です。

 なお、発注を実行する会社の組織規模が大きい場合には、在庫を管理する担当者と、発注する購買担当者が分かれていることもあるでしょう。

 その場合は、在庫を管理する担当者が購買依頼書を作成し、購買担当者が発注をするという流れになります。購買依頼書の作成・提出から購買実行まで数日必要な場合がありますので、会社のルールがどうなっているのか、イントラネットなどを見て事前に確認しましょう。

 発注した商品が入庫した際には、入庫をした事実だけではなく、入庫内容について必ず検品をします。

 検品する際の確認事項は次の通りです。

  • 発注書(注文書)通りの商品・部品・原材料が到着しているか
  • 発注書(注文書)通りの数量が到着しているか
  • 発注時に想定していた品質の商品・部品・原材料が到着しているか
  • 発注時に企業間で合意していた通りの納期だったか 

 これら4つの事項が守られていることを確認して受領書に確認印を押すことで、仕入れは完了します。仕入れた商品・部品・原材料の所有権が発注企業へと移動します。

 仕入れ時にしっかりと検品し、その内容を書面に残し企業間で確認をすることは、仕入時にトラブルが生じた場合にも役立ちます。どちらの企業の何が悪かったのか証明できる資料になるからです。

 検収が完了したら次に仕入伝票を作成します。一般的には仕入れ担当者が仕入伝票を作成しますが、発注を実行する会社の組織規模が大きい場合では購買担当者が仕入伝票を作成します。仕入伝票の主な記載項目は、次の通りです。

  • 仕入日
  • 伝票番号、発注番号、入力者
  • 仕入先
  • 商品コード
  • 商品名、数量、単価、金額、備考
  • 納入先
  • 納入予定日

 この仕入伝票が経理担当者へと渡ると、経理担当者は仕入伝票を元に仕入取引を買掛金として帳簿に記帳し、仕入れた商品・部品・原材料を商品有高帳に記録します。ここまで完了して初めて、仕入れた商品・部品・原材料は発注を実行した会社の在庫として管理されることになります。

 その後、購買契約で締結された支払い条件に合わせて、支払いが実行されます。帳簿上の処理が完了しないと支払いができず、支払い遅延に繋がります。仕入れた商品・部品・原材料の支払い完了を見届けるところまでが仕入管理です。

 仕入管理は、企業業績にかかわる重要な業務のひとつですが、多くの企業が次のような課題をよく抱えています。

 紙やエクセルデータを使い、手作業で仕入管理を行っている企業にありがちな課題です。

 仕入れ業務において、手作業が多いと発注ミスや仕入ミスが発生しやすくなります。たとえば、ある企業では4と9の判読ミスが発生して仕入数量の相違が起き、結果として返品できないか企業間で対応協議をすることにならざるを得なかった、ということがあります。

 仕入れた商品・部品・原材料を使う拠点が複数あるなどで業務の煩雑さが増すと、特定の担当者による対応でカバーしようとしがちです。

 しかし、特定の担当者でなければ対応できないとなると、問題が生じた際に企業が大きな損失を受ける可能性もゼロではありません。

 実際、こうした業務の属人化が解消できず、「支払いがされていないけれど、どうなっているのか」という問い合わせがあったときに経理担当者だけで迅速に対応できなかったために、結果として継続予定だった契約が単発契約となってしまったケースがあります。

 仕入管理をする方法は様々ありますが、筆者としてはソフト(システム)を導入した上で仕入管理をすることをおすすめします。

 次のような導入メリットがあるからです。

  • 無駄な仕入がないかが行われていないかどうか確認しやすくなる
  • 仕入に関わるプロセスのスピードアップに繋がる
  • 仕入データをもとにした今後の予想・目標が立てやすくなる
  • 業務の属人化を防ぐことができる

 いずれも、企業と従業員の双方にメリットがあります。仕入管理のソフト(システム)導入をぜひ前向きに考え、実行してみてください。

 仕入管理をするソフト(システム)を選ぶ際には、次の5項目を中心に比較検討しましょう。

  • 必要とする機能が備わっているか
  • 機能が費用に見合っているか
  • ソフトの形態(クラウド型かパッケージ型か)が自社に合っているか
  • 操作がしやすいかどうか
  • 英語対応しているかどうか

 仕入管理ソフト(システム) を導入する際には、どのような人が何人でどのような業務ができたらよいのかという点を定義するところから始めます。ここが疎かになると、導入候補となったソフト(システム)が、自社の必要とする機能を有しているのか、その機能に見合った費用なのかどうか、正しく判断できません。

 また、仕入管理ソフト(システム)は、インターネットに繋がっている状態で利用するクラウド型と、システム構築されたものをインストールすることで利用するパッケージ型の2つがあります。倉庫の中を移動しながらタブレットで仕入管理したいといった場合にはクラウド型を検討することになるでしょうし、セキュリティ面を考慮するならパッケージ型を検討することになるでしょう。

 さらに、業界によっては外国人労働者と一緒に仕入管理をすることもあります。その場合は日本語だけではなく英語にも対応している仕入管理ソフト(システム)を検討出来たほうが、仕入管理ソフト(システム)を導入しやすくなるでしょう。

 現在、世の中には多くの仕入管理ソフト(システム)があります。筆者が特におすすめしたい仕入管理ソフト(システム) は次の2つです。

  1. 弥生販売
  2. flam(フラム)

 次から具体的に紹介します。

①弥生販売

 弥生販売は、会計ソフトの弥生会計と同じ弥生株式会社が発売している仕入管理ソフト(システム)です。

 弥生販売で入力した伝票を基に仕訳を作成し、弥生会計に転送できます。弥生会計側との残高を補助科目単位で合わせられるので、業務の属人化防止に繋がります。

ツール名 弥生販売
ツールの特徴 ・担当者が利用した作業内容のログを記録できる
・販売データをリアルタイムで把握できる
・弥生会計側への仕訳転送が可能
・クラウド型ツール
ツール利用時の注意点 期中で導入する場合には、導入日が期首からどのくらい近いかによって、導入日までの取り引きすべてを記入するか導入日の残高と在庫を入庫するか、初期入力内容が異なる
ツール利用をおすすめしたい企業 ・弥生会計を利用している企業
・POSシステムを使った販売をしている企業
費用(税抜き)

【弥生販売 22 スタンダードの場合】
・製品+ セルフプラン:44,000円
・製品+ トベーシックプラン:44,000円
・製品+ トータルプラン66,000円

【弥生販売 22 プロフェッショナルの場合】
・製品+ セルフプラン:80,000円
・製品+ トベーシックプラン:80,000円
・製品+ トータルプラン :110,000円

【弥生販売 22 プロフェッショナル 2ユーザーの場合】
・製品+ セルフプラン:105,000円
・製品+ トベーシックプラン:105,000円
・製品+ トータルプラン :140,000円

※無料体験版あり

公式URL https://www.yayoi-kk.co.jp/index.html

②flam(フラム)

 flam(フラム)は低コストで導入・利用できる仕入管理ソフト(システム)です。

 使うアカウント数・データ容量・機能によってスタンダード・プロフェッショナル・プレミアムの3コースがありますが、導入時の初期費用は3プランともに0円です。また、スタンダードプランであれば、標準月額利用料が税込み10,230円です。30日使うと考えると1日341円ということになります。

 低コストで導入・利用できる上に、利用者がパッと使えるような操作性になっている点も特長です。

ツール名 flam(フラム)
ツールの特徴 ・業務データが自動でバックアップされる
・ニーズに応じた個別カスタマイズへの対応が可能
・Money Forwardクラウド会計と連携可能
・クラウド型ツール
・英語対応あり
ツール利用時の注意点 オプションを追加するごとに利用料金が高額になる
ツール利用をおすすめしたい企業 ・食品加工をはじめとした製造販売業
・Money Forwardクラウド会計を利用している会社
費用(税抜き)

初期費用:0円

標準月額使用料
・スタンダード:9,300円
・プロフェッショナル:19,800円
・プレミアム:49,800円

公式URL https://www.flamsv.com/

 仕入管理の精度は企業の売上・利益に直結します。また、業務のしやすさは従業員のモチベーション向上・離職率低下に繋がります。既存の仕入管理に改善点があるのなら、早めに改善検討を始めましょう。