ステコミ(ステアリングコミッティ)とは?役割や活用ポイントを解説
ステコミ(ステアリングコミッティ・Steering Committee)とは、「運営委員会」という意味を持つ言葉です。民間企業の間で、プロジェクトマネジメントを円滑化するために活用する機運が高まっています。本記事では、ステコミの役割を整理し、活用するためのポイントを解説します。
ステコミ(ステアリングコミッティ・Steering Committee)とは、「運営委員会」という意味を持つ言葉です。民間企業の間で、プロジェクトマネジメントを円滑化するために活用する機運が高まっています。本記事では、ステコミの役割を整理し、活用するためのポイントを解説します。
目次
ステコミとは、ステアリングコミッティ(Steering Committee・運営委員会)の略で、会社関係者と株主・顧客・事業パートナーといった外部の人間によって構成され、プロジェクト達成のための支援を行う集まりです。それぞれの単語を翻訳するとSteeringは「舵取り」で、Committeeは「委員会」なので、ステコミとは、プロジェクトを遂行する組織の舵取りをする委員会とも言えるでしょう。
ステコミはもともと、アメリカやイギリスの議会で、政党間の対立などで紛糾する運営を円滑化するために誕生したと見られています。異なる政党からそれぞれ代表者を出し、委員会を組織して議会の運営を「舵取りする」ことを図ったわけですが、今日では民間企業でもプロジェクトマネジメントを円滑化する目的で導入されています。
企業におけるステコミは、プロジェクトにおける何らかの目的を達成するために開催されるのが一般的です。それゆえ、単に報告や情報共有、あるいは打ち合わせを目的としたミーティングとは一線を画しています。
ステコミには、主に以下の役割があります。
ステコミの第一の役割はプロジェクトのモニタリングです。
ステコミは通常、自らはプロジェクトマネジメントやプロジェクトそのものを行いません。ステコミは、プロジェクトが予定通りに進捗しているか、予算を守っているか、ゴールへ向けて正しい方向を進んでいるか、プロジェクトメンバーの士気は維持されているか等々についてのモニタリングを行います。
ステコミの第二の役割はアドバイスの提供です。
ステコミは、社内の各部署からメンバーを出すとともに、株主、顧客、事業パートナーなどの外部からもメンバーを集めるのが通例となっています。プロジェクトチームに対して、株主の立場やユーザーの立場、あるいは事業パートナーの立場からアドバイスを提供し、プロジェクトそのものの価値増加を図るのもステコミの重要な役割のひとつです。
外部からのアドバイスは、プロジェクトチームメンバーの知見に多くのプラスの要素を与えてくれるでしょう。
ステコミの第三の役割は紛争やトラブルの解決です。
プロジェクトには紛争やトラブルがつきものです。プロジェクトの推進の仕方や役割分担において、メンバー同士で意見や利害が対立し、それがプロジェクトの実現に影響を及ぼすことも珍しくありません。
そうした際、ステコミが介在することで紛争やトラブルを解決できる可能性が高まります。公正な第三者として、ステコミは紛争調停委員会の役割を提供できるのです。
多くのステコミは自らプロジェクトには関与しませんが、一部のステコミはプロジェクトの意思決定そのものを行う場合があります。
特に大口の支出を伴う予算についての意思決定や、プロジェクトマネージャーなどの人事についての意思決定などをステコミが行うケースがあります。プロジェクトの規模が大型化すると、ステコミがプロジェクトの意思決定に関与するケースが増えるようです。
では、ステコミを活用するときのポイントは何でしょうか。人選方法や開催時期、運営方法などのポイントをまとめました。
ステコミを構成するメンバーの人数は、アメリカの経営コンサルタントの意見などを参考にすると、7人から10人程度が理想的のようです。
10人を超えると意思決定のスピードを確保することが難しくなり、一方でメンバー数が2-3人程度と少ないと、「独裁状態」が生じたり、ステコミのアウトプットが偏ってしまったりするリスクがあるからです。
なお、多数決で意思決定する可能性を鑑みて、7人または9人にすると良いという意見もあります。
ステコミのメンバーには会社関係者だけでなく、顧客や事業パートナーなど、できるだけ外部から集めることもポイントです。それにより、自社だけの視点でなく、エンドユーザーからの視点でマネジメントを見ることが可能になります。また、研究者などの業界の専門家をメンバーに加えることで、専門性の高い知見を取り入れることが可能になります。
会社の代表者、またはプロジェクトを担当する部門の代表者をメンバーに加えることも重要なポイントです。彼・彼女らをメンバーに加えることで、いい意味でステコミとプロジェクトチームに緊張感と権威を与え、プロジェクト目標達成に向けたモラルとコミットメントを高めることができるからです。
ステコミのメンバーが決まったら、議長、副議長、書記を決めておきましょう。議長は会の運営をつかさどる司会を務め、副議長は議長欠席時に代わりに司会を務めます。書記は、議事録を作成の上保管、関係者に公開します。
議長を選ぶときは、会社の代表者や部門の代表者にならないようにすることがポイントです。
会社の代表者や部門の代表者をステコミの議長にすると、会社の社内構造と同じようなパワーバランスになり、ステコミの機能が減じてしまう可能性が生じるからです。できるだけ無記名投票などで議長を選出するようにしてください。
緊急時を除き、ステコミの開催日の日程は、あらかじめ年間ベースで決めておいた方がいいでしょう。特に外部からメンバーを招じる場合、不定期での開催では参加が難しくなる可能性があります。開催頻度は、可能であれば月に1回、難しい場合は隔月に1回程度が望ましいでしょう。
前もってアジェンダ(議題)を決めておくことも重要です。プロジェクトチームが直面している課題やトラブル、プロジェクトの進捗状況、予算の消化状況等々、それぞれのアジェンダを開催前に整理しておきましょう。
各アジェンダを円滑に進めるためにしておきたいことについては、下表を参考にしてください。
主なアジェンダ | アジェンダを円滑に進めるためのポイント |
---|---|
プロジェクトの進捗状況 | プロジェクトの進捗状況につき、スケジュール全体における現在の状況をガントチャートなどで簡潔にドキュメントにまとめておく |
チームが直面している課題・トラブル | チームが直面している課題やトラブルがある場合、具体的に簡潔にまとめておく |
予算の消化状況 | プロジェクトの予算の消化状況につき、具体的な金額を含めてまとめておく。グラフなどのビジュアルで表現しても効果的 |
リスクについての状況 | プロジェクトの進展に支障をきたす何らかのリスクが存在する場合に、それを具体的に示す。また、リスク回避に向けたアイデアなどがあればそれも示しておく |
メンバーのモラルや勤務状況 | メンバーのモラルや勤務状況につき、簡潔にまとめておく。特にネガティブな状況やファクターが存在する場合は、プライバシーに配慮した上で具体的に示しておく |
その他報告すべき事項 | その他報告すべき事項があれば、それも示しておく |
情報の共有を徹底することも重要です。いくらステコミのメンバー間で重要な情報が共有できたとしても、それがプロジェクトチームのメンバーに伝わらない「密室会議」になってしまっては何の意味もありません。議事録をクラウドで共有したり、会議の様子をビデオに収めて共有するなど、情報の共有を徹底してください。
ステコミの究極の目的はプロジェクトマネジメントの円滑化です。プロジェクトチームに自己完結的なマネジメントをさせず、あえてより多くの人を外部から動員してコミットさせることで結果的により効率的で効果的なマネジメントの実現を目指すのです。
ステコミは、アメリカのIT企業、製薬会社、病院、金融機関などに多用されています、
たとえば、アメリカのある大型病院では、多くの医師で構成されている経営委員会に、外部の意見や知見を取り入れることを目的にステコミを活用しています。ステコミのメンバーは1年任期の外部メンバーで構成され、病院の経営が特定の方向に偏ることなく、広く社会的な見地を得ながら運営するのをバックアップしています。
もちろん、一般企業のプロジェクトマネジメントにも活用できるので、複雑なプロジェクトでなかなか捗らないといったケースや、いつも同じような意見しか出ないので外部の知見を取り入れたいといったケースで活用してみてはいかがでしょうか。
おすすめのニュース、取材余話、イベントの優先案内など「ツギノジダイ」を一層お楽しみいただける情報を定期的に配信しています。メルマガを購読したい方は、会員登録をお願いいたします。
朝日インタラクティブが運営する「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに寄り添うメディアです。さまざまな事業承継の選択肢や必要な基礎知識を紹介します。
さらに会社を継いだ経営者のインタビューや売り上げアップ、経営改革に役立つ事例など、次の時代を勝ち抜くヒントをお届けします。企業が今ある理由は、顧客に選ばれて続けてきたからです。刻々と変化する経営環境に柔軟に対応し、それぞれの強みを生かせば、さらに成長できます。
ツギノジダイは後継者不足という社会課題の解決に向けて、みなさまと一緒に考えていきます。