ECサイト上の食品表示、消費者庁がガイドブック公表 アレルギー表記は?
ECサイト上での食品表示について、消費者庁が事業者向けのガイドブックを公表しました。賞味期限や食物アレルギーなどの望ましい掲載の仕方を示しています。関連する既存の食品表示基準も含めて、ガイドブックの内容をわかりやすく整理しました。
ECサイト上での食品表示について、消費者庁が事業者向けのガイドブックを公表しました。賞味期限や食物アレルギーなどの望ましい掲載の仕方を示しています。関連する既存の食品表示基準も含めて、ガイドブックの内容をわかりやすく整理しました。
目次
食品表示法にもとづく食品表示基準とは、事業者が食品を販売するときに、どんな情報をどのように表示しなければならないか、を定めた具体的なルールのことです。食品の製造者、加工者、輸入者または販売者には、食品表示基準の遵守が義務付けられています。
食品表示基準は、原材料名や原産地、賞味・消費期限、アレルギーなどに関する事項を、食品の容器包装等に表示することを求めています。表示すべき事項や表示の方法については、農産物、畜産物、加工食品といった食品の種類によって異なります。
食品表示基準の詳しい内容については、消費者庁のパンフレットに記載されています。
食品表示基準は、食品の容器包装に適用される一方、ECサイトは適用外のため、これまでECサイトにおけるルールはありませんでした。そのため、容器包装上の食品表示と、ECサイト上の情報に、一致しないことが課題となっていました。
そこで、ECサイトにおけるより充実した情報表示を事業者に促し、消費者の食の安全・安心を確保するため、消費者庁は今回、ガイドブックを公表しました。ECサイト上でも、食品表示基準が定める表示事項をできるだけ掲載することが望ましいとされています。
ガイドブックが示す食品表示のポイントについて、次の項目ごとに解説します。
期限情報とは、食品の消費・賞味期限に関する情報のことです。
店頭での購入であれば、消費者はその食品の容器包装上に記載された消費・賞味期限を直接確認することができます。しかしECサイトでは、発注から配送までにタイムラグがあることや、複数の製造ロットが入り乱れて入荷・発送が行われることがあるため、年月日までの詳細な期限情報を掲載するのは難しいという実情があります。
そこでガイドブックでは、期限情報の掲載例として4つの類型を紹介しています。
例:「賞味期限:●年●月●日」「消費期限:●年●月●日」
クリスマスケーキやおせちなど食品の到着日が決まっており、逆算して製造するような場合には、具体的な年月日での期限表示が可能です。
消費者にとっては、具体的な年月日表示は理想的です。しかし、ほとんどの場合で現実的とはいえません。
例:「到着日から●日」「賞味期限まで到着日から●日以上お日持ちするものをお届け」「商品発送の時点で賞味期限まで残り●日以上の商品をお届け」
期限残表示とは、「対象の食品を残り何日間(おいしく)食することができるかを示す表示」のことをいいます。手元に来た商品の残り期限を知りたい、という消費者の希望に応える表示方法であり、可能な限り「期限残表示」による情報提供が望ましいとされています。
期限残表示をする場合、起算日を「到着日」とするか「発送日」とするかによって、情報の具体性が異なります。到着日から起算した表示の方が、実際に消費者の手に渡った時点からの期限残日数を示すことになるため、より具体的な情報とされています。
一方で、商品の受取状況や配送状況によりECサイト上で保証した期限残と実商品の期限残にズレが生じる可能性があるため、注意が必要です。
例:「賞味期限:製造日から●日」「賞味期限(期間):●日」
期限残表示が困難である場合、「期間表示」による情報提供が考えられます。
期間表示とは、「食品そのものに設定された賞味(消費)期限までの期間」のことです。出荷や配送などの日程に左右されない表現であり、事業者側としては管理しやすいというメリットがあります。
一方で、消費者に誤解を与える可能性があるというデメリットがあります。例えば、「賞味期限:180日」と記載された場合、「配達された日から180日間期限残がある商品が届く」と誤認する消費者もいます。
例:「本サイトでは、当社が定めた日数以上の期限残の商品に限り、出荷しています。」
原則としては①~③で示したように、各商品ページにて期限情報を掲載することが望ましいといえます。しかし、これらの情報提供方法が困難な場合は、ECサイト全体として一定期間の期限残のある商品を提供することを保証する、という掲載方法もあります。
この場合、ECサイトのトップページ、サイト運営方針、パンフレット、Q&Aページなど、あらゆる箇所に掲載して消費者の目に届きやすくすることが求められています。
食物アレルギー情報は、食品表示基準にもとづき、原材料名欄における個々の原材料の直後に、それぞれに含まれる特定原材料(アレルギー症状を引き起こす原材料のうちとくに表示する必要性が高いもの)などをサイト上にも掲載することが原則とされています。
その上で、独立したアレルゲン事項欄を作る、特定原材料または特定原材料に準ずるものを一覧で示す、品目をイラストで示す、といった工夫が推奨されています。
原材料情報には、原材料、添加物、アレルゲン、遺伝子組換え情報などが含まれます。食品の容器包装上には、原材料名欄にこれらの情報がひとまとめに表示されている場合が多いですが、スペースに余裕があるECサイトの場合には、原料原産地名、添加物、アレルゲンの事項欄を別枠で示すことで、よりわかりやすい表示となります。
生鮮食品の原産地情報については、消費者のニーズが高く、品質の重要な要素といえるため、食品表示基準に準じた情報提供が望ましいとされています。
加工食品の原料原産地名については、食品表示基準では、最も重量がある原材料について原産地の表示が求められています。ECサイトでは掲載スペースに余裕があるため、積極的に情報提供をしようとするサイトもあります。
季節などにより産地が変わる食品の場合は、複数併記するなどして、消費者に誤認を与えないようにすることが求められています。
消費者にとって、「冷凍」「冷蔵」「常温」のいずれで保存するべきか、ということは重要な情報です。アイコンやイラストを用いると、わかりやすくかつスペースを取らずに掲載することができます。各アイコンを色分けすることも有効とされています。
「10℃以下で保存してください」などと、食品表示基準に準じたより具体的な保存方法を別途掲載できれば、より充実した情報提供となります。
食品表示基準では、「熱量」「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」「ナトリウム」の順で、ナトリウムについては食塩相当量で表示することとされています。消費者へ適切に情報提供をするという観点から、ECサイトにおいても、できる限り食品表示基準に準じた表示方法で掲載するよう心掛けることが求められています。
表示する栄養成分の単位は、1食分(●g)当たり、1本当たり、1袋当たり、など商品特性に合わせた量で掲載します。
ECサイトの商品は、購入時に手にとって実物を見られません。また、配送により消費者へと届けられます。そうした特徴から、ガイドブックでは、消費者にとってニーズの高い次のような情報の掲載を検討するよう求めています。
ECサイトにおいてはまとめ買いも多く、商品の総重量が掲載されると、消費者の利便性が高まるといえます。
消費者は購入時に手元で商品を確認できないため、冷蔵庫や食品戸棚に収納できるかどうかが判別できません。また「思ったよりも小さかった」などという声がECサイト運営事業者に寄せられることもあるようです。消費者の誤認を減らすため、寸法情報の掲載を推奨しています。
配達物を手渡しせず、玄関前に置いておく「置き配」が増えていますが、食品の場合はその安全性に大きな影響を及ぼす可能性があります。このため、消費者側で安全担保の対策が十分といえない場合には、置き配を断ることも一考の余地があるとされています。
ガイドブックでは、安全対策を講じているとチェックした消費者にのみ、置き配サービスを行うといった工夫を検討するよう促しています。
多くのECサイトでは、商品ページの上段に、対象食品の画像、名称(商品名)、金額などの情報がシンプルに掲載されています。これらに加え、食品表示の中でも簡潔に示せる情報として、内容量や保存方法(冷凍・冷蔵・常温など簡潔な情報)、アレルゲン情報をページ上段に掲載することをおすすめしています。
また、他の食品表示情報も、ページ上段やそれほどスクロールしなくてもよい場所などに掲載することを推奨しています。
このガイドブックは、食品を取り扱うECサイト運営事業者、たとえば、ネットモール等出品者、ネットスーパー運営者、メーカー 直販サイト運営者、定期購入等の宅配事業者、お取寄品販売事業者に活用してもらうことが想定されています。
また、次のような事業者には、内容の理解と協力を求めています。
ECサイト上への食品表示情報の掲載は、消費者だけでなく、事業者側にもメリットがあるとされています。ガイドブックで挙げられているメリットは次の通りです。
一方、掲載にあたっての留意事項も指摘されています。
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