目次

  1. 特定商取引法(特商法)とは 改正いつから?
  2. 特商法改正でEC事業者に求められる対応 定期購入の表記に注意
    1. 分量 定期購入なら1回あたりと総量・引き渡し回数も
    2. 販売価格・対価 定期購入なら各回分と総額も
    3. 支払時期及び支払方法 定期購入なら各回の支払時期も
    4. 引渡時期・移転時期・提供時期 定期購入なら各回の時期も
    5. 申し込みの期間がある場合、その旨・その内容
    6. 申し込みの撤回・解除に関する事項
  3. 消費者を誤認させる表示の禁止
    1. 有償契約の申込みであることが分かりにくいもの
    2. 誤認させるような文字サイズや色
  4. 契約の撤回・解除を妨げる不実の告知の禁止
  5. 取消権の創設
  6. 特商法に違反した場合どうなる?
  7. クーリング・オフの通知、電⼦メールでも

 消費者庁の専用サイト「特定商取引法ガイド」によれば、特定商取引法(特商法)は、訪問販売や通信販売など消費者トラブルが起きやすい取引を対象に、事業者が守るべきルールと、消費者を守るルールを定めている法律です。

 消費者トラブルが起きやすい取引として、次のようなものが定められています。

 特商法はこれまでも改正を繰り返してきましたが、直近では、2022年(令和4年)6月1日に施行されます。 

 「初回無料」や「お試し」と書かれていたのに実際には定期購入が条件となっていたり、「いつでも解約可能」と書いてあったのに実際には解約に細かい条件があったりするなど、「詐欺的な定期購入商法」が社会問題になっていることに対応した改正です。

 法律の文面を確認したい場合は消費者庁の専用サイトへ。

 2022年6月施行の特商法改正は、消費者が誤認しないよう、カタログ・チラシなどを利用した通信販売の申込書面や、ECサイトなどインターネットを利用した通信販売をするときの注文確定直前の最終確認画面で、下記6つの条項を明記することを求めています。

  1. 分量
  2. 販売価格・対価
  3. 支払時期及び支払方法
  4. 引渡時期・移転時期・提供時期
  5. 申込みの期間がある場合、その旨・その内容
  6. 申込みの撤回・解除に関する事項

 原則、最終確認画面上にすべてを網羅的に表示することが必要ですが、消費者が使っている端末によっては見づらくなったり、商品ごとに販売条件が異なるなど、すべての事項を記載すると分かりにくくなったりすることがあります。

 その場合は、消費者が明確に認識できることを条件として、対象となる表示事項・参照箇所や参照方法を明示して、参照させる形式も認められています。

 それでは、各項目で記載が必要な内容を紹介します。

 「分量」の項目は、商品やサービスに応じて数量、回数、期間などを表示しましょう。定期購入契約なら1回あたりの分量と総分量・引き渡しの回数が必要です。

 サブスクリプションの場合は、サービスの提供期間と期間内に利用可能な回数があればその内容が必要になります。無期限や自動更新である場合はその旨も明記しましょう。

 無期限の場合には一定期間を区切った分量を目安として表示することが望ましいとされています。

 「販売価格・対価」の項目は、個々の商品の販売価格(送料を含む)に加えて支払総額も表示しましょう。定期購入契約の場合は、各回の代金と代金の総額が必要です。

 サブスクリプションで無償契約から有償契約に自動で移行するような場合には、移行時期と支払うこととなる金額も必要になります。無期限である場合には、一定期間を区切った支払額を目安として表示することが望ましいとされています。

 銀行振り込みやクレジット、代金引換などのほか、金融機関・コンビニなどで振り込みをする場合もあります。そんなとき、前払いか後払いのいずれかか、いつまでに支払いを済ませる必要があるかを明示する必要があります。

 定期購入契約の場合、各回の代金の支払時期を記しましょう。

 引き渡し時期は商品の配送に左右されます。そんなときは、事業者の発送日や見込み、または配送日時を指定している場合にはその日時を示しましょう。定期購入契約の場合、各回の商品の引渡時期を表示しましょう。

 商品の販売そのものに関係する申込期間を設定する場合、申し込み期間があることや具体的な期間を記載してください。「今だけ」のようなあいまいな表現では認められません。

 タイムセールと表記しているのに期間が過ぎても同じ価格で販売していれば不要表示となるおそれがあるので注意してください。

 「申し込みの撤回・解除に関する事項」は、撤回や解除のための条件、方法、効果などを表示しましょう。定期購入契約の場合、解約の申出に期限がある場合、その申出期限を、違約金その他の不利益が生じる契約である場合はその内容を示す必要があります。

 ただし、申し込みの撤回や解除をする方法が消費者の権利を不当に制限するものである場合、消費者契約法などにより無効となる場合があるので注意してください。

 こうした項目について、消費者庁は動画でも解説を配信しています。

 改正特商法では、消費者が誤認するような行為を禁止しています。

 無料プレゼントの申し込みが、有償契約の申し込みになっているなど分かりにくい表示は禁止されています。定期購入の場合は、定期購入契約であること、金額、契約期間などが明確になるよう表示し、誤認させないようにする必要があります。

違反に該当するおそれのある表示。初回無料だが、詳しく注意書きを読むと「5回分の定期購入を条件に、初(月)回無料となります」と書かれている(消費者庁のサイトから)

 文字のサイズ・色や各事項の表示位置が適切かどうか、消費者が明確に認識できるかどうかを確認しましょう。

 誤認させるかどうかは、「その表示事項の表示それ自体並びにこれらが記載されている表示の位置、形式、大きさ及び色調等を総合的に考慮して判断」すると説明しています。

 また、定期購入契約の場合や解約に条件がある場合「お試し」や「いつでも解約可能」といった言葉を使うことはできません。

違反に該当するおそれのある表示。「いつでも解約可能」と書かれているが、詳しく注意書きを読むと解約方法がかなり限定されていることがわかる(消費者庁のサイトから)

 不実の告知とは、事業者が消費者と契約するときに、重要事項について事実と異なる説明をすることです。この不実の告知が禁止されています。

 重要事項とは次のような項目があります。

  1. 申込みの撤回・解除に関する事項
  2. 契約の締結を必要とする事情に関する事項

 具体的には「定期購入契約になっているので残りの分の代金を支払わなければ解約はできない」や「その商品は、いま使用を中止すると逆効果になる」とうそを伝えることです。電話だけでなくメールで伝えても「不実の告知」に当てはまります。

 契約した消費者が、違反する表示によって誤認した場合に「取消権」が創設されました。下記のような場合、消費者は契約を取り消せます。

  • 不実の表示……その表示が事実であると誤認した場合
  • 表示をしない……表示されていない事項が存在しないと誤認した場合
  • 申込みに関して誤認させるような表示……書面の送付・情報の送信が申込みとならないと誤認した場合
  • 表示事項について誤認させるような表示……表示事項(分量、価格等)について誤認した場合

 表示に違反があったり、不実の告知があった場合、消費者に取消権があったりするだけでなく、行政処分や罰則の対象になります。さらに、違反行為は適格消費者団体による差止請求の対象にもなります。

違反条項 個人 法人
表示しない
不実の表示
3年以下の懲役または
300万円以下の罰金
(併科あり)
1億円以下の罰金
誤認させる表示 100万円以下の罰金 100万円以下の罰金
不実の告知 3年以下の懲役又は
300万円以下の罰金
(併科あり)
1億円以下の罰金

 特商法の改正では、書面だけではなく電子メールやUSBメモリなどでもクーリング・オフできるようになります。

 契約書面等には、「書面又は電磁的記録により」クーリング・オフができる旨を書かなくてはいけません。

 契約を結ぶときに消費者から事業者にSNSで連絡したのに、SNSを用いたクーリング・オフの通知を受け付けないなど、一方的に通知の方法を不合理なものに限定することは、クーリング・オフの方法を制限する消費者に不利な特約に該当し、無効となる場合があるので注意しましょう。