目次

  1. 事業計画書作成の目的とは
    1. 社内向けの目的
    2. 社外向けの目的
  2. 事業計画書を実践する方法
    1. 課題をクリアするためのポイント
    2. 検証作業のポイント
  3. 金融機関に報告するポイント
    1. 事業計画の進捗
    2. 数値の途中経過
    3. 今後の行動計画
    4. 今期の数値計画
  4. 事業計画書は羅針盤

 これまで、事業計画書の作成から社内外への伝え方までお伝えしてきました。しかし、実際には事業計画を作って満足してしまい、経営に生かすことができない方もいます。

 今回は、事業計画を絵に描いた餅で終わらせないためには何をしたら良いかをテーマに解説します。

 まずは前回までのおさらいですが、改めて事業計画を作る目的について共有します。

 事業計画書作成の目的は大きく二つに分かれます。

1:自社の目的を明らかにする

 自分の会社がなぜこの事業を始めたのか、この事業を通じてどのようにしていきたいのかを明らかにすることです。

2:行動計画を明らかにする

 目的を達成するには具体的な行動計画が必要です。いつまでに、誰が、何を、どのように行動することで目的達成できるようになるかを明らかにします。

3:社内コミュニケーションを円滑にする

 会社全体で計画を示したとしても、事業部ごとに方針がバラバラでは目的達成に近づくことはできません。事業計画を通じて会社全体のコミュニケーションを円滑にします。

4:事業の進捗確認をする

 計画を立てるだけでなく、事業計画がどのくらいの達成度合いなのかを常に確認する必要があります。

1:資金調達を行う

 例えば、金融機関からの融資や国や地方公共団体などからの補助金を受ける際には事業計画書が必要になります。

2:事業に賛同してくれる人を募る

 出資など事業に賛同してくれる人を募るとしても、具体的な事業計画が無ければ、賛同者も判断などができません。

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 この中でも、今回特に重視したいのは「事業の進捗確認」になります。どのように進捗確認を進めればいいのか見ていきましょう。

 事業計画を生かすためには、まずは経営者や後継ぎ自身による行動が第一歩です。行動の指針になるのが、連載第3回で例示した具体的な行動計画になります。

 詳しくは第3回の「3:行動計画を具体的につくる」をご覧ください。

 連載第3回で例示した「池田パン店」が新規出店にあたって、行動計画に記した課題をクリアしなければならないという状況だったとします。その場合、考えるべきポイントは以下の通りです。

  1. 誰が実行するのか?(実行者)
  2. いつ実行するのか?(開始時期)
  3. いつまでに終わらせるのか?(期限)
  4. 効果検証をどのように行うのか?(検証方法)

 例えば、「移動販売をメインに活動する従業員の採用」を行う場合は、以下のようなイメージで計画表をまとめます。

実行者 開始時期 期限 検証方法
移動販売後の人員の配置想定(店舗と移動販売それぞれの人数) 池田社長 計画作成後すぐ(12月1日から) 12月5日 採用後の稼働具合を見て、追加募集か配置転換をするか判断する
SNSでの募集告知 従業員Aさん 12月5日(社長が採用人数や採用条件を決めた後) 1月末(従業員の採用が決まるまで) 採用後の稼働具合を見て、追加募集か配置転換をするか判断する
アルバイト募集サイトに掲載するために電話をかける 従業員Aさん 12月5日に電話し、営業の話を聞く 1月末(従業員の採用が決まるまで) 採用後の稼働具合を見て、追加募集か配置転換をするか判断する
チラシを作成し、店頭の見えるところに貼る 従業員Aさん 12月5日(社長が採用人数や採用条件を決めた後) 1月末(従業員の採用が決まるまで) 採用後の稼働具合を見て、追加募集か配置転換をするか判断する
面接日時の確保 池田社長 12月1日から、決まった曜日、時間帯を面接日時として確保する 1月末(従業員の採用が決まるまで) 採用後の稼働具合を見て、追加募集か配置転換をするか判断する

 小さい会社であれば、社長がすべて行うケースもあるでしょう。しかし、何店舗も抱えたり、事業規模が拡大したりしたら、そういうわけにはいきません。

 そこで担当者を決めて、行動の開始時期、終了時期を定めて行動していきます。最も大事なのは行動した結果どうだったのかという検証作業です。

 検証作業のポイントは以下の通りです。

  1. こちらの意図している通りに進んだか?
  2. 想定通りに進まなかったら、何が原因だったか?
  3. 改善すべき行動は何か?
  4. 行動していくことで、目標に近づいているか?

 先ほどの計画表をもとに、「池田社長」が行動した結果、以下のような結果になりました(太字が行動後の結果)。

実行者 開始時期 期限
移動販売後の人員の配置想定(店舗と移動販売それぞれの人数) 池田社長 計画作成後すぐ(12月1日から)

12月5日→2人採用することに決定

SNSでの募集告知 従業員Aさん 12月5日(社長が採用人数や採用条件を決めた後)

1月末(従業員の採用が決まるまで)→10人興味を持ち、うち3人と面接

アルバイト募集サイトに掲載するために電話をかける 従業員Aさん 12月5日に電話し、営業の話を聞く

1月末(従業員の採用が決まるまで)→費用をかけたが、思うように応募者が集まらなかった

チラシを作成し、店頭の見えるところに貼る 従業員Aさん 12月5日(社長が採用人数や採用条件を決めた後)

1月末(従業員の採用が決まるまで)→店頭チラシで興味を持った人が多く、20人から問いあわせがあり、うち8人と面接)

面接日時の確保 池田社長 12月1日から、決まった曜日、時間帯を面接日時として確保する

1月末(従業員の採用が決まるまで)→面接する人数が多かったので、もう少し明確に採用基準を決めた方が良かった

 以上の表のようにプロセスをまとめて、予定人員を採用できれば良いのですが、もし採用できなかった場合は改善の必要があります。

 採用条件の明確化や募集方法の変更などといった、新たな行動計画を策定して進めていきます。

 その積み重ねによって目標に近づけるのです。

 これらの行動計画と進捗確認は原則社内で行います。本来は金融機関への報告は必要ありません。

 しかし、3カ月に1回くらいで途中経過を報告すれば、金融機関も安心できます。少なくとも収益に影響を及ぼす事柄については報告した方が、金融機関の担当者は安心します。

 具体的にはこの後に記載する項目を網羅してあれば、報告の内容としては十分です。万が一事業計画を大幅に変えざるを得ない事態が生じても、定期的な報告をしていれば、金融機関から早めのサポートも受けられます。

 筆者が実際にアドバイスしたある企業は経営状況が苦しく、金融機関からの借り入れの返済を猶予してもらっていました。その時に金融機関からは、3カ月に1回、事業計画の状況を報告するように言われたそうです。

 筆者からは経営者の方に、金融機関向けの資料を作成するアドバイスをしました。その時のポイントは以下の通りです。

 「製品Aの製造に集中し、営業活動も製品Aを継続して購入してくれる会社に絞っている」というように、事業計画の中で現在進行形で動いていることを詳しく説明するようにしました。

 当初立てた数値計画との乖離はないか、あるとすれば原因は何か、改善策はどのようなものかを具体的に書くように伝えました。

 返済猶予を受ける際に事業計画書は提出していますが、当初の計画と変わりはないか、変更があればどの部分なのかを伝えるようにしました。

 行動計画を踏まえた結果、どのような数値になるのか、当初の計画との乖離はないかを説明します。

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 以上の項目を3カ月に1回継続して報告をしたところ、金融機関からの信用度が上がり、かつ事業回復することができました。

 このように、事業計画の進捗を金融機関に対して定期的に行うことで、金融機関からの信用が高まるだけでなく、自分自身の事業の振り返りを定期的に行う習慣がつき、結果として数値が回復することにつながります。一度実践してみてはいかがでしょうか。

 事業計画書はよく羅針盤に例えられます。初めての目的地に行くのに、地図も持たないのでは、ゴールにたどり着けません。

 事業計画は自分が事業を通じて何を実現したいかを示すものです。どこにどうやって向かうのか、どのようなプロセスを経て進むのか。家業のこれからを考えるために避けて通れないのが事業計画なのです。

 全5回の連載が後継ぎの皆さんにとって、家業の将来を考えるためのきっかけになれば幸いです。