目次

  1. かばん製作の全工程を体験
  2. ビデオ通話で発注が可能に
  3. コロナ禍でインバウンドが暗礁に
  4. 父の胃がんをきっかけに家業へ
  5. 「観光客に依存する販売」に危機感
  6. 「ランドセル製作体験」が話題に
  7. コロナ禍に耐え「やっと出発」

 20年5月、「但馬(たじま)の小京都」と呼ばれる城下町の出石町に、かばん製作体験施設「かばん工房 遊鞄01(ゆうほうゼロイチ)」が開館しました。

 面積は300平方メートル超。レザーバッグや革小物を専門とし、ミシン、革すき、刺繍、刻印、レーザー加工などに必要な機械や設備がそろい、来訪者は製作の全工程を経験できます。体験の平均価格は約1万4千円。安価で体験できる革小物(1100円)から、13万2千円に及ぶ本格的なかばん作りに挑んだ人もいたそうです。

 「国内最大規模」という施設を開いたのが、かばん職人でもある坂井さんです。1960年に創業した家業の「昭栄」の経営を、2021年に引き継ぎました。

 社員は7人(22年6月現在)。「職人全員がかばんを一から手作りできて、CADも使える」というエキスパート集団です。分業制が多いかばん製造業界で、職人全員がフルオーダーに対応できるケースは珍しいそうです。

「遊鞄01」では最大100人の受け入れが可能です(昭栄提供)

 坂井さんは信用金庫から約8千万円の融資を受けて土地を購入し、「遊鞄01」を建てました。一般的な工場と比べても見劣りしない設備や素材が整い、同業者が全国から視察に訪れています。

革の断裁から体験できるかばん製作体験施設は極めて珍しいといいます(昭栄提供)

 館内では壁の大モニターが目を見張ります。Zoomなどビデオ会議システムを利用し、世界中から完全フルオーダーのバッグの注文を請けられます。

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