競合分析のやり方、8ステップの手順で解説 フレームワークの使い方も
事業が成功するためには、特定の顧客にとって競合他社よりも価値ある商品を提供する必要があります。そのために、競争する相手を正しく理解することが欠かせません。この記事では、競合分析とは何か説明したうえで、競合分析のやり方をフレームワークの紹介も交えながら解説します。
事業が成功するためには、特定の顧客にとって競合他社よりも価値ある商品を提供する必要があります。そのために、競争する相手を正しく理解することが欠かせません。この記事では、競合分析とは何か説明したうえで、競合分析のやり方をフレームワークの紹介も交えながら解説します。
競合分析とは、自社と似たような商品やサービスを展開する組織を特定し、その脅威度、強みや弱み、自社との違いを分析することです。
単に特定のライバル企業の情報収集をするだけではなく、市場に存在する複数の競合他社を対象に分析して、市場全体の構図を把握します。
そのうえで、自社の商品・サービスを市場でどのように位置づけるかや、差別化戦略を考えることが、ビジネスを有利に進めるためにとても大切になります。
情報を集めたら、それをしっかり分析し、事業戦略へ活かすまでが競合分析です。
事業環境を分析するためのいくつかの有名なフレームワークにおいても、競合分析は必ず含まれています。
例えばマイケル・ポーター氏が『競争の戦略』において発表した【5つの力(five forces)】は市場の魅力度(つまり儲かりやすさ)を理解するためのフレームで、「競合との競争環境」「新規参入者の脅威」「代替品の脅威」「サプライヤーの交渉力」「顧客の交渉力」を分析します。
また、マーケティングのミクロ環境分析フレームである3C分析では、「顧客Customers」「競合Competitors」「自社Company」を分析したうえで、自社商品のポジショニングを検討する材料とします。
このように、競合分析は事業環境を理解するうえで、欠かせない要素の一つといえます。
競合分析の目的は、既述のとおり、競争環境を正しく理解したうえで自社の戦略を立てることですが、もう少し詳しく分類すると以下のような目的が挙げられます。
競合分析を行うときは、一定の成果が得られるように、自社はどのような目的を掲げていたのか定期的に立ち返ることが大切です。
競合分析のやり方は目的や業界によってさまざまですが、一般的な手順は次の通りです。
以下で、それぞれのステップについて、コツを交えながら詳しくご説明します。
まずは、市場内で自社と似たような商品やサービス展開する企業名(あるいはブランド)を、できる限り網羅したリストを作ります。
今のところは存在感の薄い競合でも、将来的に勢いをつける可能性もあります。見逃さないようにするために、ひとまず大きなリストには含めておきましょう。
このリストは、市場が現状でどのくらい混みあっているか示すため、定期的に見直して、メンテナンスすることをおすすめします。
その中から、さらに詳しい情報を調べるべき企業やブランドを複数選びます。一般には、シェアや売上が大きい、顧客満足度が高い、自社との類似性が高い、急成長している、マーケティング活動を活発に行っている、などを基準に選ぶとよいでしょう。
特定分野の改善を目的に競合分析を行う場合は、その分野で特徴や定評のある企業やブランドも含めます。
選ぶべき数は、市場にどれだけプレイヤーがいるかにもよるため、特に決まった基準はありません。ただし、あまり多すぎると作業にかなり時間がかかってしまうため、その点は注意してください。
競合分析はいきなり細かい比較に入らず、まずは競合のホームページや株主情報、業界データなどから、以下のように大きな視点で情報を集めます。
【売上やシェア】
できれば直近2~3年にわたって調べましょう。これは各競合がどのくらいの顧客を抱えているのか、勢いがあるのか陰っているのかを知るのに欠かせない情報です。
【想定されるターゲット層】
ハッキリと確定はできない場合でも、ホームページの記載内容や広告の写真などから総合的に考えて想定します。
【簡潔な4P】
4Pとは、マーケティング戦略を考えるうえで用いられるフレームワークであり、Pの頭文字で始まる4つの事柄「Product(商品)」「Price(価格)」「Place(購買場所)」「Promotion(プロモーション)」を指します。
ここでは各項目について詳細ではなく、簡潔に記載します。例えば下記のような形です。
商品 | 高機能/多機能 |
価格帯 | 高 |
購買場所 | オンラインのみ |
プロモーション | SNSと専門誌中心 |
【その他】
必要に応じて、会社規模、財務状況、展開地域などを調べる場合もあります。
次に商品やサービスの特徴を詳しく調べます。ホームページやカタログを見たり、あるいは実際に商品を購入したりして調べます。
調べた結果は、電化製品のパンフレットの後ろに載っているような比較一覧表にすると便利です。その際は、自社の欄も必ず設けるようにしてください。
内容は業界によって様々ですが、下記に主だった例をあげます。
ポイントは、パッと見てわかるようにできる限りシンプルに描くことと、数字を入れることです。
ここは見落されがちですが、業界によってはとても重要となります。主に以下のようなものが含まれますので、自社のビジネスに関連しそうなものを選び、調べて一覧に加えます。
これまではホームページなどから簡単に手に入る情報をもとに調べてきましたが、それでは情報が足りない場合には、目的に沿って市場調査をすることもできます。
主に下記のような内容で行うことが多いです。
【アンケート調査、インタビュー調査など】
・認知度
・顧客の詳しい属性
・満足度
・購入理由
・購入前に接触した情報
・現在の顧客が当該商品を使うようになった経緯
【WEB、口コミ、SNS調査など】
・WEBアクセス数関連、SEO戦略、検索順位やキーワード
・商品レビュー分析
・競合のSNSアカウントの内容、フォロワー数、エンゲージメント
・競合に関するユーザーの自発的投稿の有無やその内容
【購買データ分析】
・購入時期
・購入者の詳しい属性
・併売商品(同じ時期に買っている別の商品)
・前に使っていた商品
・リピート率(購入頻度が高い商品の場合)
【ミステリーショッパー】
・店舗でのサービスクオリティ
市場調査の具体的な方法については、下記で紹介していますので、そちらをご覧ください。
一覧表ができたら、市場全体の構図を理解しやすいよう、視覚的にマッピングします。競合だけでなく、必ず自社を含めます。
これによって、特に自社の位置づけを客観的に把握したり、自社に近い競合を特定したり、あるいは市場でどのゾーンが空いているのかなどが理解できます。
マッピングの方法は多種多様なので、下記にいくつか紹介します。
初めに価格帯と提供ベネフィットの両面からマッピングするフレームです。どの業界でも共通して使えます。先入観を捨て、作成した一覧表から客観的に判断して作成することがポイントです。<ステップ2と3から総合的に考えて作ります>
主な商品特徴や、重要な顧客価値によって要素1と要素2を決定してマッピングする例です。<ステップ2、3、4から視点を絞って作ります>
軸の先には相反する2つの言葉が入ります。例えばチョコレートやお菓子をマッピングする場合には、縦の軸は「1-1甘い」「1-2ビター」、横軸は「2-1デイリー」「2-2特別な」といった具合です。縦軸と横軸は、関連しない言葉を選ぶのがコツです。
同じ業界でも、軸の取り方によってかなり違った見え方になりますので、センスが問われるところでもあります。社内で議論をしながら作成するのもよいでしょう。
また、軸の設定の仕方で注意したいのは、顧客にとって商品やサービスを選ぶ基準になっているか、という点です。
競合との違いを示したいあまり、顧客にとってあまり関心のない要素を軸にとってしまう失敗例がよくありますので、気をつけてください。
似たようではありますが、特に縦軸・横軸を用いず、4象限に分けて整理する方法もあります。
この場合は、要素1-1と1-2は必ずしも内容が意味的に相反する必要はなく、重ならない内容になっていれば大丈夫です。例えば「1-1個人向け」「1-2法人向け」といった形です。
その他に、具体的な改善策を検討するためのバリューチェーン分析やブルーオーシャン戦略マップなどのフレームワークもあります。
ただし、より詳しい情報へのアクセスが必要となるうえ、慣れていない場合は作成に時間がかかってしまったり、活用の仕方が難しかったりすることもあるため、必要性を見極めてから実施するとよいでしょう。
ここまで整理してきた情報をベースに、競合に対して自社の強み・弱みを書きだします。あくまで、顧客にとっての価値を生み出しているかを基準に強み・弱みを考えてください。
SWOT分析というフレームワークを用いてもよいでしょう。SWOT分析とは、S(強み)、W(弱み)、O(機会)、T(脅威)を次のようなフレームで分析する方法です。
ここで作成するのはあくまで簡易的なSWOTです。事業戦略のための本格的なSWOTを作成するためには、競合分析だけでなく、外部環境分析(業界全体の動き、規制緩和、社会のニーズ変化など)や自社の分析(リソースや営業体制も含めて)などもあわせて行う必要があります。
競合分析において、キレイに表やマップを作って満足してしまい、放っておかれてしまう、というのが一番よくある失敗例です。
大事なのは、集めた情報や分析した結果をベースに、市場でどう戦うべきなのか、自社の戦略を考えることです。以下に考えるにあたっての視点をご紹介するので参考にしてみてください。
これらを元に、自社の目指すべきポジショニング、適正な価格、商品やサービス機能の改善、キャンペーン方法の見直しなどを検討します。
競合分析をする際にはITツールを使ったほうがよいのか、という質問を少なからず耳にします。
一般的な競合分析であれば、ご紹介した流れに沿って行えばツールがなくてもできる部分がほとんどです。一方で、WEBアクセス状況やSEO戦略、SNS関連情報のデータをとる場合はツールの利用を検討したほうがよいでしょう。
競合分析をして戦略を決めたら、必ずアクションに移しましょう。丁寧に競合分析を行えば、たとえ大きな戦略を変える必要がなかったとしても、小さな改善をするべき点はたくさん見つかるはずです。
競争環境は、日々変化します。一度作ったら終わりではなく、定期的に見直す必要があります。一方で、あまりに時間をかけるのも本末転倒ですので、バランスが大事です。
最後に一つ注意があります。現在の競合だけを見ていると、ある日突然全く違うところから市場に殴り込みをかけてくる会社があらわられ、既存プレイヤー全てが苦境に立たされるということもあります。
競合分析は大事ですが、同時に「新規参入」や「代替品」の脅威にも目を光らせて、対応が遅れないように注意したいところです。
競合分析は、単に敵から学ぶためのもの、と捉えられてしまう場合もありますが、そうではありません。
市場にいるプレイヤーを正しく理解することで、それぞれがどのように顧客に価値を与えているかを可視化して、自社がとるべきポジションや戦略を検討するためのものです。
競合分析をしっかり行い、顧客にとって価値ある商品やサービスの提供につなげていただければと思います。
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