OMOとは?O2O・オムニチャネルとの関係性やメリット、事例を紹介
OMO(Online Merges with Offline)とは、オンラインとオフラインを融合させながら顧客の体験価値を高めていくマーケティング戦略です。顧客情報を効率よく収集し、リピート率の向上につなげられるメリットもあります。この記事で、OMOの重要なポイントを解説します。
OMO(Online Merges with Offline)とは、オンラインとオフラインを融合させながら顧客の体験価値を高めていくマーケティング戦略です。顧客情報を効率よく収集し、リピート率の向上につなげられるメリットもあります。この記事で、OMOの重要なポイントを解説します。
目次
OMOとは、Online Merges with Offlineの略で、オフラインがなくなる未来に対応するために、オンラインとオフラインを融合させながら取り組むマーケティング手法です。特に店舗型ビジネスで急速に注目を集めている施策であり、今は低い投資で導入しやすくなっています。
現代は、生活環境にあるさまざまなモノ・コトが、インターネットにつながり始めている時代です。今までのような「オフラインかオンラインか」と区別する考え方が変わり、顧客の消費活動も変化しています。
例えば、ある時は店舗でショッピング、ある時はECサイトでショッピングという行動は当たり前になってきました。また、最近では、例えばAmazonのAlexa(クラウドベースの音声サービス)を使い、「紅茶を再注文して」「出前館でいつもの注文して」と声をかけるだけで商品やサービスを購入できるようにもなってきています。
OMOの本質は、こうした消費活動の変化にあわせて、オンラインに中心を置き、そこにどのようにオフラインを融合させて顧客の体験価値を高めるのか考えていくことにあります。店舗で売上を上げるためにデジタルがあるのではなく、デジタルで売上を上げるために店舗がある、と考えるのがOMOです。
OMOとあわせて紹介される言葉に、O2Oとオムニチャネルがあります。
O2OとはOnline to Offlineの略で、オンラインからオフラインへ送客するマーケティングのことです。マーケティングの4Pでいうところのプロモーションの位置づけになります。例えば、ネットで告知し、店舗などに送客するような施策などを指します。店舗型ビジネスにおいては、最初に行うべきデジタルマーケティングとなり、OMOを考えるうえでも重要な施策です。
オムニチャネルとは、店舗、ECサイト、アプリやSNSなど、多様化するさまざまな顧客とのチャネルを網羅し、顧客に購入方法を意識させず、どのチャネルでも同様なユーザー体験を提供する戦略です。マーケティングの4PでいうところのPlaceが意味する戦略であり、OMOを実現するために重要な施策となります。
以前は多くの人が週末になると店舗を回り、ウィンドウショッピングを楽しんでいましたが、最近ではECサイトで買い物を済ませる人も少なくありません。
オムニチャネルは、全方位で顧客との接点を網羅することで、注文機会を逃さないようにする戦略です。ほかにも、顧客の趣味趣向を知ることができるメリットもあります。
OMOとO2O・オムニチャネルは区別されるような説明が散見されますが、筆者は今説明したようにOMOの一片であると考えています。
「時代はOMOであり、O2Oやオムニチャネルは古い」と判断するのではなく、オンライン中心であるOMOの観点で自社のサービスをとらえ、どのようにO2O施策を組み込むか、どのようにオムニチャネルに取り組めばよいのか見極めることが大切です。
OMOの代表的な施策としてショールーミングがあります。ショールーミングとは店舗で商品の展示だけを行い、販売はスマホアプリを通して行うことをいいます。店舗の役割を、実際に商品を手にとれる体験と、店舗が存在することによる広告機能のみにした手法です。
「店舗ではメガネの製造、決済はアプリ」というメガネ屋や、ショールーミングとは異なりますが、「会員登録から入退室の管理、決済まですべてアプリ」というスポーツジムやコワーキングスペースなど、同様の仕組みでサービスを展開する事例が増えています。
OMOのメリット・デメリットを見ていきましょう。
OMOの本質は、前述したようにオンラインを中心に据え、そこにオフラインを織り交ぜながら顧客の体験価値を高めることです。デジタルを軸とするため、施策を進めることで、アナログでは難しかったさまざまな顧客情報を効率よく集められるようになります。多様な顧客情報を集められれば、効果的なリピート施策にも取り組むことが可能になり、LTV(顧客生涯価値)を最大限に引き上げられます。
また、OMOの代表例であるショールーミングの場合、店内の人件費や店舗ごとの在庫も抑えられます。D2Cビジネスなど、元々ECを中心に売上を上げている単品直販などの事業が、ショールーミングに取り組むケースは少なくありません。
一方で、OMOは、取り扱いサービスや商品、販売するターゲットによって向いていないものもあります。例えば、ハウスメーカーの住宅など「一生に一度のお買い物」といった商品や、B2Cにおけるプレゼントや贈答品、旅行などのお土産などその瞬間のプレミアムな商品・サービスは、デジタルの力を使って何度もリピート購入させ、LTVを上げる戦略が不向きな商材です。むやみに取り組むと、かえって既存客を失う可能性もあるでしょう。
このリスクを避けるには、まず手段が目的化しないようにすることが大切です。OMOを導入するときは、本当にその手法は顧客のためになるのか、事業の維持・継続につながるのか、といった視点を常に忘れないようにする必要があります。
OMOに取り組むためには、主に次のステップを踏みます。
まずは、必要なデータを収集して分析するところから始めましょう。データをもとにOMOに適した商品を見極めたり、販促の施策を考えたりすることで、OMOのためにお金を投じたもののまったく効果が出ず、むしろ毎月出費だけ増えてるという状況を避けられます。
分析するデータはさまざまですが、まずは売上データや顧客データから始めることをおすすめします。このデータは自社のなかにしか存在しえない最も重要な指標です。
その日の売上と顧客が何人きたのかがわかると、平均客単価がわかります。どの商品がどれだけ店舗の売上に貢献しているのかなども分析可能です。なお、計算自体をエクセルなどで自動化できれば、必要な指標(KPI)だけをチェックするだけで済むので、ぜひ試してみてください。
また、専門機関が収集しているデータの分析も行いましょう。特に、お店から徒歩数分以内にどんな人が住んでいるのか、数字で把握することは重要です。このデータは政府統計ポータルサイト「e-Stat」で無料で入手できます。
「近所の顧客のことは十分にわかっているよ」と思われるかもしれません。しかし、実際に店舗に来ているのは近所のごく一部の人たちです。最大手のハンバーガーチェーン店ですら飲食店シェアの3%以下とされています。
なお、筆者のTwitterでは、e-Statで「東京駅から徒歩10分圏内の住人統計情報を入手する手順」をまとめているので参考にしていただけると幸いです。
次にO2Oに取り組みます。次の施策がおすすめです。
無料のプラットフォームを活用し、オンライン上でサービス内容を周知することから始めましょう。飲食店であれば、食べログ、ぐるなび、hotpepperグルメ、Rettyが有名です。
ほかにも、Googleマップなど地図に最適化するMEOやGoogleビジネスプロフィール(旧称:Googleマイビジネス)、イベントの周知に役立つプラットフォームの活用もよいでしょう。
ネット広告も店舗送客へ役立てることができます。Google広告などでは利用者のスマートフォンの位置情報などから、特定のエリアに絞って広告を配信できます。また、種類にもよりますが、代理店などを通さずに自身で運用する場合、月に数千円から始めることも可能です。
なお、広告を用いるときは、広告をクリックした際に表示するランディングページや、自社ホームページの精査も重要です。
O2Oといえば、新規の見込客を店舗へ送客することがよく注目されますが、既存客のリピートを促すことも有効です。ツールは、低コストで始められるLINEやTwitter、Instagramがおすすめです。
オムニチャネルは、顧客に対し全てのチャネルを網羅的にアプローチするマーケティング手法です。
オムニチャネルによって、顧客は店舗でもECサイトでも都合の良い方法で商品を購入できます。先に紹介したO2Oを目的とした販促企画を行い、店舗へ送客できなかった顧客であっても、ECサイトなら購入してくれる可能性があります。そうしたチャンスを取りこぼさないようにできるのが、オムニチャネルのメリットです。
オムニチャネルは、現時点でシングルチャネルなのか、マルチチャネルなのかによって取り組み方が異なります。
シングルチャネルからスタートの場合は、まずはマルチチャネルを目指します。
例えば、小売りであればECサイトに取り組むことから始めるとよいでしょう。店舗で購入して気に入った商品を、ECサイトでも購入できるとなれば、リピーターになってくれる可能性が高まります。ただし、店舗で購入した人と、ECサイトで購入した人が同一人物かどうかはわからない点に注意が必要です。
すでにマルチチャネルの場合(あるいは、上記の取り組みでマルチチャネルになった場合)は、オムニチャネルを目指します。
ここで重要になるのは、店舗で会計した顧客と、ECサイトを利用した顧客が同一人物かどうかを判別するために、店舗のPOSレジの会計データとECサイトなどのデータを連携させることです。筆者は次の方法をおすすめしています。
店舗のPOSレジと会員アプリ、ECサイトのデータ連携を行ったら、運用前にこれら3つがつながっているか確認しましょう。
ここまで進めば、OMOの基盤はすでにできています。あとは、収集したデータやさまざまな具体例を見てヒントを得ながら、どのようなシステムやツールを使い、どのような施策に取り組めば顧客の体験価値を高められるのか、などを詰めたうえで始めていきましょう。
取り組みを始めたら、顧客の反応や結果を見ながら、ときに軌道修正したり、ときに別の施策を試したりしながら、意味のないものにならないように改善を繰り返し行います。
ハンバーガー店の専用アプリの事例を紹介します。
こちらの店舗では、もともとO2Oの取り組みを積極的に実施しており、特にSNSではフォロワーと強力なエンゲージメントを築いていました。しかし、顧客の購買情報などは取得できていなかったため、OMOへの専用アプリ開発に取り掛かりました。
開発した専用アプリには、そこからメニューを注文することでテーブルを確保し、列に並ぶことなく注文を済ませられるモバイルオーダー機能を搭載。その機能を使ってもらうことで顧客の購買履歴を把握できるようにしました。
さらに、顧客の購入頻度に応じたクーポンを、一人ひとりに発行できるようにし、クーポンの提示によって‘POSによる会計で顧客の購買情報を取得できるようにもしました。
その結果、このハンバーガー店では、獲得した顧客情報をもとに、ロイヤル顧客へ個別のインセンティブや、休眠顧客の掘り起こしなどを行なえるようになりました。
モバイルオーダーアプリは、アプリのコンテンツの管理するCMS、顧客管理システムCRM、クーポンの管理システム、商品管理システム、注文情報・決済情報を管理するPOSを含めた基幹システム、キッチンの調理情報を管理するKDS(キッチンディスプレイシステム)、WEBとメールを統合管理するマーケティングオートメーションといった、多岐にわたるシステムの連携を行ってはじめて実現できる仕組みです。
そのため、以前は非常に大きな導入コストがかかっていましたが、機能をある程度制限すれば、低価格で利用できるサービスも出始めています。
現在、さまざまなビジネスがDXを推進しています。DXは多様に変化する外部環境に適応するために、デジタル技術を駆使して内部環境の変革を目指す施策です。
周知のとおり、オフラインの店舗ビジネスは、外部環境の変化に大きく左右されます。そのため、ほかのビジネスよりも特にDX推進(店舗DX)が必要な分野といえるでしょう。
OMOは、その第一歩となる取り組みです。中小企業も実施しやすい環境が整ってきたので、ぜひチャレンジしてください。
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