目次

  1. バリューチェーンとは 意味をわかりやすく解説
    1. バリューチェーンの構成要素
    2. バリューチェーンとサプライチェーンの違い
  2. バリューチェーンが事業において重視される理由
    1. 自社の事業工程を可視化できる
    2. 各工程のコストや問題を洗い出せる
    3. 事業計画への貢献度を明確にできる
  3. バリューチェーンを活用した事例2つ
    1. 家具量販店
    2. コーヒーチェーン店
  4. バリューチェーン分析の手順
    1. バリューチェーンを洗い出す
    2. コストを分析する
    3. 自社の強み・弱みを把握する
    4. VRIO分析を行う
  5. バリューチェーン分析を行う際の注意点
    1. 競合他社の分析も並行する
    2. 自社で完結している事業以外はあまり適していない
    3. 環境の変化に応じてバリューチェーンを再構築する
  6. バリューチェーンの活用は事業拡大の王道的手法

 バリューチェーンとは「価値連鎖」と訳され、企業の各部門の活動を価値の連鎖として考えるフレームワークです。ハーバードビジネススクール教授で経済学者でもあるマイケル・ポーターによって提唱されました。

 この各部門それぞれの活動(機能)において、「どのような価値が生み出されているのか」「コストはどれくらい発生しているのか」「強み・弱みは何か」などを、詳細に分析する方法をバリューチェーン分析といいます。

 バリューチェーン分析の目的は、企業全体として顧客に提供できる付加価値を高めていくことにあります。

バリューチェーンの分析手法を取り入れるメリット(デザイン:吉田咲雪)

 バリューチェーンでは、原材料・部品などの調達から商品・サービスを顧客に提供するまでのプロセスに直接関係ある機能を主活動、間接的に関与する機能を支援活動と位置付けます。

 一般的な製造業では、前者(主活動)として「購買物流」「製造」「出荷物流」「販売・マーケティング」「サービス」などがあり、後者(支援活動)には「全般管理(インフラストラクチャ)」「人事・労務管理」「技術開発」「調達」などが挙げられます。

 以上の各活動を視覚的なフレームワークに落とし込み、「マージン(利益)」を乗せることで、自社ビジネスの構造を可視化できます。

 「バリューチェーンはよく知らないが、サプライチェーンなら聞いたことがある」という人も多いでしょう。サプライチェーンは「供給連鎖」と訳され、原材料・部品等の調達から商品・サービスを顧客に提供するまでのモノやカネの流れのことを指します。

 一見、バリューチェーンと似ていますが、サプライチェーンはあくまで「モノやカネの流れ」に着眼するのに対し、バリューチェーンでは各機能における付加価値に着眼する点が異なります。

 なお、サプライチェーンを構成する企業群が、各種情報を共有・管理することで、プロセス全体の最適化を目指すものが、よく知られた「SCM(サプライチェーン・マネジメント)」です。

 前述のとおり、バリューチェーンは、企業内の各機能について、その付加価値を明らかにするバリューチェーン分析に用いられます。バリューチェーンが事業において重視されているのは、この分析手法を使うことにより、以下のメリットが生じるからです。

  • 自社の事業工程を可視化できる
  • 各工程のコストや問題を洗い出せる
  • 事業計画への貢献度を明確にできる

 それぞれ詳しくみていきましょう。

 自社の各機能を細かく観察することにより、それぞれの機能の強み・弱みなどが明らかになります。これらの各機能が有機的に結びついた状態が、自社全体の事業工程そのものです。

 そのためバリューチェーン分析により、以下のポイントが可視化されるようになります。

  • 大きな付加価値を生み出す機能は何か
  • 行程のなかでボトルネックとなっている機能はどれか

 これらがわかることで、付加価値を生む機能を磨き上げてさらなる差別化につなげたり、ボトルネック工程を集中改善して工程全体の能力を向上させるなど、事業にとってさまざまなメリットが発生することになります。

 バリューチェーン分析を行っていくなかで、それぞれの機能で発生するコストを測定します。それぞれのコストの絶対値はもちろん、以下で説明する付加価値との比率を確認することで、そのコストが妥当なものなのか判断することも必要です。

 コストの測定では、ある工程で発生しているコストが他の工程に影響しているケースがあるため、他の工程との関係も見ることになります。

 例えば、品質管理のコストを削ることで一時的な費用改善を実現できるかもしれませんが、その結果が販売やアフターサービスに悪い影響を与える可能性は十分に考えられます。

 バリューチェーン分析によって各工程のコストや問題が洗い出せれば、事業の付加価値に貢献していない無駄なコストの削減や、問題の解決策の検討や実施といった手を打つことができるようになります。そのため、事業において注目されているのです。

 実際に売上が計上されるタイミングは商品・サービスの販売後ですが、「お客様が何に対して対価を払ったのか」、すなわち「顧客にとっての本当の付加価値がどの工程で生まれているのか」を、バリューチェーン分析で明らかにできます。

 例えば、食品加工製造業の場合、「顧客がボリュームの多さに価値を感じた」のであれば、原材料を低価格で調達するプロセスの貢献度が高いといえます。

 一方、食感や味そのものに価値を感じているのであれば、研究開発や生産のプロセスが貢献していることになります。

 ここでは、バリューチェーンを活用することで事業変革を実現した2社の事例をご説明します。

 家具業界(量販店)のバリューチェーンは以下のようになります。

商品設計→部材調達→商品製造→物流(店舗への配送)→店舗販売

 最後の店舗販売のプロセスでは、店舗内に多くの家具が並び、そのなかから顧客が選んだ家具を購入すると、物流センター(倉庫)から商品が顧客の自宅に配送される、という流れがイメージできるでしょう。

 しかし、ある世界的な家具量販店は「店舗販売」の次に、「顧客による自宅での組み立て」というプロセスを創造しました。

 つまり、店舗で購入した顧客の自宅に、完成品ではなく「家具を完成させるための部材一式」を届けることにしたのです。

 これにより、顧客は「自分のお気に入りの家具を、自宅で、自分の手で完成させることができる」といった体験を手にできるようになりました。

 世界的な家具量販店にとっては、以下のメリットがあります。

  • 「商品製造」プロセスの簡略化
  • 完成品ではなく部材で在庫を持つため物流センターのスペース削減、顧客への配送時の荷台スペースの効率的活用

 顧客にとっての付加価値を拡大することが、同時に自社のプロセス改善につながっている優れた事例といえるでしょう。

 コーヒーチェーン店の場合、以下のように製造業に近いバリューチェーンとなります。

購買物流→製造→出荷物流→販売・マーケティング→サービス

 ある大手コーヒーチェーン店では、南アメリカやアフリカの珈琲豆供給業者と深い関係性を構築しています。そのため良質な豆を安く仕入れることができており、「購買物流」の付加価値が高くなっています。

 さらに、顧客が美味しいコーヒーを楽しむ店舗においては、シンプルで落ち着く内装やクレンリネスの徹底など、顧客がホッとできる空間を作り出すことに成功しています。この点では「サービス」の付加価値も大きいといえます。

 バリューチェーン分析を行えば、どうすれば他社に模倣されにくい独自性を獲得できるのか、そのヒントが得られる事例です。

 ここまで、事業を変革するにあたって、バリューチェーンが非常に有効な手法であることを解説してきました。次にバリューチェーン分析を行う手順を紹介していきます。

 バリューチェーン分析の手順は以下のとおりです。

  1. バリューチェーンを洗い出す
  2. コストを分析する
  3. 自社の強み・弱みを把握する
  4. VRIO分析を行う

 順番に説明していきましょう。

 まず、自社のすべての機能を洗い出します。そのうえで、調達・生産から顧客への提供・サービスに至る流れに直接関連するものは主活動、間接的なものは支援活動と位置付けます。

 特に主活動については、業務の内容を細かく精査したうえで、「どのような付加価値を生み出しているか」を書き上げていきます。

 ここで適切に洗い出しを実施しておくことで、この後の流れがスムーズになります。

 機能ごとにコストを明らかにします。GoogleスプレッドシートやExcelなどの表計算ソフトを用い、発生コスト(通常は年間単位)を担当部署ごとに記載していきます。前述したように、ある工程にかかるコストが別の工程に影響しているケースもしばしばあるので、表面上の数字だけでなく、「なぜこの数字なのか」実態から確認するようにしましょう。

 各機能の強み・弱みを分析します。ここでのポイントは以下の2つです。

  • 過去の自社や他社の機能と比較しながら行う
  • それぞれの機能の内外のメンバーを集めて行う

 「強み・弱み」というのは相対的なものですから、「過去の自社の状況」や「他社の状況」と比較しながら洗い出す必要があります。

 また、洗い出しの視点は多いほうがよく、特に「内部関係者の主観的な視点」と「外部からの客観的な視点」は、いずれも欠けることのないようにしてください。

 VRIO(ブリオ)分析とは、以下の4つの視点から企業や事業を分析するものです。

  • 価値(Value):自社の経営資源にどの程度の経済的価値があるか
  • 希少性(Rareness):自社の経営資源を他社と比較した際に稀少性はあるか
  • 模倣可能性(Imitability):自社の事業は模倣されやすいものか
  • 組織(Organization):経営資源や自社事業を活かすための組織体制は構築できているか

 本来は企業、または事業の中核能力(コアコンピタンス)を分析する手法ですが、バリューチェーンの各機能を分析するのにも有効です。

 各機能の分析を完了後、企業(事業)全体のVRIO分析も実施することで、バリューチェーン全体の中核能力が明らかになります。

 バリューチェーン分析を行う際の注意点を3点、ご説明します。

 分析手順でも少し触れましたが、分析とは相対的なものです。他社と比較しなければ見えない自社の強み・弱みもあります。さらに、付加価値・コストなども他社と比較することで優位性(劣後性)が見えてきます。

 少なくとも、主活動の各機能に他社が介在している場合、言い換えれば付加価値の源泉が自社にない場合、バリューチェーン分析はあまり適していません。分析をして可視化するまではよいですが、まずは自社の中核能力(コアコンピタンス)を明らかにしたり、育てたりすることが優先になります。

 自社を取り巻く環境の変化は、それまでの自社の付加価値・強み・弱みなど、あらゆる分析要素の価値判断を一変させます。

 例えば、顧客と接触するきめ細やかなサービスは、2020年からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響で大きく価値を落としました。常に自社内外の環境変化を検知し、バリューチェーンの再構築を行うことは重要です。

 バリューチェーン分析は決して特殊な手法ではなく、自社の内部を細かく分析し、顧客への付加価値拡大を実現する王道的な手法です。

 ぜひ、貴社のビジネスにもバリューチェーンを活用してみてください。