さて、業務用のミックスジュースを作っていたのがこの会社ですが、業務用から一般向けに解禁することで、ビジネスを大きくしています。このおいしさを業務用だけにしておくにはもったいないと考えてのことですが、業務用と一般用ではマーケティング方法などは異なり、商品に実力があったとしても新しい仕掛けが必要です。
この記事では、箱を高級感のあるものにして贈答品でも使えるようにしたことやSNSでの情報発信など、様々な工夫によって大ヒット商品にすることに成功しており、とても参考になります。一方で、ネットでの転売対策や生産能力の増強などの課題もありますが、それに向けて着々と手を打っていることもさらなる成長を感じさせます。業務用から消費者用に業務展開を考えている方はぜひとも読んで欲しい記事だと思います。
【2】味を変えずに世界観を広げる:ギンビス
昔から小さいお子さんに人気のたべっ子どうぶつを守り抜いているのが、この会社のすごさです。ポイントは「味をかえないこと」。機械を入れ替えても味が変わらないように微修正をしながら、味を守っています。またキャラクターの姿や色も守り、顧客の懐かしい気持ちを大事にするところも人気の秘訣です。
一方で、新しい動きを加えているところも素晴らしい。文具などのグッズ販売、コンビニ販売用のパッケージの開発、そして輸出など、たべっ子どうぶつの味と世界観を大事にしながら、その世界を広げることに成功しています。
もともとのたべっ子どうぶつには、おいしさとキャラクターの可愛さという実力が備わっていますが、こうした新たな取り組みを商品そのものの味わいを残したうえで、さらに高めていることは注目に値します。お菓子の力で世界を平和にしたいとのことですが、ぜひともその夢を実現して欲しいものです。
【3】小さな改善を重ねるイノベーション:ウイッシュボン
旅先でお土産を買ってみたものの、なかなか人と会う約束がとれずに賞味期限切れとなってしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。そのため、賞味期限が短い商品は、新鮮な感じがするものの、お土産としては買いにくいということがあります。
そうしたなか、この会社は味をそのままにしつつ、賞味期限を延ばすことに成功し、見事にお土産需要を増やしています。これも一つのイノベーションとして大変感心しました。そしてディスプレー、パッケージの見直しなど、小さな改善を積み上げて、ロングセラー商品に付加価値を与えています。
さらに全てを機械化するのではなく、手作業を大事にしているのも面白い点です。全て機械化するより、手作業があるほうが、温かみを感じますし、他社との差別化にもなります。お菓子のイノベーションが詰まった題材としてとても興味深い記事でした。
【4】変わらぬ姿との化学反応:児玉産業TOY
この会社のターニングポイントはデザインフェスタ(デザフェス)に参加したことです。これは6万人も参加するイベントですが、そこでSNSなどに取り上げられた結果、多くの人の関心を呼び、結果として輸出やガチャへの展開につながっています。
ツギノジダイに出ている企業は展示会やフェスといった、多くの人が参加する場に出て、そこで新たな気づきや人脈、見落としていた魅力を再発見して生まれる変わる企業が多いのですが、この会社もフェスをうまく使っています。さらに、輸出の際にはおもちゃではなく、インテリア雑貨とカテゴリーを変えることで単価を上げているところや、多くのクリエーターとコラボして新しいチャーミーちゃんを生み出しているところも興味深い話です。
この会社のチャーミーちゃん人形は50年間顔もスタイルも変わっていません。ただし、これがベースとなりながらも、いろいろな人との出会いが化学反応を生むことで、様々な変化や派生形をもたらしているところが参考になります。
【5】地域ブランド化で生む魅力:中村工房
ホームスパンはファストファッションなどに押されて売り上げは半減しているとのことですが、この記事を読む限り、大量生産とは違う魅力を発揮し、高級品となることで、これから存在感を発揮することを予感させます。
一方で高級品となるとマーケットも限られることから、様々な工夫をしているところも素晴らしい。具体的には、①服地だけでなく、マフラーなど小物をつくること、②デザイナーとコラボすること、③ショールームを作って東京からの観光客を招いていること、④遠方の顧客には複数点送り、気に入ったものは購入、気に入らなかったものは返送といったサービスを行っていること、⑤地域の織元と組んでユニオンを作り、地域ブランド化を図っていることなど、非常に戦略が練られており、非常に参考になります。直木賞候補作のモデルにもなったホームスパンをぜひ岩手の名産に押し上げて欲しいと思います。
【総括】ロングセラーをより長く売る
ロングセラーには、一時期の流行に終わらず、時代を超えて愛されてきた理由があります。さらに、新商品にも出せない味わいがあり、それがロングセラーの魅力を高めていきます。
しかしながら、ロングセラーは何もしなければ陳腐化していきますし、変更しすぎると、これまでの魅力を失ってしまいます。その意味で、ロングセラーは、お客様の理解の範囲内で改革・改善を起こしていくという、新商品とは全く違うイノベーション手法が求められます。
今回の記事には、ロングセラーをより息の長い商品にすべく、様々な苦労をしている企業の取り組みが多くありました。多くの切り口があることを痛感しましたが、特に参考になったのは、①顧客がその商品のどの部分を愛して、どこを変えて欲しくないかを知っている、②従来の顧客にはロングセラーでも、海外などの新市場では新商品であり、新市場に行くことで新たな顧客を開拓する、③メインの商品は伝統維持としながら、外部のデザイナーなどの新たな人材とコラボして、伝統系と新趣向系の二つのシリーズを作ることで、伝統と革新を両立させる、などが指摘できるかと思います。
ロングセラーはそれだけで力を持った商品ですが、新たなスパイスを加えることで一層輝き、寿命を延ばします。ぜひとも皆様の会社のロングセラーをこの記事にあるような手法でブラッシュアップすることで、少しでも息が長く、多くの人に愛される商品にしていただくことを期待します。
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