目次

  1. CAGR(年平均成長率)とは? その意味を解説
  2. CAGR(年平均成長率)の計算式
  3. CAGRをエクセルで求める方法とそれぞれの手順
    1. 算術演算子を使用
    2. RRI関数を使用
    3. POWER関数を使用
  4. CAGR(年平均成長率)の活用シーン
    1. 将来予測
    2. イレギュラーな成長率の調査
    3. 複数の成長性の比較分析
  5. CAGR(年平均成長率)を活用するときの注意点
    1. 対象とする期間の考慮
    2. 過年度実績指標としての前提
  6. CAGR(年平均成長率)は正しく理解してから活用を

 CAGR(年平均成長率)とは、Compound Annual Growth Rateの略であり、過去のある一定期間における各年の成長率(売上高や営業利益の伸び率)を幾何平均したもので、主に企業の成長性や将来性を分析する指標です。幾何平均とは、平均計算方法のひとつで、比率で示されるデータの平均値を求める手法を指します。なお、CAGRをCompound Average Growth Rateの略とする場合もあります。

 例えば、ある企業の最初の年の売上高が500,000円で、2年目の売上高が750,000円(成長率150%)、3年目の売上高が600,000円(成長率80%)、4年目の売上高が720,000円(成長率が120%)だったとします。

 計算方法は後述しますが、この場合のCAGRは約13%です。その際に、「この企業は5年目の売上高は813,600円(720,000×113%)、6年目の売上高は約919,000円(813,600×113%)になるのではないか」と予測していくのが、CAGRを計算する主な目的となります。

 CAGRを使えば、将来性を予測する以外にも、直近の成長傾向とその要因を探ることも可能です。そのため、企業の安定性予測やM&Aの検討、および投資する際の判断材料など、幅広く活用されています。

 なお、CAGRと同様に年単位での成長率を表す指標としてYoY(Year over Year)もありますが、YoYはある期間の成長について季節性を排除し、前年の12カ月前の比較可能な期間と比較する指標です。CAGRのように、長期的な成長性を把握するものではなく、1年以内の短期の成長性を捉える際に活用されるものとなります。

CAGRの計算式とCAGRの主な活用シーン
CAGRの計算式とCAGRの主な活用シーン(デザイン:吉田咲雪)

 CAGRの計算式は、「(N年度の数値 ÷ 初年度の数値) ^ {1 ÷ (N - 1)} - 1」です。

 算式にある「^」(ハット・キャレット)は算術演算子の一種であり、べき乗(累乗)を行う演算子です。一見すると複雑な計算式ですが、次章で紹介するようにMicrosoft Excelで簡単に求められます。

 ExcelでCAGRを計算する場合、主に次の方法があります。

  1. 算術演算子を使用
  2. RRI関数を使用
  3. POWER関数を使用

 それぞれの手順をご紹介します。

 算術演算子を用いる場合、例えば開始値として1年目の売上値がセルB2にあり、終了値として4年目の売上値がセルE2にあるときは、任意のセルに、数式「=(E2/B2)^(1/(4-1))-1」を入力します。 

算術演算子を使う場合
算術演算子を使う場合

 数式を入力したら「Enter」キーを押し、表示された値に100を掛けます。

算出された数字に100を掛ける
算出された数字に100を掛ける

 算出された12.92……がCAGRです。

セルB4に表示されている値がCAGR
セルB4に表示されている値がCAGR

 なお、Excelでは、「ホーム」タブから「パーセント スタイル」を選択すれば、値をパーセント(例:12.92%)に変換できます。

 RRI(レリバント・レート・オブ・インタレスト )関数とは、投資が目標金額に達成するのにどのくらいの利率が必要なのかを求めるものですが、CAGRの算出にも使えます。RRI関数を用いるときは、以下の計算式を任意のセルに打ち込みます。

=RRI(経過年数,初年度の数値, N年度の数値)

 例えば開始値として1年目の売上値がセルB2にあり、終了値として4年目の売上値がセルE2にある場合、 任意のセルに、数式「=RRI((4-1), B2, E2)」と入力します。

RRI関数を使う場合
RRI関数を使う場合

 数式を入力したら「Enter」キーを押し、表示された値に100を掛けるとCAGRの値が返ってきます。

 POWER関数とは、数値のべき乗を求められる関数です。POWER関数を用いるときは、以下の計算式を任意のセルに打ち込みます。

=POWER(N年度の数値/初年度の数値,1/経過年数)-1

 例えば開始値として1年目の売上値がセルB2にあり、終了値として4年目の売上値がセルE2にある場合、 任意のセルに、数式「=POWER(E2/B2,1/(4-1))-1」と入力します。

POWER機能を使う場合
POWER機能を使う場合

 数式を入力したら、これまで同様「Enter」キーを押し、表示された値に100を掛ければCAGRが求められます。

 CAGRは、企業の成長性を客観的に知ることができる便利な指標ながら、上記のようにExcelを使って簡単に求められるため、幅広く用いられています。代表的な利用シーンをご紹介します。

 CAGRは、事業計画の作成時やM&A時などにおいて、銀行や投資家から一定の合理性を持つ将来予測が求められるときによく用いられます。

 例えばある企業のCAGRが、過去5年間の実績から10%であることがわかったとしましょう。この場合、年々売上高が10%伸びると予測するため、もしその企業の最新の売上高が1,000万円だったときは、次の年が1,100万円、その次の年が1,210万円になるのではないか、と簡易的な成長予測をすることができます。

 CAGRが活用されるのは、銀行や投資家への説明に際し、過年度実績との整合性および連続性が一つの重要な視点となるためです。銀行に対しては貸し倒れのリスクがないことを、投資家に対しては元本割れのリスクがないことを示せる指標のひとつがCAGRといえます。

 過年度実績を踏まえたうえでの予測という視点だったら、YoYもよいのではないかと思う人もいるかもしれません。しかし、前述したように、YoYは前年度比の成長率を示す指標です。一時的な業績の縮小や拡大の影響を受けやすく、中長期的な企業の成長トレンドを捉えることができないという点から、将来予測においてはCAGRを利用するのが一般的となっています。

 CAGRは、その年の成長率が、他の年と比べて極端に大きいかどうかを知る基準としても活用されます。

 成長率が他の年と比べて極端に大きくなる理由には、一時的なものもあれば、実は継続的な達成が見込まれるものもあり、将来予測に大きく影響するため、詳しく探ることが大切です。CAGRは、それを見落とさないようにし、調べるきっかけを与えてくれます。

 例えば、小売店XのCAGRを計算する際に、各年の成長率もあわせて確かめたところ、ある年の成長率だけCAGRよりも大きかったとします。そこで、その年に何があったのか調べたところ、小売店Xで販売している商品がメディアで取り上げられたことが判明したとします。メディアへの取り上げによる売上向上は一時的なものといえるので、将来予測にはあまり反映させないほうがよい、という判断ができます。

 CAGRは個々の企業に対して用いられるだけではなく、複数の企業や市場規模の成長性を比較分析する際にも活用されています。なかでも特に役立つのが、同じ期間のデータが揃っていないときです。

 例えば市場Aと市場Bの比較をする際に、市場Aは過去5年分の市場規模のデータがある一方、市場Bは4年おきのデータしかなく1年目と4年目の市場規模のデータしかないとします。

 この場合、単純なデータ比較では市場Aと市場Bのどちらが成長率が高いか分析できませんが、1年間の平均的な成長率を示すCAGRを算出すれば、期間が異なっている場合や途中のデータが抜けている場合でも比較が可能となります。

 一見、有用そうに見えるCAGRですが、活用に際しては注意点もあります。

 CAGRの計算時に、どの年度の値を採用しているかでCAGRが大きく変わってしまうときがあります。例えば売上や利益が急に大きく伸びた年を対象期間に含めた場合、その数字が平均に大きく影響し、計算されたCAGRをそのまま活用すると基礎的な成長性を正確に理解できない可能性があるため、注意が必要です。

 CAGRの数字は過去の結果であり、今後もその成長率が約束されたものではありません。将来分析予測にそのまま使うのではなく、分析および予測の出発点としての指標と位置づけ、その他の要因を加味したうえで将来予測を立てる必要があります。

 CAGRは、企業の成長性を客観的に判断できる指標である一方、過去の成長率の平均値という特徴から、実際に将来性を予測する際には鵜呑みにしないことが重要となります。

 本記事ではエクセルを用いて簡単に数字を出せる方法を示しましたが、CAGRの意味や、計算によって分析できること、できないことを把握したうえで、活用していただければ幸いです。